【第7話】「無限回廊」その②[NEW]
急にバチバチと天井の蛍光灯が、まるで高笑いするかのように点滅をはじめた。
「ナイアー‼︎」
オレの声だけが連絡通路の暗闇に反響する。
漆黒の闇からは何の返事も帰ってこなかった。
このままではマズイ…もしかしたらリオも攻撃されるかもしれない。
「リオー!リオ!無事かー!?」
遠くからリオらしき声が聞こえてきた
「…どーしたー?」
膝下浸水のせいでバシャバシャと飛沫を上げる音が聞こえる。
通路の先が暗くてよく見えない。
「リオ?リオか?」
「ど、どしたどした?まだ端まで調べきれてないよ」
「ああ、良かった。無事なんだな。ナイアがいなくなった。攻撃を受けた可能性が高いかもしれない」
「え?ナイアが?」
「ここは一緒に動いた方がいいかもな、敵がどこから攻撃してくるか検討もつかない」
リオが無事なだけまだ勝算はありそうだった。
「後方からの攻撃…にしてもこの足元の水が厄介だな」
俊足を持ち味にするリオとしては、この纏わりつくような膝下の水の流れは能力的なパフォーマンスをかなり下げられている。
しかも跳躍するにも天井もそんなに高くはない。
この連絡通路という環境はリオの本領が発揮しにくい状況になってるのは間違いなさそうだった。
「ナイアが心配だ…水の中に引き込まれてたら窒息してしまうかもしれない。時間は限られているかも」
オレはリオやナイアに頼りすぎていたのかもしれないと今ごろになって実感し、少し後悔した。
「そんな顔すんなって。実はさ、あたしとナイアはマナ交換しててさ、お互いどの辺りにいてどうなってるかだいたい分かるようになってんの」
リオが突然隠し玉のような重大発言をかましてきた。
「えぇ、マナ交換?なにそれ、どういうこと???」
「このイルカのピン留めあるだろ?これはもともとナイアの衣装のパーツの1つだったんだけど、それとあたしの馬モチーフのデカールを交換してあって、このパーツから感じるマナで相手の位置や生命レベルはだいたい分かるんだよ」
「じゃあ、ナイアは…」
「うん、大丈夫そうだね。苦しんでもいない感じ」
リオがイルカのピン留めを耳に当ててそう言った。
「よかったぁ…」
すると何かを感じ取ったのかリオがじゃぶじゃぶと歩き出す。
「うーん、どうも最初いた位置からは動いてないようだなナイアのやつ。このあたりにいるはずなんだよ」
「じゃあ何らかの理由で姿が見えなくなってるってことか…そのイルカのピンはどこまで知覚できrもんなんだ?」
「どこまでって?」
「たとえば深さとか、もしくは今ナイアが伝えたいことが分かるとか」
「それは…」
リオが言いかけた途端、水域が明らかに高くなった。
あっという間に腰の高さまで水は迫り俺たちは押し流された。
「ブワッ…」
足元を持っていかれた俺は転倒しリオに引き上げられた。流石にパワータイプ。標準的な男子高校生の俺を片手で軽々と引き上げやがった。
「この水もマナのパワーから来ているとしたらユータ、お前のバリアーも効果あるかもしれない、たぶんこのままだと水にのまれる。あたしの能力は水には無力だからな…」
「おお、そうか」
マヒナを追跡したり、この不可解な連絡通路のせいで、すっかり自分の能力のことを忘れていた。
俺は手を水が流れてくる方向へとかざし、バリアーを展開した。
「やっぱり!」
結果はリオの言う通りだった。水はバリアーを避けて俺たちの後ろに回っていく。
しかし水位は凄まじいスピードで上がっているようだった。バリアー越しにすでに俺の目線よりすこし上まで迫っていた。今、この能力を解除したら俺たちは溺れてしまうに違いない。
「さあて、次はどう手を打つべきかな…」
結局のところなんとか敵の攻撃を押さえ込んでいるというだけで、敵を追い詰めていることにはなっていないのだ。つまりこのままだとこちらがやられることはあっても敵の攻撃が止むことはない。
この状況は心の何を示しているんだ…連絡通路、水害…
「閉塞感…?水害は追い詰められていた…強迫観念???」
俺なりに感じたことを言葉にしてみた。
「それでー!あたしは何をしたらいい?もうあまり時間はないぞ!!」
水の勢いは更に増していく。
当たり前のことしか思い浮かんでいない気がする…
その時、俺のバリアーがビシビシとヒビが入り始めた。
「くそ、考えに集中し過ぎると能力を維持し続けられないのかよ…俺は」
バリアーの隙間から水が入り込んできた。
「くそ、ダメだ頭が回らねえ…!!」
その瞬間、とてつもなく大きな衝撃波が俺たちもろとも吹っ飛ばした。
敵の攻撃が来たと思ったが、幸い無傷だった。
「リオ、大丈夫か…」
「大丈夫」
リオが起き上がる。
水位がみるみる下がっていた。
「どういうことだ…何があったんだ」
衝撃波の来た先に大きな横穴があいていて、そこに水が流れていた。
「騙されちゃいけません…今まであった中で相当邪悪ですよ、コイツは…」
「ナイア‼︎」
硝煙をあげたライフルを杖代わりに立っているのがやっとのナイアは穴の中から俺たちにそう言った。




