35本目 邪神、ライバル現る?
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挨拶が終わり、流々は担任に促され最前列の席に着席する。着席したのだが、椅子には座っていない。
「九冬さん、本当に大丈夫ですか? 痛くないですか?」
「だっ、大・・・丈夫です」
「そう? 痛かったり、痺れたりしたら言ってね」
担任が心配するのも仕方無いだろう。何故なら流々は今、自分のタコ足を丸めて椅子代わりに座っているのだから。
流々も初めは用意された椅子に座っていたのだが、椅子に座るとタコ足の収まりが悪く、無意識にタコ足が動いてしまうのだ。
最前列でタコ足がウネウネ動けば釣られて見てしまうのは人の性か、クラスメイトが集中できない。また、タコ足を含めた流々の重量を椅子が支えきれるかという不安もあった為、クラスの皆で色々考えた結果今の状態に至る。
だが、これはこれで何となく悪い事をしている気がしてくるのが担任教師。
しかし解決方法も無いうえ、座っているのはタコ足であり正座をしているわけでもない。
タコ足は痺れるのか? そんな事知っている人間はいない。故に担任教師も「痛くないか?」と聞くしかないのである。
(意外と、座り心地・・・良い)
担任教師の心情など知らぬ流々は、タコ足チェアーの座り心地に満足していた。
というのも、モニョモニョとした弾力がおしりに掛かる体重を分散してくれるので、控えめに言って最高の座り心地だった。
(でも、お姉ちゃんのお膝のほうが好き)
最高の座り心地でも不動の一位には勝てないようだ。
椅子のことはさておき、流々は目の前で話す担任教師の言葉に集中した。
担任の名前は尼崎 さなえ先生、このクラスメイト達が小学校一年の頃から一緒に上がってきたらしい。
これは探学独自のシステムで、初等部入学時に就いた担任達がそのまま高等部卒業まで一緒に学年を上がっていくのだ。つまり、この学年約100人と担当教諭3名は6年の付き合いなのである。
その為、担任と生徒の中が良く、HR中にも度々冗談を言い合う様子が見られた。
「み、みんな仲が良いね、おとーさん」
『いい雰囲気だ、流々が過ごしやすい場所であれば良いな?』
「う、うん。そうだと嬉・・・しい」
流々はぼそぼそと小声でクトーと話す。
流々が大事そうに抱き抱えるタコの人形らしきものが実は生きていることを、クラスメイト達は知らない。
その為流々がクトーと話す様子を見た者は、流々が人形と話をしていると勘違いし、その微笑ましい様子にほっこりするのであった。
担任による諸注意や連絡諸々の話が終わり、残り時間はクラスメイトの自己紹介と流々への質問に当てられた。
クラスメイト達は一日でも早く仲良くなろうと名前や好みや趣味等を教えてくれるが、流々はそれどころではなかった。
「私、芦屋 雅っ。ヨロシクね!」
「俺は猪名川 大河だ、今度一緒に訓練しようぜ!」
「ウチは高砂 美月、仲良くしよな」
「あうう・・・あうう・・・よ、よよよろ」
これ程多くの人に好意的な感情を向けられたのが初めてである流々は、嬉しさよりも恥ずかしさが勝り、クトーを盾に顔を隠す。
しかし耳やタコ足が真っ赤に染まり、ピコピコウネウネ、ヒレもパタパタと機嫌よく動く。
(((((か、かわいい・・・)))))
そんな流々の様子に、クラスメイト達は流々に向ける視線を蕩けさせるのだった。
廊下側の生徒から順に進んでいった自己紹介は流々が恥ずかしがる中順調に進み、窓側最後の列になる。
やっと自分たちの番かと首を長くして待っていた生徒達の中に、一人違った視線が混じっていることに流々は気付く。
燃えるような、熱く鋭い視線。いや、実際に熱い、室温が上昇しているようだ。
(な、何だろう・・・)
クトーから顔を覗かせた流々は視線の主と目が合う。そこに居たのは、流々程では無いが幼さの残る小柄な少女だった。
整った容姿に真紅の髪をツインテールに結んでおり、その髪は端に行くにつれ燃え上がるように白や黄色に染まる。
いや、どうやら本当に燃えているようだ。実際の炎のような熱量は感じないが、髪からは火の粉のようなものが舞い、室温を変化させる程度には熱と光を放っている。
初めて間近で見る自分と同年代の少女に、流々は目が離せなかった。
しかし少女は、髪と同じ真紅の瞳を吊り上げ何故か流々を睨む。
「では最後の列の皆さん、自己紹介をお願いしますね」
担任の言葉に、最前列に座っていたその少女が立ち上がる。
「工藤 胡愛よっ! 言っとくけどね、私はあんたを絶対認めないんだからっ。覚えときなさいっ!!」
「ひぃゃうううううっっっ!?!?!?」
燃える少女、胡愛の突然の敵対宣言に流々は身を硬くした。
(ここ、こここ怖いっ。何でっ、僕あの子にななな何もしてない、よっ!?)
わけが分からず混乱する流々に、後に続くクラスメイト達の自己紹介を聞く余裕は無かった。
◆
本日は授業が無いため昼で解散となる。
クラスメイト達は終業のチャイムの音がなると、待ちわびたと言わんばかりに流々へ群がった。
「なぁなぁ、これからどっか行かへん? この辺あんま知らんやろ、案内したるわ!」
「えー、ならウチも着いてくー!」
「俺等は・・・流石に着いてくわけにはいかんよな。歓迎は女子に任せた!」
「ぅん・・・」
皆が流々と仲良くなろうと進んで距離を縮めにきてくれる、だが流々は胡愛の言葉が気になって仕方なく生返事になる。
ちなみにその胡愛は、チャイムと同時に足早に教室を去っている。
「胡愛ちゃんに言われたこと、気にしてるの? あの子中等部で飛び級してきた子でね、流々ちゃんと同じ歳なんだ。ツンツンした性格だけど、普段はあんな事言う子じゃないんだよ?」
「せやで、素直やない猫みたいな子やねんけど、ええ子やねんで。いつもはあんな事言わんねんけど・・・流々ちゃん知り合いなん?」
「ううん・・・初めて、会った・・・ぐすっ」
「あー、泣かないで良いってぇ! 誰かおねーちゃん呼んできてあげてー」
少し前まで滅多に泣かない、というより泣くことが許されない生活を送っていた為この様な些事は気にしなかった流々だが、ここ最近は本人も驚くほど泣くようになった。
それは人に触れ、様々な感情を知り、成長した証であったが、同時に悪意や恐怖に対する耐性が下がってしまったのだ。
怖がられるのが怖い、嫌われるのが怖い、そして分からなくて怖い。
何故嫌われているのか、何を間違ったのか、流々が答えを出すにはまだ経験が足りなかった。
故に、今はただ泣くしか出来なかった。
「こっちこっち、あそこの席です!」
「教えてくれてありがとう」
入り口の方から護の声がする、誰かが呼んできたようだ。
それに反応した流々は顔を上げ、近付いてくる姉に目を向けた。その大きな瞳には涙が溜まっている。
護はしゃがんで、ハンカチで涙を拭きつつ優しく声をかけた。
「流々、どうしたの?」
「お姉ちゃん・・・」
「イヤなことがあった?」
流々は黙って、ただふるふると頭を横に振る。
「じゃあ、怖いことがあった?」
先程と同じように、ふるふると頭を振る。
「・・・き・・・きらわ、れた」
人に嫌われることの何がショックなのか、護には分からなかった。
誰かに嫌われることなど、よくある事だ。気にしてなどいられない。だが、流々にとっては大事なことなのだろうと理解し、何も言わずそっと流々を抱き上げた。
「ぐすっ・・・ぐすっ・・・すぅ」
背中をとんとんと叩かれる内に安心したのか流々は護の首元に顔を埋め、手とタコ足で護にしがみついて眠り始めた。
見た目は護が捕食されているようになっているが、これが流々の最大の甘えスタイルなのである。
「・・・寝ちゃった?」
「見た目以上に幼い感じなんですかね?」
「えぇ、ちょっと事情があってね・・・迷惑を掛けたわね」
「いえっ、全然このくらい! 私達、流々ちゃんと仲良くなりたいですし、どんどん迷惑かけて下さい!」
「ウチも仲良ぉなりたいんです! 起きたら宜しゅう伝えて下さい!」
「分かったわ、ありがとう」
護はクラスメイト達に軽く御礼を伝えると、そのまま教室を出ていった。
「護様って、あんな顔するんやな」
「ホント、めっちゃ優しい顔してた。それだけ流々ちゃんが大事なんだねー」
「動画で見たけど、母親らしい人がホンマ酷かったからなぁ・・・何となく理解出来る」
護の普段見せない表情にクラスメイト達は見惚れつつも、あれは姉じゃなくて母親だなと護の認識を改めるのだった。
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