第4話:勇者回:聖剣をひろう勇者
王都の華やかさが嘘のような、城壁の真下の吹き溜まり。
少年カイルは、泥をかきわけていた。 指先は冷え切り、もはや感覚はない。 辺境の村が魔物に焼かれ、命からがら辿り端り着いたこの王都。
だが、そこで彼を待っていたのは「勇者の伝説」ではなく、一日の命を繋ぐための「ゴミ拾い」という惨めな現実だった。
「……神様、もし本当に見ているなら、何か……僕にきっかけをくれよ……」
昨日から何も食べていない。 視界はかすみ、膝はガクガクと震えている。 騎士団の門兵には「汚物」を見るような目で追い払われ、道ゆく人々には無視され続けた。
世界を救う勇者になりたい――そんな青臭い夢を語った自分が、今では滑稽でしかなかった。
カイルは、積み上げられた廃棄物の山に視線を落とした。 そこには腐った残飯、使い古されたボロ雑巾、そして……。
「……なんだ、これ?」
山積みにされたゴミの隙間から、信じられないほど清浄な「光」が漏れ出していた。
カイルは吸い寄せられるように、泥だらけの山へと手を伸ばした。 湿った土を払い、汚れた麻布をかき分けると、そこから現れたのは。
黄金の柄に、いかなる闇も寄せ付けないまばゆい白銀の刃。 触れるだけで周囲の腐臭さえ消し去るような神気を放つ、一振りの剣だった。
カイルがその柄に触れた瞬間。
ボロボロの少年の全身に、爆発的な衝撃が走った。 かつて味わったことのない熱。 全身の細胞が沸き立ち、腹の底から、底知れぬ力が湧き上がってくる。
それと同時に、剣から慈愛に満ちた「意志」のようなものが流れ込んできた。
「……あ、ああ……っ!」
涙が溢れた。
カイルはこの剣がどこから来たのか、誰が残したのかなど知りもしなかった。 ただ、この絶望の底で死にかけている自分を、誰かが見つけてくれた。 この「光」が自分を選んでくれた。
そう確信した。
(……僕を、選んでくれたのか? こんな僕を、救世主に選んでくれたのか!?)
本来、王家の血筋にしか反応しないはずの聖剣が、なぜ自分に応えるのか。 少年にそれを知る術はない。
ただ一つ言えるのは、この路地裏の片隅で、一人の絶望した子供が、最強の「勇者」へと覚悟を決めたということだけだ。
カイルは聖剣を強く、折れんばかりに抱きしめ、天を仰いで咆哮した。
「ありがとうございます……! あなたがどこのどなたかは存じませんが、僕にこの力を授けてくれた聖者様! 僕は誓う! この剣で、あなたのような慈悲深い方が報われる世界を、僕が必ず作ってみせる!!」
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