表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴォーパルバニーと要塞おじさん  作者: ベニサンゴ
第42章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2247/2249

第2245話「熱烈な歓迎」

『ここが〈ウェイド〉かーー。すっごい大きいじゃん!』


 ヤヒロワニやヤタガラスを乗り継ぎながら遠路はるばる。ようやく到着した俺たちを、大都市〈ウェイド〉は泰然として出迎えた。西洋風の煉瓦造りの建物が石畳の大通りに軒を連ね、青や赤の鮮やかな瓦屋根が空を彩る瀟洒な街並み。初心者を迎える第一の都市たる〈スサノオ〉から、一歩進んだところにあるこの街は、駆け出しと中堅、そして上級者をも抱え込む懐の深い町だ。


「いらっしゃいませーーーっ!」

「ようこそ、ようこそ!」

「何にもない町ですみませんね。あ、砂糖ならいっぱいあるけど。がはは!」


 そして、事前にカルフォンを使ってブログを更新していたこともあってか、都市防壁を越えた先には横断幕を抱えた調査開拓員たちが待ち構えていた。

 〈エウルブギュギュアの献花台〉から飛び出して、町へと現れたエルフの使節団。移動中も周囲から視線を感じていたが、ここにきて大々的で熱烈な歓迎っぷりだ。

 何人かの失言をした調査開拓員がウェイドの指示を受けた警備NPCによって蹴り飛ばされているのを尻目に、わっと飛び出してきた調査開拓員たちは手に携えた自慢の品々をエルフたちに差し向ける。


「うちの自慢のティラミスだ。ウェイドに取られる前に、早く!」

「こっちのジェラートも絶品だよ。管理者のお墨付きだ!」

「ごめんね、騒がしくて。ここいらの連中はスイーツに一家言あってな。ぜひご賞味頂きたい」

「まだウェイドちゃんにも試食してもらってない新作だよ。ほら、どうぞ!」


 まるで親戚の子供をもてなすかのように、四方八方からスイーツが飛び込んでくる。健気にひとつずつ応対していたレアティーズたちも、あっという間にキャパオーバーだ。

 困り眉で乾いた笑みを浮かべる彼女たちに、熱狂の調査開拓員たちはずいずいと迫り――。


『美味しそうなもの持ってるじゃないですか。私が食べてあげましょう』

「げえっ!? ウェイドちゃん!?」

「ま、待ってくれ! これはレアティーズたんのために――うわーーーっ!」


 額に青筋を浮かべたウェイドが立ちはだかり、スイーツを次々と強奪する。

 あまりにも予想通りの展開に、俺とラクトは思わず苦笑するほかなかった。

 この町のパティシエたちにとっては、日常的な光景なのである。


『まったく、騒動を起こさないようにと通達してたんですがね! もぐもぐ』

「ま、こうなるわな」


 ぷんぷんと眉を寄せたままデカいエクレアを頬張るウェイド。口元のホイップを拭ってやりながら、悲嘆に暮れる調査開拓員たちもフォローする。


「使節団はしばらく滞在する予定だから、また後で様子を見にきてくれ。レアティーズたちもここまでの旅で疲れてるんだ」


 申し訳ない、と頭を下げれば彼らも分かってくれる。根はいい奴らなのである。親戚のおじさんおばさん気質が強いだけで。

 そもそも彼らの基準がウェイドなので、レアティーズたちのスイーツ摂取許容量を大幅に見誤っている可能性もある。


『ぐへぇ。助かったよレッジ』

「恨まないでやってくれよ。悪気はないんだ」

『分かってるよー。みんな、いい人たちだね』


 着いて早々疲労困憊のレアティーズだが、なんて健気なんだろう。彼女は笑みを絶やさず、周囲の調査開拓員たちに手を振っていた。


『一度、どこかで休みましょうか? 研究所の開放にも、まだ少し時間がかかりますし』


 レアティーズたちの目的は、あくまで魔樹である。それはこの町の中央制御区域にある研究所内に保管されている。エルフが入るということで、今も多くのNPCと調査開拓員の技術者たちが、念入りな安全確認を行っている最中だった。


『お気遣いありがとうございます』


 恭しく礼をするオフィーリア。ウェイドは彼女たちを、用意していた宿へ案内する。


『ね、レッジ』


 その道中、レアティーズがそっと身を屈めて囁いてくる。


『あーしはまだ余裕あるんだよね。せっかくだし……ちょっと町の案内してくれない?』


 大きな瞳に好奇心の輝きがある。

 塔の外、初めての町。彼女の興奮は冷めやらぬ。エルフ族のなかでは最年少ということもあり、まだまだ元気いっぱいの様子だった。


「そういうことなら、ウェイドに案内を――」

『そうじゃなくて!』


 管理者によるガイドが一番いいだろうと思って、前を歩くウェイドに声をかけようとすると、予想以上の力で肩を掴まれる。俺を引き戻したレアティーズは、鼻の頭が触れ合いそうなほどの至近距離まで迫ってきて、眉間を寄せた。


『そのー、えっと。レッジのおすすめのお店とか、知りたいかなって、ね?』

「俺のおすすめねぇ。まあ、案内してもいいが」


 この町には〈白鹿庵〉のガレージもあり、なんだかんだで一番長く滞在している町でもある。案内人を仰せつかることもできるが、レアティーズが好むような店を網羅しているかと問われれば怪しい。

 そんな懸念を伝えるも、彼女はぶんぶんと首を振る。


『いいの! レッジが好きなお店、行ってみたいし!』

「そうか? じゃあ――うぉっ!?」


 誰かに一声かけてから別れようとした、その瞬間。俺はレアティーズによって路地裏へと引き摺り込まれた。

Tips

◇KIRA⭐︎KIRAエクレア

 パティスリー〈宝石箱〉が新たに生み出したボリュームたっぷりのエクレア。こだわり抜いた高品質のチョコレートと共に、煌びやかな宝石を模したトッピングがなされ、見た目にも美しく複雑で奥深い味わいとなった逸品。


Now Loading...

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◆剣と魔法とナノマシン1〜7巻まで好評発売中です!
◆合法ショタとメカメイド1〜3巻もよろしくお願いします!

ナノマシン
第1巻 ⚫︎公式ページ ⚪︎ Amazon Kindle ⚪︎ Book Walker
第7巻(最新) ⚫︎公式ページ ⚪︎ Amazon Kindle ⚪︎ Book Walker
メカメイド
第1巻 ⚫︎公式ページ ⚪︎ Amazon Kindle ⚪︎ Book Walker
第3巻(最新) ⚫︎公式ページ ⚪︎ Amazon Kindle ⚪︎ Book Walker
― 新着の感想 ―
みんな、デートはこうやって誘うんだぞ 誘われ待ちしてデートって勘違いしちゃだめだぞ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ