「貴女は女神の生まれ変わりです」そう告げられ、王子と婚約することになったのですが……冷遇されてしまい、さらには罪を押し付けられました。(後編)
だが私は何もしていない。
それに正当な婚約者はこちらだったのだ。
向こうが私を殺すことはあったとしても、その逆は考え難いのではないか? だってそんなことをしても私は失うばかり、それによって得るものなど一つもない。
……そう思うのだが。
「あり得ない、あり得ないっ……最低な悪女め……婚約は破棄だッ!!」
彼は私が犯人であると決めつけた。
そして。
「貴様は西にある魔物の国へと送る! 罰だ! そこで魔物に蹂躙され苦しみながら死んでゆけばいいッ!!」
強制的に罰を与えてきた。
どうして……。
何もしていないのに……。
でも私に発言権はなかった。
無実を主張する間もなく、私は西にある魔物の国へと送られた。
◆
――しかし魔物の国での暮らしはとても楽しいものだった。
「人間さん! これ食べていかないかい? とっても美味しいよ!」
「良いのですか……?」
「もっちろん! ポポポ飴だよ!」
「お金がないのですが……」
「人の国のお金でいいよ! この国じゃ実はそれも使えるんだ」
「あ、そうなのですね」
魔物たちは意外と人間に好意的であった。
それゆえ危害を加えられることはなくて。
むしろ多くの者たちから可愛がってもらえている感じだった。
「「「おねえさーん! 折り鶴あげるー!」」」
また、子どもの魔物も、気さくに近づいてきてくれていた。
とても温かい町。
王城とは真逆のような世界がここには存在している。
彼ら人間は知らないだけなのではないだろうか、この国の環境を。
だってこれでは、ここへ送られても罰にはならない。
何ならあちらの国にいるままの方が罰に近いのではないだろうか。
無視され、悪口を言われ――そんなことはここでは起こらない。
「ありがとう」
「可愛いでしょ? 鶴さん! 紙を折り折りして作ったんだー!」
「素敵ね、嬉しいわありがとう」
「今度折り方も教えてあげるねー!」
「ええっいいの? ありがとう。でも、ちゃんと折れるかしら……」
「ほらこっちこっちー!」
私はここへ来て良かった。
真っ直ぐにそう思う。
◆
あれから数年、私は、魔物の国の王都警備隊長であるつのが生えた男性と結婚した。
私が不良に絡まれていた時に彼が助けてくれたというのが出会いで。
気づけば距離は縮まっていた。
そしてやがて結ばれた。
私たちは特別な二人となったのである。
正直、王子かどうかなんてどうでもいい。地位なんてどうでも。たとえ自分が女性だとしても、良き身分の者と結婚することだけが生きる価値ではない。
むしろそれよりも大事にしてもらえるかどうかの方が大事だ。
少なくとも、私にとっては。
ありのままの私を抱き締めてくれるような人と生きていきたい。
その願いを彼は叶えてくれた。
今はとても幸せだ。
毎日楽しい。
彼の帰りを待っている時間すらも愛おしい。
女神の生まれ変わり、なんて、どうでもいいわ。
だってそれは私を幸せにはしてくれないのだもの。
――ちなみに、ヴァルドらがいるあの国はというと、私が出ていって間もなく隣国がけしかけてきた恐竜兵の攻撃によって壊滅したようだ。
恐竜兵が吐き出した光線によって王城も爆発したそうで――その際に王族らは逃げることもできないまま蒸発、皆亡骸も遺さない状態で死亡したそうだ。
また、王城で働いていた者たちも、恐竜兵からの攻撃によってそのほとんどが落命することとなってしまったよう。
理不尽に私を虐めていた者たちはこの世から消えた。
骨の欠片一つすらも遺さずに。
◆終わり◆




