第14話 試練
「これって……時空間転送装置なんじゃ……」
暗い空間に佇むそれにアタシが手を触れた瞬間、光を放ち始めた。
あの時と同じ……。
だけどアタシはその光で照らされた装置の周りを見るとゾッとしてしまう。
なぜかというと……この魔具の周りには夥しいほどの血が当たり一面に広がっていたから。
「こ、これって……血?」
「のようだが……時間はかなり経っているようだ……」
エレオノーラが床に染みついた血に触れながら言った。
サーシャは周りに目を向けながら。
「どうやらここでなにか争いがあったようだ。よく見てみるとこの部屋のあちこちに傷があるぞ」
言われて見てみると、壁には何かで大きく削られたような跡に、叩きつけられ潰れたような血、砕けた設備などが見える。
かなり激しい……いや、これは暴れて出来たっていう方が当てはまるような惨状。
そんな周りの景色に目を凝らしていると――
「おいティナ! 光が!」
ポゥ……と装置から溢れる光がアタシの体を包み込んだ。
「な、なに!?」
その光はアタシ以外にもモルトにエレオノーラ、ノーラとこの場の全員を包み込んでいく。
「な、なんやこれは!?」
「体から……力が、抜けていくような……」
イデアの言う通り、力が抜けていくような……。
体をよく見ると、なんだか手足が薄くなっているような気がする。
「体が……消えていく?」
サーシャの驚きの声。
天下の女皇陛下でもこの現象は理解できないみたい。
そんな光に包まれたアタシ達の体はだんだん強くなって……意識が遠のいた。
――――――――――――――――――――――――
目が覚めると、そこはなんにもない白くて広い空間だった。周りにみんなの姿はない。
アタシ1人だけがポツンとここに立ってる。
見渡す限り白の光景に不安になったアタシは、とりあえず前へと歩き始める。
だが歩けど歩けど景色は全く変わらない。
それどころか進んでいるのか止まっているのかも分からない。
このまま一生歩き続けるのか?
出口は?
そんな考えが巡った時、目の前に1人の人間の姿が見えた。アタシはその人に向かって駆け出した。
どうやらこの足はちゃんと前に進んでるみたいで、その人の姿がどんどん大きくなってアタシの目で捉えられるようになった。
女の人だ。それも大人の……。金髪で、白衣を着た博士みたいな人。
だけどそのシルエットには見覚えがあった。
写真だ……施設にあった天外星完成記念の写真に写ってた女の人。
虎耳で右手獣の……そうだマロンだ。いやここはレイチェル・バーモントと呼ぶべきかも。
アタシは彼女に呼びかけることにした。
「アンタがここにアタシ達を呼んだの?」
レイチェルはコクリと頷いた。
レイチェル本人であれば性格は陽気、もしくは破天荒なはずだが、今目の前にいる彼女は感情が希薄と言い表せない。
スンとした目、そこにアタシの姿が映ってるのがよく見える。
そんな彼女の前に立ったアタシに、彼女はようやく口を開いた。
「ようこそ天外星TWOへ」
「天外星……TWO?」
今からONEを目指すって言うのに1を通り越して2?
全く訳が分からない。あの装置がもしかしたらTWOなのかも知れないけど、まだよく見る前にここに連れて来られたから判断できない。
「ここはONEへ向かうために作られた装置――呼称天外星TWOです」
「うおっ。アタシの心を読んだように答えないでよ……びっくりしたぁ」
「それは申し訳ありません。私はここのナビゲータを務めさせていただくM−4649です」
ぺこりとお辞儀してそう名乗ったM-4649……呼びづらいわね……。
「ではマックスとお呼びください」
「だからさも当然みたいに心を読まないでよ」
「すみません。ですがここはデータの世界。あなたが考えた物はすべてこのデータ内で共有されるので……仕方ないのです」
「データ……内?」
「はい。ここは現実ではありません。あなたの記憶を参照して分かりやすくお伝えしますと…….R.O.Dの端末内にあなた自身が入り込んだ。そう言う認識で構いません」
うん。分かりやすい、分かりやすいけど理解が追いつくかは別だよマックスちゃん。
「おや、この説明でもお分かりいただけない……他の方々は今ので大なり小なり理解されたと言いますのに……」
「そこはかとなく馬鹿にされたような気がするけど……他の方ってみんなもここに居るの!?」
「はい。別のサーバーですが転移させて頂いてますよ」
「別の場所って……またなんで」
「ここが試練の間だからです」
ん? 今なんて? 試練の……間?
あの小説とかでよくあるような『先を進みたければ〜』とか……あんなやつ?
「なるほど、あなたはそう言ったものでの例え方であれば理解していただけるのですね、学習しました。ではその答えについては『左様。勇者よ、この先の魔王城へ向かうためには我が試練を乗り越えなければならない!』です」
マックスは可愛い声を限界まで低くしてそう言ったけど……。今から本当に魔王城へ行くんだから、ややこしくなる言い回しやめてくんないかな?
「『勇者よ――』」
「2回もせんでいい!」
「むぅ……」
感情がなさそうに見えてなかなかの茶目っ気があるわね……。なんとなく作った本人の性格がチラつくわ……。
「はい、ドクターマロンは私の――」
「でしょうね。分かってるから言わんでいいわよ」
心が読める人との会話はめんどくさい。
前にも経験があったけど、何回体験しても慣れないわね。
まあそんなことは置いておいて……。
「宇宙に行くために試練を受けなきゃダメってこと?」
「はい。天外星ONEは次元を渡ることができる唯一無二の魔具です。誰でも使用出来るとなると魔族に悪用されるリスクもありますので、この部屋にやってきた者はすべて強制的にこのデータ空間へ招待させて頂いてるのです」
「なるほどね。話は分かったわ。アタシ達も宇宙に行きたいし試練を受けたいんだけど……なにすればいいの?」
「試練を……お受けすると?」
マックスは目を少し細めてそう言った。
さっきまでの話し方と比べて真面目というか、威圧感を感じてしまう。
「う、うん……」
「他の方と同じ答えですね。では試練を開始します。試練に失敗すればあなた方の命はありません」
「い、命はないって!? ど、どど、どう言うことよ!」
「さっきも言いましたが、ここは天外星ONEへ続く道。許可なき者を排除するためのプロテクター。故に侵入者は全力で排除させていただきます」
マックスが手を指揮者のように動かし始めると、真っ白な空間に色が宿っていく。
描かれていくのはまずは青い空だ。雲もあって未来に来て初めて見る青空だ……データ世界だけど。
そして次に浮かび上がったのは森? 木がいっぱい生えた暗い場所が目の前に広がっている。
今思えばだけど、風が吹いていて土の匂いも感じ取れるようになっていた。
「ここは?」
「試練の場です。各自、与えられた空間の攻略。それが達成できれば次に目が覚めた時には宇宙です」
「どうすれば攻略か……教えてくれるんでしょうね?」
「もちろんです。といっても攻略は簡単。今あなたの目の前に広がっているダンジョンを突破する。ただそれだけです」
排除するって言ったからには、ただ歩いて到着ってわけでもないよね。
そう考えているとマックスは少し笑ったように見えた。
答えるつもりはないけど、まあその表情を見れば大体察しがつくわよ。
これはなかなか厄介だ……。他のみんな……ひいてはマロンが一番心配ね……。
「それぞれにあった試練を用意してますのでご安心を」
「それで安心できれば訳ないんだよね。まあアタシ達は前に進むしかない訳だし……行くわ」
「では……ご武運を」
一礼するとマックスは消えていった。
残されたアタシは森の中へ足を向ける。
森に入ると、頭上に『異界迷宮アルジャイナ森林』と浮き出てきた。
どうやらここの名前みたいね……。にしてもアルジャイナ森林か。たしかゴリラが出てくる森だったわよね。
アタシは出会う可能性のある魔獣の姿を想像しながら先を進むのだった。
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