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 太陽がもう少しで中天に差し掛かろうという頃、やってきた自称魔法使いの男は居丈高にこちらを指さしながら口を開いた。

「ようやく会えたな。超古代人」

「え。ちょっ、その呼び方なんかヤなんだけど」

 てか、なんでそんな呼び方なんだよ。と問えば。前に話したときの分析の結果だとか。

 いや。そう名乗ってもいいって言われてもやんねーよ。

 なにか返せる言葉がないかと「この魔法オタクめ」などと言ってみたが、

「魔法使いってのは大なり小なりそういうモノだ。寧ろ褒め言葉だな」

 身長は俺より少し低い。頤を上げ見下すようにしてふふんと笑う。

 なんでこいつこんなに強気なんだろう。勝てる気がしねぇ。まー、勝負じゃねぇからいいんだけども。

 ぽふんと頭に乗る柔らかな衝撃は相棒の重みだろう。見えなくても分かってるぞ。肩を竦めるように羽根を動かし、捻るように頭を横に振るさまをな。……何時だって負けっぱなしとかじゃないんだからな。


「さて、冗談はここまでだ」

 何処から何処までだ。と、突っ込みを入れたい気持ちに蓋をする。

 さっきの話を一から、みたいな藪蛇はごめんだ。

 長くなりそうだし、玄関で立ち話もなんだと中に入れる。

「まったく、帰ってくるの待ってたんだぞ。だいたい、お前勝手に先に帰るし、来てもいないし」

 愚痴るように言われ、なんとなく理不尽な心境だ。

 勝手に、とは言うが海底都市での話なら普通に別れたはず。待ち合わせの話はなく、言われる理由などないはずだ。

 そう思っている間にも話は続く。

「俺も暇ではないから用事を済ませてから来てみれば、魔王城のせいで警戒区域になって街道からは入りにくくなるし。そうこうする内にあの山、火を噴いたって火山にされるとこだったしな」

 あー、あれな。思わず目をそらす。原因の一端は自分だと自覚があるのは気まずい。

「一応地脈から探査魔法をかけて、火の気配が皆無なのを確認されたから落ち着いたけどな」

「へー。なんか良くわからんけど大変だったんだな」

 と言えば、お前の森だろ。とねめつけられた。

 まー。タイミングが合わなかったんだなぁ。俺、暫く外に出ていたし。

「この間やっと警戒が緩んで何とか潜り込んだが、居ないってヨークってやつに言われて引き返したしな。……それとな、お前。ここの端にある市場な。ガラの悪いのがいたぞ。お前の森なんだからちゃんと管理しろ」

「えー、市は俺がやってるわけじゃないんだけど」

「無許可なのか? とにかくあれは多分、牽制が入っていただろうな。少し離れていたから何を言っているかまではわからなかったが、他の者たちにも聞こえるようにやっていたから間違っていないだろう。捕まえられていたのは一人だったが、何かあってからじゃ遅いんだぞ」

 秩序大事。真顔で言われ。

 あれ、これってもしかしてお説教タイムじゃね?

「あー。じゃあ、とりあえず市の奴らに言っとく」

 勘弁して。と言外に、いつの間にか下がっていた頭をそのままにこそっと見上げれば、かち合った視線はまだもの言いたげで。

 だが溜息を吐きながらも先に反らしたのは、男の方だった。

「……お前から預かった土産を大層気に入られてな。特別に温室に入る許可を貰ったんだ」

 お前を探していた本題だと前置きして始められたのは彼が会いに行った知人の話だった。

 相手は身分が高いらしく、色々特権だか所有物があるらしい。

 最近そういう肩書の奴に会うの多いな。

 話が変わってほっとしたついでに空にしたグラスに使い魔が新しく水を注ぐ。

「せっかく温室に入れるパスを手に入れたんだから、行かないわけはないだろう?」

 温室ねぇ。

 言われてもピンと来ない顔をしていたのだろう。普通の所謂「温室」から今回行く先の「温室(ソレ)」の説明を受ける。

 規模の違いはあれど、珍しい植物を育てるところだと思っておけばいいようだ。

 ……こいつ、魔法職人というより説明オタクかもしれん。

 許可は俺だけじゃなく、目の前の男にも出ているようなので「行ってきたらいいじゃん」と答えれば、

「そりゃあお前が居なくても入れるだろうが、お前が招待のメインなんだよ」

 と渋い顔をされた。

 適当に見繕ってやってもいいが、それではずれだったりしたら目も当てられないだろう。などとブチブチいう様に苦笑いをする。

 土産という形ならあまり拘りはない方だし、海のモノには詳しくない。

 だから別に良いんだけどなー。と思ったところに告げられた次の言葉でパチリ瞬きをする。

「それに紹介もしたいし」

 なにそれ。めんどくさい。俺だって忙しんだけどー。と文句を付けようとして、ふと思い出す。

 用がないと言えば嘘になる。力仕事は捌けたとはいえ集めた香草、薬草の処理がまだ残っているし。

「あー。そーいや、ドラゴンだって言ってたっけ」

 俺、ドラゴン見たこと無いんだよなー。

「見たこと無いはずはないだろう? カンテラドラゴンだってドラゴンの端くれだしな」

「あー。うちってか、この森居ないんだわ」

 それにあいつら姿見せねーじゃん。そう続ければまだ納得したりなさそうにしていたが、出掛ける気になったならいいかとばかりに今度は早くしろと急かされる羽目になった。


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