閑話 事件後の後始末 1
〈聖 勇者〉
目を覚ますと知らない天井だったということをやってみたかった。だけどよく見て見ると、知らない天井ではなく治療班の病室だった。
「あら?ようやくお目覚めね?おはようございます。聖勇者さん」
と久しぶりに聞いた声に俺は首をギギギと油が切れた人形のように声がした方を振り向く。
「お、お久しぶりです。伊澄先輩お元気そうで何よりです」
とぎこちない笑みを浮かべる。
「はい。お久しぶりです。しばらく見ない間に大きくなりましたね」
満面の笑みを浮かべる先輩がすっごく怖い。トラウマがよみがえりそうです。先輩はそんな気がないようですが。
「せ、先輩はお変わりなく」
「ええ、そうですね正直わたくしも八年がたっていたなんて知りませんでしたので」
といってからしばらくの間沈黙が続く。結構つらい。
と思っていたら歌君と月姫ちゃんがやってきた。新人ペアだけど何でこんな短時間で仲良くなってんの?最近の若者のコミュ力高!
「あのーすみませーん。ここに聖先輩がいるって聞いたんですが、、、」
と遠慮がちに歌君が入ってきた。伊澄先輩は常に笑顔を絶やさないのが怖い。
「よぉ!歌海君おはよう。」
「勇さん!目が覚めたんですか?あ、これお土産さすがに俺の手作りだとやばい事になりそうなんで買ってきたもんですけど」
「おお!ありがとうね、そういえば俺がここに運ばれてからどのくらいたったの?」
「大体一週間くらいですね。何でもまりょくぎれ?とか言ってました」
ああ、魔力切れかそれなら俺が一週間くらいいたのも納得だ。
「それで先輩、そこの女性はどなたですか?」
「ああ、その人は俺の先輩の伊澄先輩だ。ちなみに物凄い強いぞ、俺だと勝負になるかどうか」
「(* ̄▽ ̄)フフフッ♪それは昔の話ですよ今はどうかわかりませんよ」
と不敵な笑みをしていたことに俺は背筋が凍る思いがした。
そういえばと俺は手をグーパーさせて自分の体が動くかどうか調べる。そうしていると歌君と月姫ちゃんが伊澄先輩と話をしている。先輩は上品に笑いながら相槌を打ち、受け答えをしている。
しばらくしてから清水さんがやつれた顔をしてフラフラとゾンビのように扉にもたれかかっていた。これは大丈夫か?
「ああ、勇君目が覚めたんだ。良かったー」
「あの清水さん大丈夫?やつれているけど」
「これで大丈夫に見えるならあなたは病気よ。全くメディアへの対応に政治家への対応、対応対応対応!あ”ア”ア”ア”ア”ア”----疲れた!」
「おおおう。お疲れ。これでも食べなさいな」
と俺はアイテムボックスからピュアベジットスムージーを取りだして手渡す。実は清水さんは有能すぎていろな雑事を任されるためこういうことはたびたびある。こういう時のために俺のアイテムボックスの中には大量の対清水さん用の食べ物がある。
「ありがとう。勇君いざとなったら精神でも操って無理やり起こそうかと思ったわ。え?せせせ先輩!?いや、あのこれは冗談でははは」
といっていたのでふと伊澄先輩を見て見たら眼もとに影があったが笑っていた。こわ!
「あらあら?面白いですわね。昔に比べて随分と可愛くなったものですわ」
そういえば確かに清水さんは昔はずいぶんと伊澄先輩に食って掛かってたな。そのたびに吹っ飛ばされていい思い出だね。
「ングングっぷはーーー勇君ありがとうね。ゆっくり休んで伊澄先輩もリハビリ頑張ってください!ああーもう!また電話よ。あ!歌海君例の件忘れないでね!」
「あーはいはいわかってますよっと。あ勇さん。またフルーツとか分けてもらえないですか?ちょっと約束がありまして」
「約束って?それに本人のあずかり知らぬところで勝手に約束しないでね」
「あーそれはすいません。だけど今回の一件が落ち着いたらお菓子をごちそうするっていう約束なんですが、どうせなら勇さんのフルーツを使いたいなと」
「そういう事か。あ、どうせなら慰労会とお帰りなさい会でもしよっか?ね!伊澄先輩どうですか?」
「そんな悪いですよ。私なんかのために若者は若者で楽しんでくださいな」
「まあまああんまり後輩の提案を無碍にするのはどうかと思うわよ」
と扉の向こうからおばあちゃんが歩いてきた。綿貫さんだ。
「あら?綿貫様お久しぶりでございます。お変わらずにお元気で」
「ええ、元気よ。日向ちゃんも元気になって何よりだわ。大変だったものね」
「?どういう事でしょうか?」
「ああ、いいのよ何でもないからそれじゃあ私はこれでね。リハビリ頑張ってね」
「あーそれじゃあ俺もこれで失礼します。早く元気になってくださいねお二人さん」
「では私も失礼します。何か手伝おうと思いますので」
といってから二人は出ていく。そして少しの沈黙の後で、
「いい子たちですね。あの子たちまるで十年前のあなたたち二人のようですね」
「えーそうですか?俺的には違うように思いますけど」
「ええ、本当に思い出しますよ。懐かしいですね」
〈ある記者の日誌〉
異界進軍事変について
日本のある県で起こった記憶に新しい事件だ。突如オフィス街、住宅街、海岸の三か所で空が突然ガラスが割れるような音を立てて割れ、謎の空間ができた。
そして数分としないうちに割れた空間からは未知の生命体があふれ出た。
未知の生命体の姿はアニメなどの創作物で描かれている”魔物”と呼ばれているものそっくりであった。そこにいた人々はカメラを、スマートフォンを持って撮影を行っていた。
魔物は、地表に降り立った瞬間に撮影を行ってる人々を襲い始めた。首筋に食いつき、はらわたに食らいつき、周囲はあっという間に阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
我先にと逃げ惑う人々、恐怖で動けなくて襲われる人々、必死に思い人を逃がそうと盾になる人々とみるに堪えない光景だった。
警察が避難誘導を開始する声、恐怖にあらがおうと喝を入れる声と響き小さい生命体に向かって近くのバットや角材を持って立ち向かう男たちと勇気を奮わせた勇者の誕生を見たと思ったその時、視界の端で影が横切っていった。
その影が横切った後は急に未確認生物はが消えて行ったり、首がねじられて死んだりと人を襲っている未確認生物から始末していった。
私は慌ててシャッターを切った。その姿見えない英雄を拝むために。だが速すぎてシャッターを切っても姿がとらえきれずにいると警察が私を押して避難を促し始めた。そこでを私はあきらめることにした。
この記事を私は避難所で書いている。外からはたくさんの爆発音や炸裂音、発砲音に地響きが起こっていた。私は好奇心に負け、外に出ようと画策したが、阻まれ歯がゆい思いをした。
解放されたその日、私は割れた空間の場所に急いだ。記憶を頼りに向かったが、そこには何もなかった。まるで初めから何もなく夢であったかのようだ。
ある時ふっと沸いた噂なのだが、この一連の出来事には株式会社エデンがかかわっているということだ。
株式会社エデンと言ったら世界中で今や知る者はいないゲーム会社だ。他のゲームはいくつものゲームを開発・運営をすることで生計を立てている。しかし、エデン社は『ニューワールドオンライン』というゲーム一本だけで有名にし、二十年間ずっと存続し続けている謎多き会社だ。
火のない所に煙は立たぬとは言ったもので、根拠はいくつかある。
まず一つ目が同県にある中エデン社の本社には物理的にも経営的にも傷一つついておらず社員にも損害もなかったこと。
二つ目に、姿見えない英雄の影がエデン社の付近でうっすら見つかり、更に英雄の通ったところを調べてみると未知の繊維が発見され、エデン社の付近でも発見されたこと。
三つめは不確定な情報だが、化け物を処理したのは未知の英雄たちと、何とエデン社の重役らしいというのだ。
その噂には始めは賛否両論あったが、その後の対応が素早かったことや、秘密が多すぎること。その他もろもろの理由で現在エデン社に記者が殺到している。私も今後エデン社に乗り込む予定だ。今後の報告に期待してほしい。
〈園田理たち幹部〉
「はぁーーーーー。これどう思う?みんな」
「えーっと?うわぁこれやばいじゃん?しかも結構的を射ているし」
「「こーいうのを絶体絶命っていうんだっけ?」」
「そうね。この場合は間違っていないわね」
「社長サマよぉ俺のほうのつてからも大量に連絡が来てるんだけど常に携帯とパソコンが歌ってるんだけど」
「公表はまずいじゃろうな。」
「あの社長。いざとなったらわたしが全員分の記憶を消して、工房班を総動員して街を修復しましょうか」
「いや、清水君それは最終手段でお願いね。それでな。実はもう一つ気になっていることがあるんだけど、実は今回の事件の後で、どうやら魔法を使えるものや能力に目覚めたものが出て来ているらしい」
というと全員驚愕していた。
「これは本当にまずいのぉ。」
「いっそのこと公表するか?ただし嘘を交えて」
「例えばどういう嘘?」
「まあそうじゃな。まず今回の事件の黒幕は拉致した地球人からここの座標を調べ上げてきたじゃろう。まずこれは公表する必要はないな。次に我々が対応した。これは公表してもいいじゃろう。最後に後始末じゃがこれは自然と閉じたことにしておこう」
「じゃあ俺たちのことについては別に言っていいか?」
「一応神様にも相談しておくか?」
『呼んだ?』
と社長のすぐ後ろにいた。
「うおぁ!脅かすな!」
『すまんすまん。それでだいぶ煮詰まっているようじゃな』
と俺たちが事情を説明すると、
『それならいっそのことそなたらのことを説明してしまっても構わないんじゃないか?』
「何でですか?」
『いやの?今まで帰還者は自己申告じゃったろう?だから今回のことはチャンスなんじゃないか?と思ってな』
という言葉に俺たちは言葉をかみしめるように考えだす。
「よし!じゃあ一部は公開しよう」
「ええ、それがいいわね。そうしましょうか」
「清水君悪いけど記者会見用の原稿を作成してくれるかな?後でぼかすことは言うからね」
「じゃあ俺は関係者各位に記者会見のことを伝えておくぞ」
「「僕たちは、、、「君たちは来訪班の子たちを再教育ね」わかったぁー」」
「真くん叶ちゃん手加減してね」
「「うん?わかっているよ?」」
「社長。私も一応治療班の子たちに頼んでおくわね」
「じゃ、ワシは記者会見後に若いやつらを連れて復旧作業をしようかの」
「じゃあみんなそれで頼む。俺は一度伊澄君のところにお見舞いに行ってくるよ」
と言ってみんな解散をした。
今回の閑話は少し長くなる予定です。




