1●出会い、そして――
学院内は相変わらず若さと活気に満ちていた。カイアルは雄心仮面のコスプレ姿でアニメ研究会へと急ぎ、近道しようと体育館裏の柵を乗り越えた。
裏の小さな湿地帯を通りかかると、数人が地面に倒れた誰かを蹴ったり殴ったりしている。カイアルはこんなイジメを見過ごせる性分じゃない。
「ヒーロー登場!」
そいつらは声の方を向き、一瞬ポカンとしたが、すぐにカイアルに突っかかって地面に押し倒し、同じようにボコボコにした。
「どっから湧いた紅いハエだ、おとなしくアニメ研でハエみたいに手ぇこすってろ、何カッコつけてんだ?」
「ペッ!」と先頭の男がツバを吐き捨て、満足げに去っていった。
カイアルは身体を起こし、コスプレ衣装の埃をはたき、あいつらにひび割られた仮面を拾い上げた。「すまんな、クラスメート。助けになれると思ったんだが」
そいつは立ち上がり、身体の埃をはたくと、振り返りもせずひとりで立ち去ろうとした。
「おい!君!俺がこんなに勇ましく助けに来たのに、名前すら教えてくれないのか?」カイアルは叫んだ。
「リン・ユエチュアン」そいつは淡々と名乗り、さっさと歩き去ろうとする。
カイアルは慌てて走って追いかけた。「俺はカイアルだ。これも何かの縁だな。さっきの雄心仮面の登場、めちゃくちゃカッコよかっただろ!」
「大きなお世話だ」
そんな返事にカイアルはガッカリしたが、持ち前の能天気さで言う。「俺もボコボコにされたけどさ、あの瞬間、本物のヒーローってやつを肌で感じたんだよ!カッコいいと思うぜ!」
それを聞き、リン・ユエチュアンは立ち止まり、警告する。「もし俺みたいにイジメに巻き込まれたくなけりゃ、俺から離れろ。もうついてくるな」
「いやいや、イジメがあるなら立ち向かわなきゃだろ!もしまた同じことがあれば、俺、絶対に止めに入るからな!」
そんな正義感ムキ出しのカイアルを見て、リン・ユエチュアンは呆れたようにため息をついた。「じゃあ、お前は本当に救いようがないな」
「ああもう、超能学院はずっとヒーローの本分を唱えてるじゃん。つーかお前の超能力って何なんだ?」
「俺か?俺の能力は、自分の出す音を消すことだ」
「ははっ!なんて役立たずな能力だ。どうりでさっき殴られても全然物音しなかったわけだ!」
「だからイジメられるんだよ」リン・ユエチュアンはうんざりと答え、このおしゃべりからさっさと離れようとした。
「おっと!わりいわりい!口が滑った!」カイアルはまた走って追いかけた。
リン・ユエチュアンは明らかにこの無礼な奴を相手にしたくなかった。
「ああもう、悪かったって!大餐をごちそうする!な?」
「大餐をごちそう?」
「ああ」
「ふん、誠意があるなら、放課後に俺のとこまで詰めて持ってこい。これが連絡先だ」そう言ったのは、普段ずっと抑え込んできたからか、この能天気な奴に少し興味が湧いたからだ。
「はは、任せとけって」
……
夜。カイアルは詰め込んだハンバーガーセットを手に、四時間前にもらった住所へと急いでいた。
「やっべ、すっかり忘れてた!」カイアルは自分のドジを呟きながら、リン・ユエチュアンの人里離れた住処へ急ぐ。
通り沿いの店はとうに閉まり、シャッターは歪み、街灯はちらちらと明滅し、壁の落書きは雨水でにじんでいた。
路地の入り口には捨てられた段ボールやゴミ袋が積まれ、数人の影がひゅっと動き、細い路地へ消えた。
「助けて!」
その叫びが、あたりの静けさを破った。
超能学院で叩き込まれたヒーローの本分ゆえに、カイアルは足を止め、叫び声の方へ駆け出した。
路地に入った瞬間、特製の黒い制服を着た男が、壁に押さえつけた男の口をふさぎ、短剣を胸に突き立てるのが見えた。
短くあがいた後、その男はぐったりと倒れた。
カイアルは信じられない思いでそれを見つめ、それから恐怖に駆られて外へ走り出した。黒制服の男は足音を聞きつけ、素早く追いかける。
後ろから迫る足音に、カイアルのアドレナリンは急上昇し、助けを叫びながら全速力で走った。
黒制服の男は追いつけぬと見るや、超能力を発動させ、瞬時にカイアルの目の前に転送された。そのまま一本背負いが決まり、カイアルは地面に激しく叩きつけられ、詰め込んだハンバーガーセットも散乱した。
「ぐあっ!」折れた肋骨が肺に突き刺さった感覚に、焼けつくような痛みが走る。
黒制服の男はすぐさま短剣を振り上げ、カイアルにとどめを刺そうとした。カイアルは生存本能を極限まで高め、自らの超能力を発動させ、黒制服の男を弾き飛ばし、遠くの壁に激しく叩きつけた。
カイアルの呼吸は激痛を伴い、口元から血が流れる。
「い、いやだ……まだ死にたくねえ……彼女もできたことねえし、女の子の胸だって触ったことねえんだぞ!ゲホッ」
立ち上がって逃げようにも、腸骨まで折れたらしい。
黒制服の男は立ち上がり、カイアルへ早足で近づく。「お前も超能力者だったとはな、ゴホッ。鍛え上げた身体でよかった、普通のやつなら起き上がれん」
言い終えると、短剣を振り上げてカイアルに突き立てようとした。
「やめて!」カイアルは絶望して目を閉じた。
まわりから音がすっと消えた。再び目を開けると、リン・ユエチュアンが片手で黒制服の男の攻撃を受け止めていた。
「音声消除!貴様、生きてやがったのか……!」
言い終わらぬうちに、リン・ユエチュアンは手首を勢いよくひねり、「パキ」という軽い音とともに、短剣を握る手首をへし折った。
黒制服の男が苦痛の声を上げるが、リン・ユエチュアンが反転させた肘を喉元に叩き込み、その声は即座にかき消された。
膝を折り曲げ、容赦なく男の腹に突き込む。黒制服の男は痛みに身体を丸めたところを、首根っこを掴まれ、勢いよく地面に叩きつけられた。
激しく地面に叩きつけられる音さえもリン・ユエチュアンは消し、男の額から血がにじむが、起き上がる間もなく、今度は背中を踏みつけられた。走る激痛に全身が痙攣し、手を上げる力すら奪われる。
「紫!俺を殺せばどうなるか、わかってるんだろうな!」黒制服の男は息を詰まらせながら警告した。
「お前の言う紫は、組織に裏切られたあの日にもう死んだ。組織の腐った本性はお前だってわかってるはずだ。お前が消されても、任務失敗と見なされるだけだ。誰も気にしやしない」
「よくも……!」だが声は消され、能力で転送して逃げようとしたところを、リン・ユエチュアンは容赦なく脊椎を踏み砕いた。
ほどなく黒制服の男は絶望のうちに息絶えた。リン・ユエチュアンは地面に散ったハンバーガーセットに目をやり、一瞬だけ固まった後、気絶したカイアルを背負って、市中心部の病院へと急いだ。
……
「俺、まだ生きてるのか……?」カイアルは病床で目覚め、そばに立つリン・ユエチュアンに尋ねた。
「手術代、診察代、医療費、薬代、交通費、救命救急費で総額四万八千八百だ。治ったらちゃんと返せよ」
「おいおい、死にかけたってのに、そんな細かいこと言うかよ」
「お前を襲ったのは東カーネルハイト暗殺組織の連中だ。連中はたいてい超能力者だ。これから穏便に過ごしたいなら、見たことも体験したことも一切口にしないことだな」
「わ、わかった……」カイアルは心底怯えていた。これまでの人生で、こんな目に遭ったことなどない。
リン・ユエチュアンはただ静かにそばに立っている。
「そうだ、あのとき俺、ぼんやりとだけど、あいつが『紫』って呼ぶのを聞いたんだ。そいつが俺たちを助けたのか?」カイアルはリン・ユエチュアンがいじめられていた光景を思い出し、彼にはまったく疑いを持っていなかった。
「ああ、そいつが助けたんだ。だが、そいつのことも口に出すな。いいやつじゃない」
「んん……わかった……」
「本作品の内容(ストーリー・設定・キャラクター)はすべて作者自身が創作したものです。ただし、日本語への翻訳に際し、AI翻訳ツールを参考・補助として使用していることをお伝えいたします。翻訳の正確性には細心の注意を払っておりますが、不自然な表現がありましたらご指摘いただけますと幸いです。」




