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はぐれ魔女と平凡無才の魔剣使い  作者: 阿木津 秋水
はぐれ魔女としがない使用人
26/67

数刻ぶりの再会

 小道から外れ、少しばかり道無き道を通り、遠回りをしてユリアのいる小屋へ向かった。

 夢中になって走って来たからか、気づくと頰や手の甲に切り傷が出来ていた。


「……痛えじゃねえかよこの野郎……」


 今更になって背中に受けた傷が痛んだ。

 ユリアの所まで行けばとりあえず応急手当くらいは出来るだろう。

 しかしそれだけの時間があるだろうか。

 あいつは確かに言っていた。「魔女狩りをする」と。それが事実ならば、恐らくユリアを捕らえに此処に来るはずだ。

ーーー恐らく先程の狩人達も

 だとしたらあまり時間は残されていない、一刻も早くユリアを連れてこの村を離れなければならない。状況は一刻を争っていた。


 小屋の扉に手を掛け、勢いよく開き、部屋を見回すと、ユリアは目を丸くしてこちらを見つめていたが、こちらの様子を理解すると血相を変えた。


「あれ? ライルどうし……その傷…何……?」

「訳は後で話す、今すぐここから逃げるぞ!」

「ま、待って、急にそんなこと言われても困るよ……」

「時間がないんだよ! 村の奴らがお前を捕まえに来るんだよ! だからーーー」

「ーーー待って! その前に、その傷治すのが先だよ……何でこんな怪我してるの……」


 彼女に制止され、今更背中の傷の事を思い出した。遅れて忘れかけていた痛みまで帰ってきて、思わず唸り声が出る。


「……っ痛てぇ……訳は後で話すよ。 その前に今はこの村から何とかして逃げないとなんだ……頼む、今は大人しく付いてきてくれないかな?」

「分かった、分かったよ。 ライルが理由もなくそんな無茶苦茶な事言わないだろうし、何かあったんでしょ?」

「まあ、な……」

「その前に、とりあえずその傷だけ治してからね」

「悪いね、手間かけちゃって」


 ユリアは俺の背に回り、何かを呟いていた。恐らく魔法だろう、背後で柔らかな光を当てられているような感覚がした。


癒しの灯(ハイロゥン・リヒト)

「この間のと同じ魔法か?」

「ううん、この間のに比べたら少し劣るかな。 ごめんね、今はこれくらいしかできないの……」

「気にしないでいいって、元々俺の力不足で受けた傷だしさ」


 そう、さっき背中を斬られたのは俺の不注意だ。いくら傀儡と戦ったことがなかったとはいえ、背後への注意を怠って感情的になっていたのは問題だった。

 俺は天才や超人じゃない、平凡なのだ。だからこそそういった事に注意を払わなければいけなかった。


 彼女の治癒魔法によって傷がふさがっていったのか、痛みも引き、背を伝う血の感触もなくなっていた。


「しかしまあ、現実味がないや……」

「もう二回も三回も見てるのに?」

「そんなすぐに慣れるようなもんじゃないだろ。 それはそうと、早いうちに逃げないとだな……なあユリア、今使える魔法って何がある?」

「えっと……さっき見せた治癒魔法と、少し前に見せた覚えてるものを出したりするのと、ちょっと矢みたいなのを飛ばすのと、身を守るためのと、それくらいかな」

「分かった。 もし逃げる途中襲ってくる奴らがいたら迷わず使え、いいな?」


 彼女がいい顔をしないのを承知でそう言い聞かせると、案の定ユリアは顔を曇らせた。

 無理もない、人を傷つける事なんてとてもできないような相手にそれを求めているんだ。いい顔なんてする訳がなかった。


「……でも……」

「分かってる、お前が人を傷つける事なんてしたくないのは百も承知だ。 だけどその為にお前が死ぬような事になったら元も子もないんだよ」

「……うん……分かったよ……」

「まあなるべくそうならないようにするさ、俺が何とかするから」


 おもむろに立ち上がり、ユリアの前に手を差し出し、彼女の手を取り引き上げ、前のめりになりそうな彼女を支える。


「それじゃ、さっさとこの村とはおさらばさせてもらうかな」

「それはいいんだけどさ」

「何か気になる事でもあるのか?」

「うーん……いや、何でもないよ。 急いでるんだよね、早く行こう?」

「そうだな……願わくば誰とも遭遇しない事を願うよ」


 半ば諦め気味にそう呟き、彼女の手を取って小屋を飛び出した。

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