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年末年始

175話 年末年始


 年越しに食べるソバを買いにコンビニへ行ってきて部屋に入ろうとした時に。


「獄門島さん、ヒマ?」


 青沼さんが、自分の部屋のドアから顔を出し。


「はい。青沼さんも?」


「ええ、あとから部屋に行っていいかな?」


「いつでも、どうぞ」


 珍しい。盆も正月もない、会社だ。

 とくに敏腕探偵の青沼さんが大晦日にヒマなんて。


 部屋に帰り、大晦日のつまらないTV番組も見ず。炭酸水で薄めた夏に買ったブルーハワイのシロップの残りを飲みつつ漫画を読み始める。


 ブルーハワイのシロップは、八ツ墓村さんがくれた家庭用の電動かき氷機で、かき氷を食べるのに買ったが、二回しか使わず残った物だ。


 社長が業務用のかき氷機まで買ってしまい会社に置いたので八ツ墓村さんは、使わないからとわたしに家庭用をくれた。

 あのときは部屋でかき氷を食べたいと思ったから、つい。


 しかし、会社にソフトクリーム機や、かき氷機、そのうちたこ焼機台やタイ焼き機台も買い。社内で縁日でもはじめられるんじゃないか、焼きそば用の鉄板も欲しい。お好み焼きも焼ける。

 あの社長ならやりかねない。



   ピポ〜ン


 あ、青沼さんかな?


 インターフォンの音が変だ。電池かえどきかな。一度も変えたことがない。

 って、アレは電池なのかしら?


「こんばんわ~」


 青沼さんの手にはワインの瓶。しかも二本。


「年越しそばは、カップ麺……。しけてるねぇ獄門島さん」


「私は社長とそばの小諸そばの店で食べてきたの。あ、なんかオヤジギャグみたいね。そばのそば屋。私が言うとオバギャグかしら」


「青沼さん、もう酔ってます? その瓶一本は、からじゃないですか」


「こんなの一本じゃ酔わないわよ。でも、なんで持ってきたのかしら」


「もしかして、おそば屋でも社長と」

「そんなに呑んでないけどね。私、洋酒より何故か日本酒に弱くて。嫌いじゃないんだけどね……まあそんなことは、獄門島さん。グラス。コレ買っといて飲んでるヒマなかったのよね」


 青沼さんが、酔ってるって、わかるんだから、けっこう呑んでる。


「鴨だしかぁ〜コレ美味しいよね。私もよく食べる。ナニ飲んでたの? ナニコレブルーハワイ……ソーダ?」


 わたしの飲んでたコップを。

 飲んじゃつた。


「あ、この漫画。私も昔々お子様の頃読んだやつだ……古いの読んでるね。獄門島さん」

「田守くんが、面白いからと貸しててくれたんです。そんなに古い作品なんですか?」

「古いよ。私が学生の頃の。作者は、もう死んでるし」


「そうなんですか……田守くんの趣味もイマイチわからないと思い読んでたんですけど」


「あのコ、ヲタクだからね。あ、そのグラスでいいわ」


「コレは……コーラの景品の」


「飲めれば、なんでもいいのよ。ワイングラスとか洒落たのは、いらないわ。ここは、お店じゃないんだから」


 まあたしかに。


「おつまみある?」


「ポテチくらいしか……」


「ソレでもいいわよ」


 はじめは仕事のグチから、世間一般の政治とか物価とか、まあ普通の主婦みたいな話題も。さすが青沼さんは知識が豊富だわ。


 なんて話してるうちに12時。


「あれ、もうないわ……外に買いに行こう」

「コンビニしか開いてないと思いますけどね。あ、青沼さん。あけましておめでとうございます」

「あけおめ! 獄門島さん」




 コートを着て部屋の外に。

 コートを取りに部屋に戻った青沼さんを待つ。


「ごめん、脱いだコートが見つからなくて。ねぇこのまま。名事めいじ神宮まで初詣に行こうか」

「あの人混みは、ちょっと……」

「わかる……。そうだ、会社の裏に小さいお稲荷さんあったよね。あそこでも」


 あそこなら、人は来ないし。お稲荷さんも喜ぶだろう。


「じゃ、コンビニでアゲを買って行きましょう」




 コンビニでビールと油揚げを買い会社の裏にある稲荷神社に。


「あれ、田守くんと金田一さん」


「おめでとうございます。青沼さん。獄門島さん」


「お、カップルで初詣?」

「いえ、後ろを……」


 振り返ると、社長。八ツ墓村さん。

 それに等々力さんと孫の和泉くんまで。


「獄門島さん、おめでとうございます」


「等々力さん、大丈夫なんですか。和泉くんを連れてきて」


「獄門島さんと、何度か会ってるうちになんとなくと……。バレたわ。わしらの仕事」


「はあ……。おめでとうございます等々力さん」


「おめでとうございます獄門島さん。お爺ちゃんは会えないと言ってたけど会えました。今年は運があるようです。ボク」


「君たちもアゲを持ってきたのか。じゃまとめてそなえるか」


 と、社長はわたしの持ってた袋を取りアゲを祠に。


「このお稲荷さんは、平庵の昔からあってね、江渡えど時代に稲荷神社になり、今は小さな鳥居と祠だけの形で残ってるんだ。オーナーは、マンションを建てるときにコレは残したんだよな。ウチの会社の守り神って、とこかな」


「江渡の前は、何が祀ってあったんです?」

「おお、いい質問だね獄門島ちゃん。それは、昔過ぎてわからないんだよ……。でも一説には、退治されなかった酒呑童子とかが逃げてきてココにとか、中国から来た妖狐の墓があったとか、将門の髭が祀ってあったとか怪しい話もある」


「それだと、みんな神様じゃないですね社長」


「オーナーから、聞いたんだが、アメノウズメのミコトが、ここでストリップしたと、いうので出来たとも」

「アメノウズメって、高天ヶ原とかじゃ。東侠って変じゃないですか?」

「僕もそうおもったよ……」



 わたしらはそろってマンションの表通りに。


「さて、僕らは名事神宮に。君たちもくる?」


「わたしは、遠慮しておきます」

「私も。獄門島さん、今度は私の部屋で呑みなおそう。それじゃ社長。良いお年を……」



 獄門島さんと青沼さんは、こないのか。正直一緒に行きたかった。


「田守くん、どうしたの。名残惜しそうな顔してるよ。あの二人と飲みにでも行きたかった?」


「いや、飲みにって八ツ墓村さんの方が」

「私は、女と飲むより……社長と行く予定。名事神宮のあとは、二人でムフフ。ね、金田一さんも、がんばってね」

「なんですか、その変な笑い方は……。八ツ墓村さん」


 でも、田守さんと一緒は嬉しい。

 

 渋屋駅のあたりで。


「これは、みなさんおそろいで」


「おお、今年は縁づいたたかもね。病院坂ちゃん。ウチで仕事しない?」


「なんです。元旦の夜から……。しませんよ」



「お爺ちゃん。あの人もこの会社に……。」

「知らないなぁ。社長の知り合いらしいが……」


 まさか、田守さん。あの子を呼んだの?


「なんでボクが、呼ぶわけないじゃないか……」


 え、心の中をよまれた?


「名事神宮で、面白いモノ見かけたわ。アレは何かしらね緑色した人のようなモノ……。でもヒトでは、なくてよ」


「病院坂ちゃん知らないの、ソレ多分ゴム人間よ」

「八ツ墓くんは見たことあるの? ゴム人間」

「ないけど有名よね。アレ」


「アレが噂のゴムオくんね……でも、あたしは、等身大の歩く人形をよく見るわよ。ゴム人間は服着てたけど、そっちは裸。何故かしら?」


「面白いね歩く等身大の裸人形か。空気人形の仲間だろうね多分病院坂ちゃん」


「空気人形? なんですソレ?」


『大晦日の夜』の巻 おわり


               つづく 

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