始まり
陽光きらめく昼下がり。
本の国 図書館庁管轄 大図書館庁。
その廊下に面した少し大きめの扉の前に、青銀髪蒼眼の少女が静かにたたずんでいる。
少女は声が裏返らないように少し咳払いをしてから図書館長室の扉をノックした。
中から優しげな声でどうぞと入室が促される。
「おばあさ・・・大図書館長、文化人類学司書リシェルカ・イルミナ・フォン・ディリエンフェルト仰せに従い参りました。」
「ふふっ、そうです。ここでは大図書館長です。そこに座ってちょうだい。」
すでに応接椅子に座っていた老女が、彼女に着席を促す。
「早速本題だけど、あなたを呼んだのは、未返却本の回収任務を担当してもらいたいからです」
「未返却本の回収任務ですか?まだ新人のわたしに?」椅子に腰かけながら少し驚きながら答える。
「1年とはいえもうだいぶ慣れたでしょう?それに、ここに配属となる前も私の手伝いで来てくれていましたし・・・。」
リシェが配属期間以上に大図書館にかかわってきていることを示唆した。
目の前の孫娘から手元に視線を移し、お茶を入れながら祖母でもある図書館長が
「それに司書長からの推薦もあるのですよ」そうリシェに伝える
「司書長が?あの・・・それはとても光栄です」
リシェは椅子に腰かけ少し驚きながら答えた。美しい黒髪の司書長は憧れの先輩でもある。
「この目録を見てもらえる?」
リシェは祖母である大図書館長から渡された回収目録に目を通しながら気が付いた。
「図書館の管理は素晴らしいですね!おばあさま!禁書や封印指定が含まれていません!よくある未返却本ばかりです」
愛しい孫娘を見つめながら図書館長は少しづつ視線をずらし、沈黙が続く。
「・・・おばあさま?・・・まさか・・・あるのですか?」
ため息交じりのあきれ声で
「ほんと・・・どうやって持ち出したのかしらね・・・」と祖母はいった。
「おお、おばあさま?!持ち出されたのですか?!・・・か、回収は?!」
禁書や封印指定図書は間違っても図書館外に持ち出してよいものではない。
「安心して、政庁の専門部隊がすでに動いています。あなたの回収任務には関係ありません。」
リシェは涼やかに微笑んでいる祖母を唖然とした目で見た。
「ちなみに・・・何の本なんですか?」
「ここだけの話よ・・・」
廊下にまでリシェの悲鳴がとどろいた
特に世界を救うこともない
特に国家の存亡にかかわることもない
特別な力もない
これはそんなお話




