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先輩は工学系女子

こんにちは、薬師実です。どんどんブックマークが増えていてとても嬉しく思います!

 「で? なんであんな事を言ったのか聞かせて貰おうじゃねぇか? あん?」


 三人の息が整った後すぐ、俺は中山に問いただされていた。


 「別々に探索した方が効率が良いし、生存者にも会えたんだから結果的に良かっただろ、何が不満なんだよ」


 「そうじゃねえよ、俺が聞いてんのはお前が俺の勝手だろって言った事についてだ」


 中山は頭をボリボリと書きながら俺を見据える。


 「確かに俺たちとお前はダチじゃねぇよ、こうなる前でも話なんかしなかったし、話そうとも思わなかっただろうしな」


 「だったらそれで良いじゃないか、お前と俺は本来関わり合いになることなんか無かったし、お互い気にもしてなかっただろ」


 「そうかもしんねぇよ、けどな、俺たち四人はゾンビから一緒に逃げて戦った仲じゃねぇか、少なくとも俺は仲間だと思ってたのによぉ⋯⋯」


 俺は中山の発言に驚いてしまう、仲間なんて言われたのはいつ以来だっただろうか、小学生のときが最後だったかもしれない。


 「そうだよ槙野、お前は講義室でも俺たちに情報を教えてくれたじゃないか、その後のこともお前が色々教えてくれなかったら俺は今頃死んでたはずだ、中山だってそうさ、ゾンビに掴まれた時に槙野が助けなかったら噛み付かれていたに違いないと思うぞ、なぁ?」


 「けっ! 別に槙野が手を出さなくても俺一人で充分だったっつーの」


 俺は小野寺の言葉にも驚いてしまう、こいつに情報を教えたのは親切心では無く、単に面倒くさいと考えたからだというのに。


 「そうだよ槙野くん、二人とも槙野くんのこと信頼してるんだよ! 私だってそうだよ? 槙野くんが慰めてくれたから希望を捨てずに済んだんだもん! すっごく感謝してるんだから!」


 俺は今まで人と深く関わろうとせずに生きてきた。そうすれば人の事情にも巻き込まれないし、自分の恥を見せることも無いと。でも本当は他人と本音でぶつかり合うのが怖かったのかもしれない。


 三人の言葉に俺の心の中に暖かいものが広がっていく。この感覚はなんだろうか⋯⋯、 体の奥が激しく揺さぶられるが決して嫌な気持ちにはならず、暖かくて心地良い。何故か俺はこの気持ちを大切にしたいと思ってしまった。


 「確かにそうだな⋯⋯、 ごめん! 俺が間違ってたかもしれない、お前らがそんな風に思っていたなんて思わなくて⋯⋯ 」


 「お前らじゃなくて名前で呼んでくれよ、って言ってもお前俺らの名前分かんねえかっ」


 「じゃあ改めて自己紹介しよう、俺は小野寺悠人(おのでらゆうと)、大学では剣道部所属で家は剣道の道場を経営しているんだ」

 

 「俺の名前は中山大河(なかやまたいが)、高校までは野球部所属で甲子園にも出場したことがあるんだぜ、まあよろしく頼むわ」


 俺も二人に(なら)って自己紹介をする事にする。


 「俺は槙野光、高校では三年間拳法の部活を続けていた」


 「道理で動きが素人じゃねえわけだ、見た感じ強そうに見えねえけど」


 「うっさいな、余計なお世話だよ」


 俺は着痩せするタイプらしく、よくヒョロヒョロとか言われてしまうことがある。腹筋だって割れてんだぞチクショウ。


 「ところでその子はどうしたの?」


 上迫さんはさっきから一言も話さない女子について説明を求める。


 「彼女は俺が剣道部の部室に向かう際に、ゾンビに追われていたのを助けたんだよ」


 「そーそー、こいつが女子を連れてるのは珍しくねえけど、まさかゾンビが出てきてもだなんて思わなかったぜ」


 「おいおい誤解されるだろ、それじゃあ俺がいつも女子を侍らせているみたいじゃないか」


 俺は二人のやりとりを尻目に、ポニーテールの女子へ話しかける。


 「君名前は?」


 「私は望月美遊(もちづきみゆ)、大学3年生で工学部所属、運動経験は無し」


 「あ! 先輩でしたか⋯⋯、 タメ口聞いてすみません」


 望月先輩は(つや)めかしい黒髪のポニーテールを揺らしながら首を振る。身長は上迫さんよりも若干低く、少し幼い顔立ちをしている。所謂童顔というやつだ。上迫さんが美人系なら望月先輩は可愛い系であるかもしれない。女の子の膨らみは中々に大きいです。


 「いい、別に気にしてない」


 「おいおい、伊織の方がよっぽど年上に見えるぜ」


 「え!? それって私が老けてるってこと!? やだなぁ」


 「失礼だぞ大河、俺は敬語でいかせてもらいますね」


 俺たち四人は全員理学部の学生だったが、望月先輩は工学部なのか。女子で工学部ってかなり珍しい部類に入るのでは無いだろうか。俺はある疑問をぶつけてみる。


 「工学部ってことは、メインストリートの向こう側ですよね? 望月先輩はどうしてサークル棟に?」


 「ん⋯⋯、 今日は一限の講義が無くて部室で時間を潰そうと思った。 キャンパス内が騒ぎになって部室でじっとしてたら、足音が聞こえてそれがイケメンくんだった。」


 「サークルはどこに所属してたんですか? ちなみに私はボランティア部です!」


 上迫さんが元気よく手を上げる。


 「ん、整備愛好会に所属していた。 やることは壊れた機械を分解して治したり、組み立てたりいろいろ」


 望月先輩は腰に工具袋を身に付けている。どうやら色々な工具が入っていそうだ。


 「俺も質問させていただきます、先輩はどうして工学部へ?」


 「小さい頃から物を分解するのが好きで、そういう仕事がしたかったから⋯⋯ 、あまり注目されるのは慣れないのでやめてほしい⋯⋯ 」


 「おいおいもっちーが照れてんだろ、その辺にしとけやお前ら」


 もっちーって何やねん。


 望月先輩はさらに顔を赤くして俯いてしまった。どうやら人前で話すことが苦手みたいである。


 「あの⋯⋯、 そろそろ良いかな?」


 突然俺たちの後ろから声をかけられる。そういえばゾンビに追われて運動会館に入ったっきり周りの様子を確認していなかった。


 「体育の長澤(ながさわ)先生ですか?」


 「そうだよ、君たちの何人かは一年生の時に僕が教えたはずだから面識があるのは当然か」


 確か長澤先生は一年生のスポーツ実習の講師をしていたと思う。俺も実際に授業を受けていた。かなり筋肉質で年中半袖を着ているという噂を聞いたことのある変わった先生でもあるらしい。


 「せんせーがここを(まと)めてんのかぁ?」


 中山がバットで肩を叩きながら長澤先生へ質問する。


 「いかにも、ここにいる大人は僕と法律を教えていた町田(まちだ)先生で、僕の方が若いってことで形式上リーダーってことになるかな」


 「ところで君たちはよくここまで来ることが出来たな、外は襲ってくる奴らで一杯なのに」


 「俺たち武器を集めて、何とか奴らと戦えたんです。」


 小野寺が軽く会釈をする。


 「そのことで言いたいことがあるんですけどよろしいですか?」


 「何かな?」


 俺は思ったことをぶつけてやる。


 「さっきのあれはどういうことですかね? 放送でゾンビを呼び寄せておいて、挙句の果てに扉を閉めようとするなんて考えられないんですが、危うく死にかけたんですよ」


 長澤先生は気まずそうに言葉を返す。


 「そのことについては申し訳ないと思う。駄目元で生き残っている人を集めようと思って始めたことで、奴らが音に呼び寄せられるなんて思いもしなかったんだ。それにさっきの男子学生がしたことは僕から謝りたいと思う。あの時は僕は近くにいなくて止めることが出来なかったんだ、本当に申し訳ない」


 長澤先生は深く頭を下げる。


 「もう良いですよ先生! 槙野くんも良いでしょ? 助かったんだし結果オーライだよ!」


 「伊織の言うとおりだ槙野、おめぇもネチネチしてたんじゃ男らしくねぇぞ?」


 中山が肘で突いてくる。


 「ネチネチは余計だ! まあとりあえず良いです、それでここの人数はどれぐらいなんですか?」


 「ここには初期に逃げてきた人数に君たちを入れて二十人ほどになるよ」


 「それで食料はどれくらいあるんです?」


 長澤先生は困ったように腕を組み始める。


 「それがこの運動会館には緊急用の非常食しか無くてね⋯⋯、 この人数だと明日まで持たないかもしれない⋯⋯ 」


 正直言って信じられなかった。この人たちは先のことを考えずにここに避難したというのか。いや、そんなことを考えている余裕など無かったのかもしれない。


 「それなら私たち料理研究会で缶詰を集めてきたんです! 良かったら分けてあげましょうか?」


 「本当かい!? それはありがたい!」


 「槙野と伊織は料理研究会の部室へ行ってたのか⋯⋯ 」


 「あっははは!! 槙野が料理ぃ? 何の冗談じゃそりゃ! 似合わないにも程があんだろぉ!」


 俺は約一名の馬鹿を無視して話し始める。


 「残念ですが食料を分ける訳にはいきません」


 「なっ!? どうしてだい!?」


 「槙野くんどうしてなの? こんなにあるんだから分けてあげればよくない?」


 俺はため息をつきながら理由を話し始める。


 「この食料は二十人に何日も食わせてやれる量なんかないし、これは俺たちが死なないために俺と上迫さんが集めたものです。ですからこれを渡すことは出来ません」


 「何だと貴様! 食料を一人占めするつもりか!?」


 突然の怒号が運動会館に響き渡る。辺りを見回して見ると、白髪の目立つメガネをかけた中年の男性がこちらに近づいてきた。


 「ま、町田先生、まずは話を⋯⋯ 」


 長澤先生が止めに入るも強引に押しのけられてしまう。この人が町田先生か。


 「一人占めも何もこれは俺たちが手に入れたものなんですけど」


 「俺たちのものだぁ? どの口で言っておるんだ貴様は! それは盗んだ物だろうが! 災害時には協力し合ってこそ日本国民というものだろう!!」


 町田先生⋯⋯、 いや町田はとんでもない理論を展開する。


 「働かざるもの食うべからずとも言いますよ、あなたは食料を得るために何か行動を起こしたんですか?」


 「屁理屈を言うな!! それに私は老人だ! 若者なら老人を敬うべきだろう!! 大体なんで凶器を持ち歩いているんだ貴様らは! この犯罪者どもめ!!」


 何て頑固な老人なのだろうかこいつは、論点をすり替え、あたかも正論を言っているように見せかけて自分の都合の良いことばかり並べているではないか。


 俺は頭が痛くなっていると、横から中山が町田の胸ぐらを掴む。


 「おいジジイ、あんま適当なこと抜かしってと痛い目見んぞコラ」


 「ぼ、暴力に訴える気か貴様!! 警察に訴えてやる! お前は刑務所行きだ!」


 「警察が生き残ってんなら喜んでムショに入ってやるよぉ、けどなぁ、ムショから出てきた時はてめぇを探して殺してやっから覚悟しとけよクズ」


 そう言って中山は町田の体を掴み上げてから前に倒す。


 「く、くそ!! だから私は新しい奴を入れるなんて反対だったんだ!」


 町田はぶつぶつと小言を言いながら去っていった。


 「すまん中山、助かった」


 「別に助けたつもりはねぇよ、ただあの野郎が気に食わなかっただけだ」


 ひと段落ついてから長澤先生が話を切り出す。


 「重ね重ね申し訳ない、町田先生は少し気難しいところがあってね⋯⋯。  それで僕たちはどうすれば良いのか⋯⋯、 外は奴らで一杯だしなあ」


 「それなら良い考えがあります」


 「え!? 槙野くん何か案があるの?」


 「ん⋯⋯、 どうするの?」


 みんなの視線が集まる中、俺は少しづつ作戦を練っていった。

 

今回も読んでくださりありがとうございます! やっぱり人が集まると問題が起きるような気がします。これからもサイハテの先へ〜ぼっちだけど現実にゾンビが出たから生き残るをよろしくお願いします!

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