第17話:ゼノビアの背後、蠢く火種
ゼノビア帝国の帝宮。皇帝との謁見を終えた「黒い影」は、数人の共を連れ、音もなく城の通用門から夜の闇へと滑り出した。
アルカディアの熱狂とは対照的な、静まり返った帝都の静寂。それはまるで、嵐の前の不気味な静けさのようだった。
影たちは入り組んだ裏路地を進み、一軒の古びた商館の前で立ち止まる。
重厚な鉄の扉を、一定の間隔で叩く。
「……私だ、開けろ」
低く、地を這うような影の声。
直後、重いかんぬきが外される音が響き、扉が僅かに開いた。
中には、十数人の男たちが息を潜めて待ち構えていた。彼らは帝国の厳しい軍装を解いているが、その眼光には隠しきれない殺気と、そして影に対する明らかな「畏怖」が混ざっている。
「……状況はどうだ。進捗を報告しろ」
影が部屋の中央に歩み出ると、男たちの一人が一歩前に出て、震える声で頭を垂れた。
「はっ。順調です。皇帝による徴兵と寒波の影響で、日に日に民の不満が溜まってきております。……ただ、行動を起こすとなると、もう少し準備にお時間いただきたく。」
「武器はどうした」
「……あちらから流れてくる『規格品』を密かに収集しております。数はだんだんと集まってきておりますが、正規軍と正面からぶつかるには、まだ心許ない状態です」
別の男が、申し訳なさそうに言葉を継いだ。
「あの……資金についてですが。頂いている分はすべて手配に回しておりますが、正直、少しばかり足りておりません。秘密裏に動き、さらに武器を揃えるには、もう一段のご援助を……」
影は、外套の奥でわずかに唇を吊り上げた。
その笑みには、慈悲など微塵も存在しない。
「……案ずるな。金ならいくらでも用意してやる」
影は懐から、ずっしりと重い袋を取り出し、テーブルの上に無造作に放り投げた。
鈍い金貨の音が響く中、影は部屋の隅に置かれた「1リオン」の写しをじっと見つめる。
「不満を持った連中に、たっぷりと『熱』を注ぎ込んでやれ。あの王子が平和を謳歌している間に、我らはこの国の喉元に食らいつく準備を整えるのだ……」
地下室に、低く濁った笑い声が反響した。
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