第37話 報告2
リースがワイバーンをテイムして3ヵ月が過ぎた頃。
辺境伯の父イズンは、ワイバーンをテイムして飛翔騎士団を立ち上げたことを内々に王都に報告していた。習熟訓練が終わり、実践対応できるようになった為、詳細について報告すべく、王都を目指し、馬車を走らせていた。
「イズン様、もう間もなくお城に着きます。」
「ああ、スティングランド、概要説明までは俺がするから、詳細は任せるぞ。」
「はい!わかりました。」
「…は~。」
「どうされましたか?浮かない表情ですね?」
「それはそうだろう?ワイバーンがテイムできてしまったんだ!今まで5カ国が飛翔獣魔のテイムに成功していただけだからな?ここ200年で…。王城に行ったら、詳細説明や、ヒミツを聞き出したい貴族がわんさか来るだろうよ…。」
「そうですね…。」
◇◇◇
王城につくと、イズンはすぐに王の会議室へと案内された。
「失礼します。」
「うむ、イズンよ。ご苦労だな?早速だが、事のあらましを報告してくれ!」
会議室には、王ライディア・キュエル・アヴァルートと、宰相セアト、軍務大臣ビスター、財務大臣マイス、法務大臣ポラン、魔務大臣ヴォー、外務大臣ドアート、内務大臣トイン、労務大臣ダルダン、商務大臣ザザセラ、贈務大臣ポーラ、警務大臣カルガ、防諜団団長デュオナ、魔術師団団長ビニルエルがいた。
「はい、実は…。」
イズンは、会議室の全員が注目する中、これから起こるであろう騒動を思うと、嘆息したくなる気持ちを引き締め、詳細を報告した。
◇◇◇
「で、そのテイムができるアーティファクトは、それか?」
「はい!これに…。」
スティングランドが、宰相のセアトにうやうやしく渡す。
「どのような効果がある?」王がイズンに尋ねる。
「それはこの度、陛下の承認が得られましたら、隊の隊長を任せるスティングランドより報告させて頂きます。スティングランド。」
イズンの後ろに控えていたスティングランドが一歩前にでる。
「はい、まずは説明のみお伝えします。実践は危険を伴いますゆえ。
では、こちらの両手のハンドルを引くと目が開きます。と同時に魔力を吸われますが、その吸った魔力で威圧の効能があります。威圧のチカラは魔力の強さによります。」
「なるほどのう。」
「そして、このアーティファクトは、ダイヤルを回すと、威圧調教・浄化治癒・睡眠催眠・魔法付与超補正・魔法障壁・封印石化・転写反射の七つが使えます。」
「…。伝説級。いや、精霊級か妖精級レベルだ。」
「…。そうですね。」
「こちらの魔法具は陛下に奏上いたします。もし、飛翔騎士団を増強するなら、こちらのアーティファクトを積極的に利用した方が、よろしいかと思われます。」
「しばらくは城で預かり、魔術大臣ヴォー(魔法.魔法具関連を司る)に調べさせよう。これは、テイムできたワイバーンとの習熟訓練では、今は必要ないのだろう?」
「はい、その通りです。」
「また、グリフォンや、他のテイムしたい魔獣が出てきたとき、こちらの魔道具で実験をして、調獣専門の部署を立ち上げるか?セアト?」
「そうですな?そのように手配しましょう。」
宰相セアトは淀みなく応える。
「飛翔兵団が出来るとなると、我が国の軍の編成はどのようになる?ビスター?」
「はい。まず、飛翔兵団が偵察、上空からの敵地視察、攻撃が可能となりますゆえ、従来の常識が、一気に変わります。」
「ふむ、だいぶ他国より有利となるのぅ…。」
「御意。」
「マイス、どれくらいの財政負担だ?」
「は、調整が王都でも飼育が可能か現在は不明な点がありますので、いましばらくはイズン辺境伯卿の財政状況を確認して参考とさせて頂く事になりますので、まだ詳細は報告できません。」
「うむ、そうだな?憶測では参考にならん。ドアート、デュオナはどう見る?」
「では、外務の私から、他国ではまだ知られてはいないと思いますが、アドルシーク領で目撃したものや、今日のお披露目で見聞きした者の口からいずれ広まるものと思われます。他国にとっては、脅威となり、我が国へ攻めてくることには逡巡するでしょう。逆に我が国から攻撃されるかもと疑いを向ける国への対処が問題にはなるかと…。」
「うむ。」
「それでは、私からは、諜報の移動・報告手段としては運用の方法次第ですが、時間の短縮が非常に早くなり、期待が出来ます。また、他国からはどのような経緯でテイムできたのか?探りを入れる国も出てきますので、注意が必要となってきます。」
「そうだな?それらを含めて報告書を作成してくれ。」
「はい!」
「ザザセラとポーラは、何かあるか?」
「はい。いずれ輸送手段・伝達手段の一つで利用することも考慮頂ければ。」
「わかった、そち達も可能性をまとめて報告してくれ。」
「はい!」
「そんなところかの?皆、思いついた事や、可能性があることは、報告書にまとめてくれ。新しい兵団になる。運用は未知数だ。出来ることは全てやっておく。他国が始める前にな。
それはそうと、イズン。」
「はい?」
「アークのナイフの件は知っておるか?」
「…はい?息子のアークがなにか?」
イズンは、重鎮たちがいる前で、我が子の名が挙がった事に不安を覚えた…。
「うむ、やはりまだ連絡が行ってないようだな?」
「はっ、申し訳ありません。王都邸に寄らず、直接王城に参じた経緯で確認が取れてません。」
「よい、事の経緯はセアト。」
「はい。…つい先日、王立学園の野外演習で、第二王子のジュランとイズン卿の息子のアークがいる学生の部隊に、ロックベアが襲いかかった。」
「なんと!」
イズンは会議の席から立ちあがり驚愕する。
「いや、案ずるな!双方無事だ。」
宰相セアトは、左手を挙げイズンを諫める。
「ふう。そうですか?良かったです。」
イズンは、安心して着席をする。
「うむ、そしてその内容が……な?」
「……なにか問題が?」
「ロックベアは、全部で10頭が襲い掛かり、学生の部隊を安全に退け、かつ、全頭討伐したらしいのじゃ。」
「おおおっ、10頭も、しかも討伐したと!………誠ですか?」
「うむ」
「ロックベアは、確か一頭でもBランクの冒険者、もしくはCランクパーティの冒険者相当ですよ」
イズンが、アドルシーク領のギルドマスターと話をした時に聞いた内容を思い出す。
「そうだ!」
「優秀な学生たちだったんですか?何か他に要因が?」
「…ゴホン。ああ、討伐したのは、ジュエルが4頭、」
「おお!すばらしい!」
「アークが6頭だ。」
「…え?」
イズンは、内容が頭に入らず固まった。
「ジュエルは、王家秘蔵の魔剣を扱っていた。」
「…。」
「アーク持参の剣は、ロックベアの体当たりで破断し、使い物にならなくなった。そこで、持っていたナイフを使いロックベアの襲撃に待ち構えたら、ロックベアの腕が切断されたそうだ。」
「…。」
「そのあと、他のロックベアが襲い掛かり、すれ違いざまにナイフで切りつけると、胴体が切断されたらしい。」
「…。」
「ちなみにそれまでジュランは、魔剣で何とか3頭討伐し、けん制していたが、アークがナイフで攻撃してからは、闘いやすくなり、数分で討伐したらしい。他の学生は、ロックベアが襲い掛かるまですぐに撤退しており、実質二人対ロックベア10頭の闘いだった。」
「…。」
「イズン。アークに確認したが、そのナイフは弟に譲ってもらった故、入手の経緯は知らないとの事だ。入手の経緯は知っているか?」
王がイズンに問いかける。
「は、大変申し訳ありませんが、入手の経緯は確認できておりません。急ぎ確認してご報告します。」
「うむ。王家秘伝の魔剣を上回る性能を秘めたナイフだ。ただ切断に特化しているとはいえ、能力が桁違いだ。これが偶然入手できたものか、製作できるものかで、我が国の国力が変わってくる。急ぎ調査をするように。」
「はっ。」
「では、テイムできたワイバーンを見せてもらおう!」
「はっ、スティングランド、準備を」
「はい。イズン様、訓練場でよろしいでしょうか。」
「ああ、頼む。」
「わかりました。では30分後にお願いいたします。」
◇◇◇
「おおお。凄いな‼全部で10頭か?」
「はい、今回は10頭で来ましたが、領には残り20頭がいます。」
「…っ、全部で30頭か?維持費はどうなっている?」
「はい。維持費ですが、半調教半野生で調整していますので、それほど掛かっておりません。」
「…つまり、必要な時だけ使うという事か?」
「そうでございます。我が領の近郊にワイバーンの群生地と、好物のフライングツリーがあるため、普段はそのあたりに生息し、必要な時だけこちらの腕輪を使い、呼び寄せます!」
スティングランドは簡潔に答える。
「…まて、その魔法具はなんだ?」
「はい、ワイバーンを呼び寄せる腕輪です。」
「そのような魔法具は聞いたことがない、魔法具大国のブランカント王国にもあるかどうか疑わしい品物だ。」
「…そうですね。こちらも入手経路は、テイムの魔道具と一緒で、件のマジックバッグに入っていたものでした。」
「なに?呼び寄せる魔道具もか?」
「そうです。マジックバッグの中には100個の対となる呼び寄せる魔道具が入っておりました。」
「なんだと‼」
「ライディア様、これはもし、かの魔法具大国の物だとしたら、恐るべき事となります。かの国にそれほどまでの技術があり、かつ100という単位の魔道具を用意していたという事は、それだけの実力も兼ね備えているという事になります。」
王に、宰相セアトが可能性を告げる。
「うむ~~。イズンよ。」
「はい。」
「急ぎ飛翔兵団を確立し、運用計画を出せ。個体も倍に増やすのだ。そして、その魔道具10個を魔務大臣ヴォーに調べさせ、複製させろ。残りの20個の魔道具は、別の種類の個体をテイムするのだ。予算はこちらが負担する、随時報告申請を出せ。」
「は!」
「運用方法が確立したら、それぞれの省で活用方法があるか試用しろ!そして、逆に敵方にあった場合の防御方法も検証せよ。」
「「「「「「「は!」」」」」」」
「イズン。」
「はい。」
「卿と卿の息子アークには、恩賞を与えねばならん。」
「…恩賞ですか?」
「新たな騎士兵団を作った功績と、ロックベアを討伐した功績だ。」
「は。しかしながら、この度の飛翔兵団、アークのナイフの剣は、いずれも家族の功績によるところになりまして…。」
「ふふふ、まあ、良いではないか?家族もお前の一部じゃし、末弟じゃろ?父上とアズンから聞いておる。近いうちにアリスティアをアドルシークに送る。」
「は?……アリスティア第三王女を?」
「アリスティアが見初めたら、婚約させる。」
「なんと!」
「破天荒な神童らしいな?10歳になったらお披露目会で話をさせてもらおう!」
「…承知いたしました。」
「ふふふ、まずはアリスティアの目から見てどうかじゃな?ファッハッハッハッハッ ‼」
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