表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/54

第2話:辺境への左遷と「ルネざんす」の襲来

 王の執務室では、アルカディア国王ヴィクトールが窓の外を眺めて立っていた 。


「うむ。グレモリーか」


「お呼びにより参上いたしました。お待たせしてしまい、申し訳ございません」



グレモリーは深く頭を下げた 。王は視線をこちらに向けずに言葉を続ける。


「して、リオンと共にカスピの村へ向かう同行者の陣容はどうなっている?」



「殿下の身辺を支える者として、第一王女リーゼ様。そして、実務を補佐する事務官のハンスを予定しております」



 グレモリーは淀みなく答えた。

 カスピの村。そこはグレモリー自身が部下に命じて不正な徴収を行い、結果として貧困にあえぐ、王国で最も見捨てられた場所だ 。

 あそこで起きるのは奇跡ではなく、惨めな敗北の記録のみ。リオンの無能を証明し、廃嫡へと追い込むための絶好の舞台装置である 。



「うむ、聞いていた通りだな。……だが、それだけでは少々寂しいな」


王は振り返り、部屋の隅に控えていた一人の人物を手招きした 。

 派手なベレー帽を斜めに被り、極彩色に汚れたエプロンを纏った、奇妙な風貌の女性だ 。


「この者も連れて行くが良い。新進気鋭の女性絵師、ルネだ。余の親心だ。リオンの働きぶりを具に(つぶさに)記録させておきたい」


「……絵師、でございますか? 陛下、殿下には実務の厳しさを学んでいただくのであって、優雅な写生旅行ではないのですが」


グレモリーは恭しく頭を下げながら、内心で冷ややかに笑った 。

 絵師など、リオンが辺境で無能を晒す様を、視覚的に記録するための「証人」に過ぎない。


その時だった。


ざんす……!!」


ルネと呼ばれた女性は、グレモリーの顔を見るなり、指で四角いフレームを作って絶叫した 。


「公爵、貴方のその『冷徹な計算が透けて見える、何かを企む、その血の通わない横顔』……実に、芸術的なアンニュイを感じるざんす! 筆が、筆が止まらなくなりそうざんすー!!」


「……失礼な。陛下、この者は少々情緒が不安定なように見受けられますが」


「はっはっは! 気にするな。天才とは得てしてこういうものだ」



王の信頼は、グレモリーには滑稽なほど盲目に見えた 。

 だが、都合がいい。この狂った絵師が、リオンの失態を「鮮やかに」描き残してくれるのであれば。


 執務室を出たグレモリーは、廊下を歩きながら細い目をさらに細くした 。


「ふむ。あんなところで何かできるはずもない。計画通りにいけば、リオン殿下はどのような失敗をしてくれるのか……。実に楽しみだ」


公爵の低い笑い声が、廊下の闇に吸い込まれていった 。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ