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Opening
その闇はただひたすらに暗かった。
黒くどこまでも漆黒。
その闇からは如何なる温度も感じることはできない。
無機質な闇は全てを呑み込む。
周りの空間を、人を、植物を……
あらゆるものを溶かし同化する。
それに伴い徐々に闇は力を増してゆく。
そして闇が暗く辺り一面を包み込んだころ、中央にぼうっと弱々しく光るピンポン球大の光球が一つ現れた。
その儚く揺らめく光球は徐々に輝きを増してゆき、人型を象っていく。
光の出現から暫く、闇の中には一人の男が佇んでいた。
「くっくっく…」
闇と同色の黒いダークスーツに身を包んだ金髪碧眼の男は喉の奥で実に愉快そうに笑う。
「くくっ、ははは…」
ひとしきり体を揺すり笑っていた男は、不意に笑うのを止めニヤリと不敵に口の端を吊り上げたまま、何もない無機質な虚空を仰いだ。
「ハッピー・ハッピー、メリークリスマス」
そう呟くと男は周りの闇に呑み込まれ、音もなく溶け込んでゆく。
後に残ったのは深く重厚な闇と、楽しそうな男の声だけであった。
尚、これはクリスマスイブのことだったという。




