3−2 学院祭への参加
「と言う訳で、学院祭にはこの第三王子特別調査隊の面々で展示を行おうと思うんだ。クライブが上手く纏めて欲しい」
無茶ぶりだ。丸投げだ。クライブは頭を抱えた。しかし、ここで展示物の内容について王子に意見を言わせたら惨状が激化する。クライブは丸呑みする事にした。
「分かりました。我々で出来る展示物を検討します。会場は狭目の場所でお願いします」
「出来れば大々的な展示をお願いしたいんだが?」
「この面子では出来る事が限られます。何せ前衛が三人、攻撃魔法系が一人、脳みそを使える人間が二人しかおりません」
デボラが口を挟みそうなので隣にいるジャッキーが口を塞いだ。ともかく小規模で好きにさせて貰えなければ学院祭に間に合いそうにない。んーんー!!背景が多少うるさいがクライブは構わず続けた。
「一月ないのでは何も出来ません。何とか纏めますから手足を縛る内容はご容赦頂きたい」
「残念だね。次はなるべく早めにお願いする様にするよ」
「文学部並みに狭い会場でお願いします」
「文学部の展示は毎年本当に最小なんだがね…まあ人が50人くらい入れる場所を用意するよ」
50人程度の会場なら良い方か…クライブは手を打つ事にした。
「それでお願いします」
クリスティンからすれば、王子は最初からその辺りに話を纏めるつもりだったのだろうと思う。本当にクライブを上手く誘導している。ちょっと確認するか。
「殿下は学院祭はご覧になった事はあるのですか?」
「昨年見たね」
「どの様なご感想をお持ちですか?」
「そうだね…少し寂しい感じかな」
「分かりました。クライブ先輩からもお話を伺って、何らか埋められる様に努力します」
「埋めるなどと控え目でなく、盛り上げる方向でお願いしたいね」
「微力を尽くします」
「クリスティンはどう思った?」
クライブも王子様の意図を斟酌しかねていた。
「あまり良い傾向とは思えませんが…多分何らかのアピールを意図しているんじゃないかと」
「彼は能力をアピールしようとはしていないが?」
「お兄さんとその周囲にアピールして欲しいのではないですか?彼の能力ではなく、配下の能力はある、と」
クライブは顔を顰めた。
「別に私達は正式な配下ではないし、今後も命令を聞くつもりはないぞ?」
「なら、あの妙なチーム名を付ける必要は無い筈です」
クライブは頭を抱えた。
「『第三王子特別調査隊』と言ったか…表向きは殿下に振り回されている様に見せかけて、実質的な仕事もさせようと言うのか…」
「だから、展示は大人し目の方向が良いでしょうね」
「少なくともやる気の無いところはアピールしておかないといけないな…殿下に対して」
「それが必要と思いますね。今後も彼の方の思い通りに使われたくないなら」
「と、言うことで、何か展示のアイデアはないか?」
「はいっ!格闘の決まり手八十二手を絵で説明する展示が良い!」
「誰が絵を描くんだよ?」
「真面目に絵を描いてくれそうなのはクリスティンくらいかな?」
「ジャッキー、そもそも決まり手八十二手を知らないから描けないよ。元々クローバーやらダンデライオンやらの花くらい特徴がないと描けないし」
デボラが手を上げた。
「じゃあさ、私が氷で何か作って展示するってのはどう?」
自己顕示欲が強い女である。そこはクリスティンが突っ込んだ。
「5分毎に冷却しないと溶けちゃうけど、ずっと付いていて冷却してくれる?」
「あー、そういうのは苦手かなぁ」
こつこつとか丁寧にとか持久力とか言う言葉が苦手な女である。
「クロちゃんはアイデアある?」
「俺は王都に来たばかりで何も分からないからな…すまん」
「良いよ、一度北の森の狩りについて地元の人に聞いて、その絵でも展示しよう」
「ああ、それは良いな。金に困って狩りに行く時に参考になる」
「あ、それ私も参加する」
デボラも仲間に入れて欲しいらしい。
「お兄さん、部屋はどう展示する予定?」
「そうだな…一般の小教室なら窓側には展示しない、光が取れずに暗くなるからな。だから前後と廊下側、他に机に置けるものを展示する感じかな」
「じゃあ、王都の北の森の獣で廊下側半面か全面、教室の後ろ側は私が担当します」
「良いのか?そこまでやって貰えれば助かるが」
「後ろ側の私の面は、頑張ったとアピール出来ても誰も見ない展示をしてみせます」
「何だその後ろ向きの姿勢は…」
「少なくとも良い方向に話題になるのは避けたいのでしょう?」
「そりゃそうだが…何を展示するんだ?」
「学院の生徒らしく、一方誰も見ない展示は何だと思います?」
皆首を捻った。
「簡単でしょう?1年の初めのカリキュラムの話題なら生徒の誰も見ません」
ジャッキーには何を言っているのか分からなかった。
「どういう事?」
「だから、最初に習う初級魔法の解説を展示するの。皆マスターしてるから学生は誰も見ない」
クロちゃんは恐る恐る口を開いた。
「いや、俺マスターしてないけど?」
「だから、クロちゃんとアイスちゃんへの指導用資料を兼ねて纏めるので、それを展示しようと言う事」
デボラは眉を潜めた。
「そんなのすぐに纏まるもんなの?」
「もうメモ書きは溜まってるから大丈夫」
「そんなのいつ作ったのさ?」
「寮に入ってから図書室に通ってたから書き付けにまとめてあるの」
「暇なんだね」
「アイスちゃん、だからそういうとこが問題だと言うの」
「客観的な評価だ!」
デボラが吠えだすと話が止まるのでクライブが話を続けた。
「じゃあ、そちらの三人で2面は任せた。そうなると前の面はうちの領地のアピールでもするか」
「兄さん、何も考えてないね…」
「時間がない。頭に入ってる事をまとめる時間しかないと考えよう」
全くその通りだ。学院祭まで半月も無い。
「それで、北の森の調査についてはうちで馬車を出そう」
「三人とも田舎者だからそのくらい歩けますよ?」
デボラは異論がある様だ。
「イヤだ!歩きたくない!馬車出して!」
「アイスちゃん、魔女としてそれはどうなの?」
「魔女だろうが何だろうが長距離を歩くのはイヤだ!絶対馬車出して!」
「まあ、そのくらい世話するさ。同じ殿下の被害者同士だからな」
クリスティンとしては接してみてあの王子様が評判通りの馬鹿とは思えなかった。何か意図があるのじゃないかと気になっていた。
明日は投稿します。金曜は休むつもり。金曜の夜に本屋を1時間うろつくと幸せを感じません?ちなみにこの夏、本屋のラノベ文庫コーナーの縦積みが半減してネット小説書籍化コーナーが増えました。ネット小説の方が購入者の年齢層が高いらしいので収益が良いのかもしれません。




