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…案外簡単に手に入るんだな。
ダンジョン探索者ライセンス。通称Dライセンス
等級は下からGFEDCBASである。
小学生でもなれるのがG…
黄金の核弾頭 アーノルドバークがSSS
そして俺もG…仕方なし…
簡単な1時間にも満たない講習と実技演習をこなせば手に入る。なんとももらいごたえのないライセンスである。
しかし、ダンジョンに入る際、上級ライセンス取得者が同行という規則が待ち受ける…が、
「おーし。ワシがお主の担当の神藤 虎じゃ!!!」
おい…
「おぉ?なんじゃ?お主ワシがおらんとダンジョンにも入らんションベン小僧の分際で噛み付くのか? お?どした?やってみるかの?ダンジョン入らんぞ?どした?お?」
…とりあえず、一発どついといた。
「おーいちち…そいじゃまぁいくかのぉ。」
頭にたん瘤つけたまんまのジジイと俺はゲートを潜る。その際妙な感覚を抱く…
…なんだ?このブヨブヨする感じ…
「おーりゅうよ…ダンジョンは初めてか?」
…いや知ってんだろ。なに先輩風吹かしてんだ…沈めんぞ!?
…………………………………………………
にしても…
「こんなもんか…難度8…」
…まだ浅層だからか、物足りない。
「お主ぐらいじゃろぉの…ダンジョン初アタックでそんな事言えるんわ」
…しかもここ難度8じゃぞ…
すでに路破済みダンジョンは弱体化している魔物しかおらず…道中に至っては、まだチュートリアルくんの方がマシなレベル…
しかしまぁ暖機運転ぐらいにはなったか。
全八十階層その半分…40階層フロアボスが光の粒子となって消えるのを見てそう思う…
…空気が変わったな…
「りゅう、身体に異変は無いかの?」
「ん?あぁ、絶好調だな?なんか道場の時より身体が動く。」
「じゃろうな…最後の仕上げはダンジョンでしかできんかったからのぉ…」
「どういうこった?」
「ダンジョン内部の魔素と環境がお主の器を満たす最後の雫じゃからの」
…ワシもそうじゃったし、と懐かしむように呟く。
「そういやじいさん、ランク最下位の俺を難度8に入れられたカラクリをそろそろ教えて欲しいんだが?…まさか金でも握らせたんじゃ?」
「馬鹿りゅうが!そんな恥さらしな事するかぃ。なーに簡単な事じゃよ。ワシの路破ダンジョンが難度9じゃからの。」
…ドヤ顔腹立つな。っつかあんた一体何者なんだよ…マジで。
はてさて、迫り来る魔物。正直半分超えたあたりからだいぶ歯応え増してきた。
…常時展開…《指切血判》
京都攻略難易度8。《大妖怪屋敷》ダンジョン
「でっかいお化け屋敷だな…こりゃ」
おそらくは平安時代か、五行陰陽疫病妖怪蔓延る混沌の世
その再現か、はたまた人々の深層心理。あながち皆々様の勘違いやらでこのダンジョンは形作られたのやもしれんな…
「しかし、だ」
木造家屋が続く、碁盤の目のように広がる道に薄く雲の張った綺麗な満月の夜…
そこへ右から影指す方へ目を向ける。
体高十メートル弱、おどろおどろと首をもたげた人骨の頭。
「餓者髑髏にカイトシールドとサーベル持たしたらだめだろ…いろいろと詰め込みすぎだ。」
《拳闘士》
木造平家の屋根に一足で足掛け、吹き飛ばしながらの跳躍。
「図体ばっかりでかけりゃ、そんだけ的もでかいわな。」
踵落としで脳天から叩き落とす。
「図が高ぇ、出直してこい。」
とりあえず、正拳突きで木っ端にしといた。
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「なぁ、じいさんや。」
「なんじゃ?」
「ダンジョン入ってどのくらいたった?」
「今日で18日目じゃな」
「ほーん、っつーかめちゃめちゃ快適。ばあちゃん何者なん?ついでにじいさんも…」
「あかねさんは空間圧縮のスキル持っとるからのぉ。まぁ生活系のスキルの中じゃ群を抜いとるの。」
「なるほど、やっぱり只者じゃぁなかったんだな」
工事現場に仮設営されるコンテナハウス…あれに車輪と運転席つけたようなトラックのミニカーを手で弄びながら呟く。
「これだけで運送系の会社潰れない?」
「じゃから世界で茜運送が一番なんじゃろ。従業員ワシとあかねさんとお前の3人じゃぞ。」
…いつのまに俺。
まぁ企業秘密ってやつは何かと融通と誤解が効くんじゃよ。…となんてことはない話だとでもいいたげだが…
「革命的過ぎんだろ…」
「まぁ、そちらも非常識じゃが。こちらもじゃな…」
…赫い小さな鳥居がどこまでも続く。
そこへ誘われるかのように歩を進めると、そこには一際大きな大鳥居の先にはえらく広い参道と大きな丸石。
まるで自分達がレゴにでもなったみてぇだな…と考えていると、じいさんの顔に真剣味が増す。
「りゅう…おかしいぞ。」
…静かすぎる。
ダンジョンボスのリポップは受付で聞いてたしここまで俺たち以外にゃ辿り着いてない事も腕輪端末で確認済み。
…まぁ腐っても難度8だからな。路破するとなると相当の実力者。
さらに言えば俺達はリポップ直後に叩くつもりで寄り道とかして時間潰してたってのに。
「リポップがまだとか?」
「いんや、昨日がそうじゃが…それなら探索者に会うはずじゃ…ワシら以外にいるはずが……!?」
突如揺れる。ダンジョンボスが座すと思わしき本殿が崩れ落ちた…
そこにいた。…いや顕現した。異様な様相の一人の男
霞んだ茶色。ボサボサの男にしては長髪の、ゆるくパーマがかかっているのか気怠げに頭をかきながら。
長身、タッパなら俺も上背はある方だがそれでも見上げるほど、二メートル弱ぐらいか?
着こなしは喪服。なんの変哲もない。黒のスーツに黒いネクタイ、黒い靴。
しかし右手に異様な圧。
禍々しい大鎌
鋭利な刃は湾曲しており付け根には藁のように巻きついて柄と繋がって…
持ち手にゃ…ありゃぁ特大の魔石が十個ほど…柄の至る所にあるな…しかも色違いだぞ。超高級品…ってか世の中に出回ってんのか?
顔立ちは目の下の隈がひどい。が、美丈夫だ。気怠さ気なのと猫背がマイナス点だが…
そして何より、両耳に十字架を模したピアスと首から下がる十字架にキリストではなく女性が磔となった。ネックレス。
…予習はバッチリ。これ真剣ゼミでやったことある!!だな。
「りゅう…」
そこで、ふと横にいるじいさんが俺を呼ぶ。
「ワシが時間を稼ぐ。受付にこの事を知らせるんじゃ…長くはもたんがの…」
…おい!
「じいさん、冗談は存在だけにしとけ…」
なっ?…と驚愕を露わにするじいさん。
「横からメインディッシュ掻っ攫うのは許さねぇ。ばあちゃんの唐揚げとこいつは全部俺のもんだ!!!」
瞬間…崩落した本殿から圧が上がる。
見れば気怠げな瞳が俺を捉え…口の端が裂けんばかりにそいつは…笑ってた。




