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無知な田舎娘は未知に憧れを抱く!  作者: ギトギトアブラーン
第11章 復讐と未来。帝国編 2
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第28話 歌の力。真の目覚めの歌

「オッポさん停めて!」


「だから今は姐さんのいう通りに――」


「いいから停めて!」

 


 ミシェルのあまりに強い一言を受けたオッポは車を停めて後ろを振り返る。

 ひとつ強く言ってやろうかと思ったが、そこにあったミシェルの顔は何かを決意したかのように真剣なものだった。



「ミシェルさん……あんた……」


「オッポさんの言いたいことは分かってる。確かに私がティナのいる場所に行ったところで、なんにも役に立たないのも、ただの足手纏いなのも分かってる。でも、あの子は私の数少ない友達の1人なの。その子が今1人で戦ってる……。ねえ? 私たちって本当にこのままでいいの?」


「このままって……そう言われましても私にはあんなとんでもない奴と戦えるほど強くありませんし、今は姐さんの言う通り逃げるしか――」


「そのままで本当にいいの? 大事な人を亡くしたくない人が目の前にいたとしてもあなたはこの先ずっと逃げるっていうの? そこに後悔はないの?」



 オッポは何も言えなくなってしまう。

 マフィアとして上の命令は絶対だ。それに姐さんは自分達の力量を測った上で逃すと判断したんだ。

 そこに俺の私情を挟むわけにはいかない。だけど、ミシェルさんの言う通り本当に後悔はないのか? 俺だってマフィアの――オーガファミリーの端くれだ。

 前までのカルニッタ時代のままだったらこれで良かった。だけど今は、これからのファミリーは誰かのために立ち上がる存在なんじゃなかったのか?

 だったら俺もこのままでいいはずがないだろ!



「後悔は――あります。今まではただ脅すだけ脅して私の力を誇示してきただけでいざと言う時、絶対に勝てないやつを前にした時に私……いや俺はずっと逃げてきた。でも後悔はあったんです。仲間を失ったこともあった。悔しかった……。今も姐さんに頼ってまた逃げようとしてる――このままではいけないってことなんですね?」


「お互い後悔しない生き方にしないとだね。だからオッポさん。ここで私を――」


「それはできません」


「オッポさんっ!」



 分かってくれると思ってたけどダメなの?

 そう思った時、車が発進しはじめ、Uターンし始める。



「ここで女子供を1人で行かせる訳にはいきませんよ! 俺だって男でファミリーの一員だ! 無力がなんだ。臆病が何だ。チンピラでもガラスのハートでも! 力になれることが目の前に転がってるんなら縋ってでも掴みに行くしかないでしょ!」


「オッポさん!」


「行きますよ! 姐さんを俺たちのボスを助けに! あそこに戻りましょう!」


「うん!」



 そして車は来た道を全速力で戻り始めた。

 幸いにも襲撃者の放つ魔法の霧が漂っている分、迷う事はなさそうで、距離もそう離れていない。ここから5分ほどでたどり着けそうだ。



 『ミシェル? 歌にはね。人に勇気を与えることも悲しみに寄り添うこともできるのよ』



 そうね。ママはいつだって歌の力をそう言って信じてた。バーンザックスの街でもママの歌を聞いてた人もそんなママの歌を聞いて明日に生きる希望を見出してた。

 どんなに辛い状態でも、悲しい現実が待っていたとしてもあの歌が――ママの歌声がそんな人々の明日を照らしてたのを私は知ってる!

 だったら私にもそれができるはず! もう迷わない。

 ママの子なんだもん。小さな酒場の歌姫の娘だったら友達の1人を奮い立たせるぐらいの歌を歌ってみせないとね!


――――――――――――――――――――――


「はぁはぁ……」



 全身傷まみれ、霧もさっきより濃くなってサルフォッサスの居場所も未だ掴めてない。

 体力も消耗してるし、本当にもうおしまいかも知れない……。

 だけど諦めて簡単に死んでたまるもんか!

 こうしている今もサルフォッサスの見えざる刺客からの攻撃と魔法を躱しながら攻略の手段を見出そうとする。

 だが――



「ぐあぁ!?」



 電撃を喰らい麻痺したのか足がもつれた所にすかさずサルフォッサスがナイフでアタシの首に斬り掛かって来た。

 自分でも分かるほどの決定的な隙だったから咄嗟に体を捻って致命傷は避けたけど肩に深い傷ができてしまい、血が噴き出る。

 腕は動かせるけど、このままダメージを受け続けちゃ勝ち筋がなくなっちゃう。



「うらぁ!!」



 刃の盾で霧を払うように攻撃が飛んできた方向に腕を振るうがそこにサルフォッサスは居ない。

 別の方向から瓦礫の揺れる音が聞こえる。

 これが本人のものか、はたまたナイフで惑わせにきているものか判断ができない。

 この一方的な状況じゃなかったら反撃できるのに!

 そう思うと焦りが出て来てしまう。

 ここまで言葉を発さずに淡々と殺しにかかってくる相手は初めてだ。正直怖い……。一方的に攻撃されるのってこんなに怖いものなの?



「ようやく底が見えましたね。さすが【破壊の鬼火】と言うだけあって継戦能力は高い。初めてですよ。ここまで長く生きながらえた犯罪者は」


「アタシは犯罪者なんかじゃ――ない……」


「気丈ですね。そこまで気高い意志を持っておきながら一刻を絶望の底に陥れるとは……。まあいいでしょう。次で終わりにします。何か言い残すことは?」


「なに勝った気でいんのよ……。アタシはまだ、こ〜んなにも……元気なんだから……アンタの攻撃なんて蚊に刺されたぐらい全然痛くなんかないんだから!」


「そうですか――では」



 来る! そう思い私は盾を前に構えて攻撃に備える。

 どこから? 武器は? ナイフ? それとも電撃? いやトドメだったら背中のハサミで来るかも知れない!

 そんな絶望的な状況で、この場に聞こえるはずのないものが聞こえてきた。



「辛く苦しい時でも貴方は1人じゃない――♩」



 これは……歌? それにこの声と歌詞は――



「ミシェル!? なんで!」



 歌は霧の中にも響いて聞こえてきた。

 遠くから聞こえる声なのに、なぜかアタシには大きく聞こえてきた。今が静かな状況だから? それとも意識が耳に集中してるから? 最後に友達の声を聞こうと頭が考えちゃってるから?

 分からないけど、ミシェルの歌はそんなアタシの耳にしっかりと聞こえていた。

 そして……体から熱い何かが込み上げてくるのを感じる。

 【気】とも【神気】とも違うその感覚はアタシの体の節々に行き渡ってくる。

 力が――湧いてくる!



「さあ立ち上がれ戦士達よ――目覚めの朝は近い♩」



 歌がサビに差し掛かる時、アタシの体から痛みは消え失せた。別に治った訳じゃない。血は今も噴き出している。だけど痛みなんて気にならないほどアタシの気分が盛り上がってる。それに今なら何でもできそうな気がする!

 【神気】を全身に張り巡らせてみる。

 今までの【神気】を注いだ時に感じる僅かな痛みなんてなかった。

 これなら行けるかも知れない。

 賭けだ。これがもしダメだったらアタシはすぐに死んでしまうかも。

 だけど――



「そんな気……全然しないわよね! 【鬼焔羅刹ッ!!】」



 一思いに【神気】を解き放つ! 【覚醒】だ。

 マロン達が作ったサポートアイテムが無い今、確実に炭化し始めるだろう体は不思議と健在だ。それどころか痛みも負荷も全くない。

 これならやれる!



 振り撒かれた【神気】はサルフォッサスの展開する霧を一気にかき消した。

 奴の姿は目の前にあった。だが奴はアタシの【覚醒】に戸惑いながらもこちらにナイフを持って迫っていた。

 腰にぶら下げた小型の魔具がビリビリと電気を迸らせている。どうやらさっきまでの電撃はあの魔具で与えた攻撃らしいわね。



「なっ!? 【覚醒】!? 話ではあなたは【覚醒】を使えなくなったんじゃ――」


「どこで聞いた情報か知らないけど。アタシが【覚醒】を使えないって思い込んだ時点でアンタは負けよ!」



 一歩踏み出す。その力強い一歩で奴との距離を詰めるのは十分だった。

 力が激増した今、奴の反応速度を超え、アタシの拳が奴の――サルフォッサスの顔を捉えた!



「ぐおっ!!」



 拳がヘルメットを砕き頬に突き刺さる! 完璧な一撃だ! そして拳から感じるサルフォッサスの体はあまりにも軽く、ひ弱だと思った。力だけならダライオスよりも弱い! コイツが得意なのはあくまで暗殺であって戦闘じゃないってことね!



「うおおおおおおおおおお!!!!」



 腰を捻りめいっぱいの力で拳を振り切った!

 炎を纏ったアタシの全力の一撃はサルフォッサスの体を高速道路のガードレールに叩きつけながら吹っ飛ばした!

 それでもまだ歌は響いていた。

 その歌は不思議と今のアタシは誰にも負けない! そんな気分に浸らせていた。

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