第24話 土産
共和国ラングの街、そこは酷く疲弊した騎士達がタンカで運ばれたり、治療を急げと張り上げられた声やら痛みに苦しむ声で響き渡っていた。
アタシ達王国侵攻組とは別で、共和国側は魔族に陽動を仕掛けていた結果が今の状況なんだろう。
そう思うと、勝利を素直に喜べない状況だ。
アタシ達は慌ただしく駆け回る治療隊の邪魔にならないように道の端を歩き、エレオノーラの居る連合軍総司令部の小屋に辿り着いた。
「ここが……総司令部だと?」
モルトの言わんとしてることもわかる。
総司令部って名ばかりのただの小屋だもんね。
「かなり押されてる状態だったからね。本当の司令部は中立都市にあったみたいだけど、敗走してここまできたんだし急拵えって聞いたわ」
「まじか……」
これにはノンデリのモルトもどう答えていいか分からない様子だ。
そんなモルトはさておき、私は小屋の扉を開き中へ入る。
中はもっと混乱しているようで、エレオノーラがここに集まった騎士達に指示を出し続けている姿が見えた。
あまりにも真剣な様子であった為、しばらく様子を眺め、落ち着いたタイミングで声を掛ける事にした。
「ただいま。戻ったよノーラ」
「その声は、ティナか。はぁ……お前が戻ったと言うことは作戦は無事に果たされたと言うことだな」
エレオノーラがため息混じりに振り返る。
するとその疲れた目が、見開いた。
多分アタシを見ていない。目に入ったのはアタシの後ろにいるモルト達だろう。
そんなモルト達を見たエレオノーラの目から涙が溢れ出した。
「お、お前達は……」
「ふっふーん。いいお土産でしょ? あっちでまさかまさかの援軍が駆けつけてくれたのよ〜。なんと駆けつけてくれたのは――」
「モルト! イデア! それにマロン!」
エレオノーラはアタシを素通りして3人の元に駆け寄った。この広げた腕の行き場はどうしたものか……。
素通りされた虚しくなったアタシをカラジャとスコープが「今はタイミングが悪い」「ゲストさんは悪くないんですがねぇ」と慰めてくれた。
分かってるよ……。だって死に別れたかつての友達が昔の姿で現れたんだもん。アタシだってこうなるよ。
「お前達が過去から来たティナの仲間だと言うことは分かる……分かるが、言わせてくれ。すまなかった。私が弱いばかりにお前達に迷惑をかけてしまった事……本当にすまなかった」
振り返るとエレオノーラは泣きながら3人に謝ってた。
モルト達はマロンとイデアと互いに顔を向け合って、エレオノーラの言葉を聞き続けていた。
そんなエレオノーラの前にアタシの世界のノーラが歩み寄る。
「お前が私の未来の姿なのか……」
夢の邂逅だ。自分の未来の姿を見る機会なんてそうそう無いからね。ってかあってたまるかって話じゃない?
「そう言うお前は……私か」
「ああ。相当苦労したみたいだな」
「まあな。失う者が多い人生だとは言っておこう」
涙を拭ったエレオノーラ。過去の自分の前では弱みを見せまいと気丈に振る舞うつもりなのだろう。
そんなアタシ達は感動の再会をしばし堪能しつつ、王国で起きた事、知ったことの情報を共有するのだった。
――――――――――――――――――――――
「驚くべき話はあったが、まずは作戦の成功に感謝する。ありがとうティナ、それにスコープ、カラジャ殿」
感謝されると照れ臭いな〜。
スコープとカラジャも静かに会釈してエレオノーラに応える。
「俺たちの活躍よりもゲストのお仲間の活躍の方が大きい。確かサーシャ様だったか。俺たちの帝国とは別の皇帝。その人がエスカイトの魔法を見抜き、封殺してくれたおかげで何とかなったんだしな」
「ですね。彼女達の援護がなければ今頃私たちは生きていなかったでしょう」
2人の言う通りだ。
正直アタシ達はエスカイトの力を甘く見積もってた。まさかあそこまで意味不明の魔法と絶え間ない魔獣の召喚を持ち合わせてたとは思いもしなかったのだから。
「して、そのサーシャ殿は……」
「今は王国で魔族の端末を弄くり回してんぜ。俺様達は専門外だし、こっちに来たってわけよ」
とモルト。コイツはエレオノーラを一目見たかったからだけどね。未来のエレオノーラはモルトのお眼鏡に適ったらしく、声がいつもより低めだ。
かっこつけちゃって。
これには流石に後ろからノーラ達が冷ややかに睨んでいる。
特にノーラ。自分の未来の姿にそう言う目を向けられてる事が気持ち悪いのだろう。ブルルと震えて顔が引き攣ってる。
「ドスケベおばけの言ってる事はホンマや。サーシャちゃんの仕事にウチら介入する余地がなかったからな。こっちを手伝いに来たっちゅうわけやけど。まああっちは心配せんでええ。帝国軍にサーシャちゃんが付いとるからな。どないな魔族が攻めて来たとしても数日は耐えられるはずや」
「ですね。それに私たちは彼女から頼まれた仕事もありますし」
それは初耳だ。
サーシャはこの2人と相当仲が良かったし、技術面でも話を何度かしてたから信用されてるみたいだ。
「仕事とは、なんだ?」
エレオノーラが聞いた。マロンとイデアは互いに顔を見つめあって、なにか機械のような物を取り出した。
「これや」
「これは……なんだ?」
「通信アンテナです」
通信アンテナ? とアタシを含めたこの場の全員が疑問を浮かべた。
「こっちの世界が通信に弱いっちゅう話をティナ姉ちゃんから聞いてな? サーシャちゃんとソーサリーズの社員で共同開発した大陸中で通信し放題の魔気拡散装置や」
「はい。それとこちらも――」
イデアが小袋を開けてひっくり返すと――
ガラガラガラガラ。
中から大量のR.O.Dが出てきた。これって……そうだ、サーシャの使ってた収納魔法だ。
「これは……ゲストが持ってた端末と同じ……」
スコープが一つ取り上げて眺める。
「せや。これを連合軍のみんなに配る。そうすればみんなどこからでも通信できるし、魔法も使い放題っちゅうわけや」
「無詠唱でか?」
「無詠唱でや!」
これにはクールなスコープの顔もパッと花が咲いたようにニッコリ。
エレオノーラも「ありがたい」と一つ取り、画面を操作していく。
「まあまだ使えんけどな。でもここのテラフォーミュラーにこの魔具を設置すれば、ウチら側の世界と更新出来るようになる。それから魔法をインストールしてくれ」
「ちょっと待ってよ。向こうの世界のルートは遮断されたじゃない。どうして交信なんかできるのよ」
アタシは疑問をマロンにぶつけた。
マロンは「姉ちゃんの言いたいこともわかる」と腕を組んでうんうん頷いている。
なんだか馬鹿にされたみたいで釈然としないが……。
「どれだけシャットアウトされようがこの世界の時空間座標はもう認識してあるねん。向こうの世界、今はランス兄ちゃんが必死に次元転送装置を操作してるやろうけど、そこに入力された座標はどう足掻いてもここと更新できるようになっとるねん。ほれ」
と言って見せて来たのはマロンのR.O.D。
そこにはメールでランスから今し方着信していた。
本当に繋がってる……。元の世界と。
アタシは目をパチクリさせ画面を眺めていると、マロンがドヤ顔でアタシを見下ろす。
「これが科学の力っちゅうわけや」
す、すごーい!! 科学の力ってマジすごいじゃん!!
そんな技術を目の当たりにしたアタシ達は、この後も情報共有を済ませて、さっそく作業に取り掛かるのだった。
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