オードリーとは
158話 オードリーとは
昨日は、飲みすぎたわ。
青沼さんのペースに合わせて飲んじゃたから。
目が覚めたら十時まわってた。完全に遅刻。
重役出勤は、いつものことだから、まあいいか。
会社に来てみたら、いつもは来ないような仕事が、わたしに。
丁度来た金田一に。
「あ、獄門島さん。仕事のファイルをデスクに」
「うん、読んだけど……この捜すペットって、ナニ? 犬とも猫とも書いてないんだけど。名前がオードリーってだけ」
「え、そうですか。わたし八ツ墓村さんから渡された書類から……気が付きませんでした。すみません。オードリーですよね……なんか、高級そうな猫みたいなぁ」
「そう。わたしはレトリバーみたいな毛のフサフサした大きな犬を……。犬か猫によって捜し方、かわるじゃない。犬は塀や屋根には上がらないよね」
「あ、八ツ墓村さーん! 今朝の仕事でペットのオードリーって」
「あ〜頭痛い。二日酔いなの。昨日の呑みすぎちゃたわ。ナニ、ペット? ウチのレオナルドは、バター犬じゃないわよ……金田一ちゃん」
「あれ、元銀座のお水が二日酔いですか?」
「誰が元銀座のお水よ、獄門島ちゃん」
「違うんですか?」
「違うわよ、誰が言ったの? 私は元一流企業の社長秘書だったのよ。変な事言わないで」
「わたし、社長が、銀座でスカウトしたと聞きましたけど」
「たしかに、銀座は間違ってないわよ。あ〜私、よこになってくる。仮眠室、空いてるわよね金田一ちゃん」
「さあ? 等々力さんが、いるかも……あの人も」
「いい年して飲みすぎて悪酔いしてたわね昨夜。調子悪いなら、休めばいいのに有給あるんだから」
「あなたもです。八ツ墓村さん」
「あ、そういえば、獄門島ちゃんは昨夜、来たのかしら……あ〜考えんのやめとこ」
ホントにツラそうだな。やっぱ、元お水はデマ?
「あの獄門島さん、バター犬ってなんですか?」
「そんなコト知らなくても問題ないわよ。どーしても知りたければ田守くんにでも聞いたら。わたし、犬は苦手なの」
手っ取り早く社長室へ聞きに行くか。
「あれ、社長。何を朝から……」
「むかい酒。獄門島ちゃんは、大丈夫? 昨夜は青沼くんと大分呑んだらしいじゃないの。青沼くんがキミに合わせたらキツかったって……」
「え、逆ですよ。わたしが青沼さんに……」
「そうなの。あ、キミもソフトクリーム食べる?冷たくて美味しいよ」
社長、グラス片手に。片方の手にはソフトクリーム。
欲しい。
「いただきます! 好物なんです。でも、社長。むかい酒は二日酔いには良くないと……。聞きましたよ」
「そうなんだ……。ソフトは、自分で作って。僕はアレ苦手なんだ。で、な〜に? 獄門島ちゃん」
「捜すペットなんですけど、オードリーという名の」
「オードリーねぇ、やっぱ『ティファニーで朝食を』か『マイ・フェア・レディ』とか」
「それ、見てませんので……」
「『シャレード』とかは、探偵なら……見てそんは」
「あの、オードリー・ヘップバーンから離れてください。あ、なんで『ローマの休日』は? 唯一見た作品ですけど……。あ、いや、仕事のコトでした。ペットのオードリーってなんの動物かと……」
「あ、ちょっと待って」
社長は、社内ホーンでオフィスの蔵中さんに。
「今朝のペットの仕事なんだけど、アレ、オードリーってなんだっけ?」
社長も知らないの。二日酔いのせいかしら。
あ、蔵中さんに聞けば早かった。
「ありがとう蔵中ちゃん。わかったよ獄門島ちゃん。オードリーは、グリーンイグアナだって」
「イグアナ……ですか。あの写真とか、ないですか?」
「ないけど、都内にそうそうイグアナは、いないでしょ。見つけたらそいつだよ」
まあ、もっともだ。ジャングルならいざしらず。
わたしは、デスクに戻りファイルを見直した。
ペット名オードリーのトコにボールペンでグリーンイグアナと書きたした。
依頼人の名を見ると小栗愛美と。
あれ、最近ドコかで聞いた名だ。ドコだっけ。
つづく




