勇者と魔王の最終決戦 その七 闇に溶けた殺意
【勇者と魔王の最終決戦 その七】
夜闇に染まり切った木々。同化するように聖剣の刃も闇に溶ける。枝に足をつけて様子を伺っていると、いよいよパーティが始まった。寝泊りする建物の隣。別館にある大部屋の扉が開く。煌びやかで、整っていて、皆笑顔だった。羨ましくて手を伸ばす。指先が夜の闇の染まった。この世界は私が何もしなくても平和だった。幸福に満ちていて、魔王がいるのに。それが面白くて、悲しくて、自嘲する。
――――ホテルマンは見える限り二人と一匹だった。
私が手加減してあげたのに遠慮なく拷問道具を使ってきたあの男もいた。ううん、でも怒ってはいない。だって彼のおかげで私はさらに強くなってきている。忘れかけていた。気配を殺すことを。闇に紛れることを。殺意を。正義だの平和だのと私を犠牲にして作られるはずだった、反吐が出るくらいの上っ面に覆い隠された鋭さを。
恋人同士なのかしら、それともパートナー? いつも銀髪の少女と一緒にいる気がする。だからきっと、私は勝つことができる。魔族たちもそういう意味ではいいことを教えてくれた。
仲間がいて、強固なチームワークを発揮するならバラバラにすればいい。互いが互いに過剰にフォローしようとすれば、本来力だって出せずに無力化できるもの。
「ようこそお越しくださいました。今夜はホテルの創立記念――――」
銀髪の少女が大人びた所作で客を部屋に案内していく。客は多くはなかった。多数の異種族が混ざっていたけれど、ホテルに沢山いたはずの異形の姿は少なかった。みんな私と同程度の体格、骨格。けど神格級も数人いる。あれにだけは手を出しちゃいけない。
「魔王……。凍刻の……。今度こそ最期の戦いね」
二人も来ていた。ニヤニヤと、自然な笑みを浮かべて筋肉質なピンク色の霊長モンスターからドリンクを受け取る。魔王の分を毒味と称してクロノディアスが半分ほど飲み干して、仕返しとばかりに魔王が肘打ち。
「やっぱり、魔族も人間も……変わりないのね。悪だなんだの言ってても、人間側だって魔族の娘を捕まえてたし……はぁ。なんでこんなことが分からなかったかしら」
正義なんてない。怒りも憎しみも超えた。私は殺意を研ぎ澄まして、研ぎ澄まして研ぎ澄まして研ぎ澄まして研ぎ澄まして研ぎ澄まして研ぎ澄まして、磨き上げて、息を殺す。
時を待っていた。怪盗たちが行動に出たとき、騒ぎに乗じて葬る。私は時を待っていた。ホテルマンの男は私に意識すら向けられなかった。




