プレゼント
172話 プレゼント
「あの男は……」
「ナニ、金田一さん知ってる人? アレ高校生よね」
「あの男。昨日駅で、わたしに告ってきた高校生です。でも、制服でって大胆ですね」
制服を知っていたので、学校を張り込んで素性は、すぐにわかった。
学校の女子にはモテなくて、年上の女性になついては、みつがせていたという。けっこうやり手の高校生だ。
顔より若さを武器にした口のうまい少年だった。
もしかして、わたしも。
でも、わたしは彼とそう変わらない歳だし。
それにビンボーOLの、わたしなんかに。
あ、でもわたしがナニをしてるかなんて知らないはず。
と、いうことは、あれはホントにわたしを。
浮気現場の証拠写真を撮って依頼完了。
報告書はわたしが書いて社長へ。
「田守さん、ごめんなさい。このまえの約束」
「え、ナニ? 聞いたよ。ボクの穴埋めで仕事したんだってね。獄門島さんが言ってた。マイケル・バーガーで、お昼に偶然会ったんだ。なんだか急にハンバーガーが、食べたくなったんだって」
そう。また獄門島さんに。
マイケル・バーガーに行かなくて良かった。
田守さん、なんか嬉しそう。
田守さんは、青木さんか、獄門島さんを好きなんだと八ツ墓村さんが言っていたけど。
やっぱり獄門島さんなのかなぁ。
わたしの「モテ期」は一日。
それじゃ「モテ日」じゃないの。
「金田一さん。社長が」
「はい、すぐ」
蔵中さんが。
報告書マズッたかな?
社長室に入るなり。社長がお休みを。
3時にお茶を田守さんに。
「あ、金田一さん、今度の休みはいつだっけ?」
「クリスマスの日になります」
珍しく社長が、クリスマスに休みをくれた。去年は仕事してた。
ウチのような会社は盆も正月もない。
「そうか、ボクはその日はリハビリして、午後から暇なんだ」
え、それって。わたしを誘ってくれてるの。
「クリスマス、なーんにも予定ありません」
「金田一さん、クリスマスは彼氏とかと……」
「そんなのいません!」
「あれ、金田一さんはけっこうモテモテだからクリスマスは……」
「わたし、モテませんよ」
「そうか予定ないのか。ならドコかで……」
病院のリハビリルーム。
「もうすぐ、杖いりませんね」
「ありがとう大熊さんのおかげだよ」
「仕事ですから……。愛情もたっぷり入れてます。早くよくなぁ〜れってウッククク」
大熊さんは、足のマッサージを。
気持ちいい。
「今度はメイドのコスプレして、やったらみんな、治り早まりますかねクッヘヘヘ」
「あ、そういうのアキバにあると聞いたな。メイドさんがマッサージするトコ」
「ええ、足裏マッサージとか。アキバで歩き疲れた人を癒やしてると、聞いたことあるわ」
「耳掃除とかも……」
「そんなのもあるのクッケケケ。そうだもうすぐクリスマスですね田守くん、クリスマスは誰かと」
「大熊さんはデートでお休みとか?」
「わたしは仕事優先ですから、クリスマスでも予約取れますよってーか、もうその日は予約入ってるじゃありませんか田守くんの」
「タマリさんはリハビリでクリスマスの日に大熊ちゃんとデートかい」
「田守ですよ。なにいってんですか小松菜さん」
ここでよく一緒になる小松婆さんをボクは小松菜さんと呼ぶ。
小松婆さんはよく、家庭菜園でとれた小松菜をボクにくれるんだ。
ボクは亡くなった旦那さんに似ているらしい。
「ここで、デートってなんか最悪じゃない。小松さん。トホホですよプッフフフ」
「最悪なものかい、男どもは、あんたに触られる癒しを求めて予約いれてんだよ。わたしゃ木曽中くんじゃが」
「お婆ちゃん、僕で癒やされてるんですか? 僕なんか学生の頃『舐められたくない男No.1』だったんですよ。癒やされてるなんて思うと嬉しいです。お婆ちゃん」
「木曽中くん、お婆ちゃんじゃなく奈々じゃろ。そういうことならわしが、舐めてあげようか」
「あ、いや。けっこうです。僕は『舐められたくない男』の方ですから」
「なんか、ややこしいねぇ。舐められた方が、いいと思うんだけどね」
「小松さん、フられたのよウッフフフフ」
「小松菜さん、プレゼントですよ。人はプレゼントに弱いんですよ……。木曾中さんにいいモノをあげたら」
「そうじゃ、クリスマスに良いものを作ってきてやるよ。嫌いな物はあるかい?」
「ボクはシソとミョウガがダメです。それ以外ならなんでも」
そうだ。クリスマスに会うなら、金田一さんに何か、あげなきゃ。
「田守さんは、好きな人に何か、あげるんですか? わたしじゃないんだよねグスッ」
「そうなのかい。それは……ジジィ連中より若い子にもらいたいよねハルちゃんも」
「まあそれはね……ケッララララ」
そうかぁ大熊さんにもナニかあげたいなぁ。世話になってるし。
寿探偵社。
「おや、なんか嬉しそうだね金田一さん」
「そうですかぁ。いつもと変わりませんよ」
「そうかなぁ」
と、八ツ墓村さんが、わたしのおでこに自分のおでこをつけ。
「熱がある……」
「ありません!」
「獄門島ちゃんは、ナニか楽しいコトは?」
「べつにありませんけど」
「金田一さん。まだまだ浮かれるのは早いよ。クリスマスまで、遠いから」
「べつに浮かれてません、それに遠いって……」
「田守くんモテモテだからねぇ。リハビリのおねえさんとかとおデートの約束してるかもよ」
そういえば田守さんリハビリと。
でも、その後。
「金田一さんソフトクリーム作って。なんでかなぁ僕、上手くコーンに乗せられないんだよなぁ」
社長がオフィスにまで来てソフトを?
「金田一さん。悪いんだけどクリスマスの日、あいてる?」
「え、仕事ですか!?」
「社長、彼女休みですよね。仕事なら私が。まったく社長ったら乙女の聖日を……。無粋なんだから」
「無粋……僕は仕事なんて言ってないよ、八つ墓くん。その日にオーナーが開くパーティーがあるんだよ。毎年僕が行っててね。今年は、ちょっと行けなくなってね。金田一ちゃん、よかったら行ってくれるかなぁと」
「え、オーナーのパーティーって、お偉い方々が沢山来られるんですよね。アルバイトみたいなわたしが……」
「大丈夫だよ。オーナーの経営している会社の社員や家族、子供とか沢山来る。オーナーも堅苦しいパーティーをしない人だから普段着で行けるよ。まあひとりでだとなんだから、仕事出来ない田守くんと行って来るといい。田守くんには、社長命令で行かせるから」
と、社長がウィンクをした。
「ハイ、行かせてもらいます!」
「社長、なかなかやるじゃない。金田一さん。私のドレス貸してあげようか」
「大丈夫です。姉の結婚式に買ったのを着ていきます」
社長。素敵なクリスマスプレゼントありがとうございます。
『クリスマスプレゼント』の巻 おわり
つづく




