不羅羽木静流を追う
149話 不羅羽木静流を追う
寿探偵社。
「早いですね等々力さん。なんかわかったんですか?」
「いやぁまいったよ。クマと会っちゃてね」
「クマですか。いったい何処へ行ったんです」
「秩父だ。不羅羽木が秩父の山に行ってな。尾行してたら、クマと会ってしまったんだよ。実は、クマと言っても会ったのは子熊だったんだが、あたりに気配がしたんだ……親熊の」
「等々力さん、お茶です」
わたしと病院から帰ってきた金田一がお茶を等々力さんに。
エプロンを付けただけでまだ、メイド服には着替えてない。
「はい、獄門島さん。ごめんなさい、牛乳きれたの忘れてて。粉のでも……」
「どっちでもいいんだけど、まえにどちらがいいか聞かれたから牛乳って」
お盆からマグカップを取りコーヒーを一口。
牛乳ではないのは、わかる。
「金田一さん、牛乳の代わりだからかな、沢山入れた?」
「はい、五杯は多かったでしょうか?」
「ちょっとね……」
「『美味しくなぁあれ』しますか? 効きますよ」
「あ、いいわ」
昔のクセだな。最近、へったのに、たまに出る。
「わるいな、ソレ私のにして」
「等々力さん、久しぶりですね」
そうね。金田一が入社したての頃、等々力さんがよく頼んでた。
「ああ、それでね。やばいと思って帰ってきてしまってね。不羅羽木は見失ったよ。まえはクマなんか居なかったんだけどねぇあのあたりは。不羅羽木は大丈夫なんだろうか? ちょっと心配だなぁ」
「ですね。関東ではあまりクマは……。でも今年はやたらと多いみたいですね人里におりてくるクマ。よくニュースで見ます」
山へ何しに。あの人の親戚は山の『オールド1』はもう無いと言ってたと。しかし、それがウソなら山に『オールド1』は、まだあるのか。
それなら山に取りに行ってもおかしくない。
翌日、起きてテレビをつけるとニュースで。
〘秩父で奇妙なクマの死体が見つかりました〙
クマに襲われた人ではなくクマの死体。
クマはメスの親と子熊で、死体には外傷がなく、現在、死因を調査中なのだそうだ。
クマは何に殺られたのか?
会社に行くと等々力さんが入り口に。
「ニュースでクマの死体が見つかったのは、見たかい? 見つかった山は、昨日私が不羅羽木を追って入った山なんだよ。死んでた子熊は、おそらく私が会ったクマだと思うんだが……。クマを殺したのは不羅羽木だろうか」
「尾行したときに、不羅羽木は、何か銃とか……」
「いや、背中に大きなリュックだけで手ぶらだった。まさか、素手で……ありえないよな」
「クマには外傷がなかったと。何か毒物とか、たとえば毒キノコを食べさせたとか」
「クマの死因調査が終われば発表があるだろう」
「山に行った不羅羽木は、どうしてるんでしょうか?」
「それを調べに自宅に行こうと思ってな、一緒に来るかい」
「すみません。私の方も調べたいコトがありまして」
わたしは昨夜テマリに連絡して、月光で待ちあわせてる。
〘あの仕事のつづきですか、面白そうですね〙
と、すぐに。
しかし、来るのは昼過ぎになると。
等々力さんに、ついて行っても良かったんだけど、待ち合わせの時間に帰れないと困る。
会社に入って、金田一が煎れてくれたコーヒーを飲み。
今日出た週刊誌を読み終えて、まだ少し早いけどカフェ月光に。
情報集めと、会社には週刊誌が何冊か。
女性週刊誌は八つ墓村さんの希望だろう。
「あら、早いわね獄門島ちゃん」
「女将さんこそ。午前中に。あ、また息子さんお出かけですか?」
「いやね、息子が知り合いからもらったキノコ食べてね……」
「え、毒キノコだったんですか?」
「違うのよ、やたらと美味しくてね、私も食べたんだから。嫁も子供よ。息子だけ、お腹こわしてね」
なぜか、キノコがらみだ。みんな食べたのに息子だけがって。
やたらと美味しいってアレでは、ないよね。
「なんというキノコを?」
「えーと、名前は知らないんだけど変わったキノコだったわよ。マツタケみたいな……味で傘が星みたいなぁ形で。ん〜星というよりヒトデの方が似てるかな」
ええ、それってオールド1じゃ。まさか息子は、あの姿に。
わたしはスマホで検索して、図鑑の絵を女将に見せた。
「あ、コレコレ。オールド1っていうのね」
「あの息子さんは、今?」
「家で寝てるわよ、多分。あら、見て。食べすぎると腹痛をおこすので注意って、書いてあるわよ」
考えて見れば、息子は女将と同じ血筋だし。家族は、誰も変身してないのなら、ただの食べすぎなのか。
「女将さん、息子さんは誰にそのキノコを?」
「さて、知り合いとしか。嫁に聞けばわかるかも。なに?」
「その、珍しいキノコに興味がありまして。本物が見てみたいと……」
「全部息子が食べちゃたからね。あ、つながった。メイちゃん、タカシの様態はどうだい? そうかい良かったね。ところでさあ。昨日のキノコをくれたのは、なんてぇ人か知ってるかい。あ、そうかい。うん、わかったわ。それじゃ」
話は終わったようだ。
「息子は夕方にはこっちに出れるってさ。嫁は知らないから、息子に聞けってさ」
「そうですか。息子さんは、オカルトとか好きですか?」
「なんで、そうだと?」
「その……昨日女将さんが食べたキノコって、大変珍しい物で昔から魔女の使う薬草の一つと言われてます。で、手に入れた人のほとんどが魔女とか魔法、魔術に興味があるオカルトマニアの方なんです。だから、そのマニアの人と知り合いならと」
「そうね、オカルトね。息子は子供の頃からUFOとか幽霊とかも好きだわね。そういえば、嫁が。息子がオカルトの会に入ったとか言ってたわ。いっだったかなぁ大分前よ結婚してすぐだったから」
もしかしてフラバー・シズのオカルト会に息子は。
カランコロン
「いらっしゃい……。あら愛ちゃんのお友だちね。来てるわよ」
「テマリ、こっちよ」
「ごきげんよう愛さん。ママ、今日はアイスココアとイチゴジャムと生クリームのパンケーキをちょうだい。なんか、今日は暑いわね11月も終わるのに」
「ハイよ、愛ちゃん、まだだったわね」
「わたしも同じで、飲み物はクリームソーダにしてね」
いつもの窓際の一番奥の席につくと、テマリは、ここで日傘を閉じた。遅くない。
「ココに来る前にアンジェラに会ってきたの。来るって言ってたわ。このまえの本物のゼリー生物が見れたって大分はしゃいでたから、興味あるみたいよ」
「そうなのね。あ、わかったんだけど。あのアンジェラが言っていたような神話がこっちにもあったのよ」
「コスモンスター神話ですか」
「知ってたのテマリ」
「まあ……でも今日アンジェラから詳しく聞くと、こちらの神話は、向こうのと比べると単純で幼稚な感じがしました。それを信じている会があるんですよね。あたしもフラバー・シズの本を読みましたけど、大分いっちゃてますよね彼女」
「そうなの、わたしも図書館で少し読んで見たけど。わたしにはついていけないわ」
「でも、シズは、アレを何処で手に入れたのかしら。一説では『オールド1』は絶滅したと」
秩父の山にある山小屋。
どうしたものか、せっかく「オールド1」を見つけたのに……仲間が見つからない。
2ヶ月前に、親戚のこの持ち山に来たときに隕石が落ちたのを見て、現場に行った。
そこで見た物は、虹色の石だった。
つづく




