M5K0 アフロディア 31
魔王の体を切り取ったことで、切るという攻撃は使えないと判断した俺は叩くもしくはつぶすという攻撃手段に変えることにし、ハンマーを取り出して、ルビーの光を纏わせると、暴れる魔王に向かって振りぬき、叩きつけ、燃やします。
ぶつけた時に感じたものはいつもの少し焦げるといった『火』ではなく、天をも焦がさんとする『炎』だということです。炎には昔から邪気を払うや、聖火というように浄化をする作用があると信じられてきました。精霊獣の状態だとできませんでしたが、今なら本能で分かります。このネックレスの中にいる精霊獣たちは一時的に力を借りて聖獣と同等の力を持っているということに。
ハンマーの攻撃を食らった魔王の外皮は少しずつはがれていき、最初に見た時より小柄に見えました。俺は次々に聖獣たちの力を確かめるように属性を変え、武器を変え、削っていきました。
聖属性を持つケリュンは浄化の力が非常に強く、魔王をものすごい勢いで削っていきます。
水属性を持つディアマトは水の浄化の力を使い魔王の力をを削り、
土属性を持つカムプアは重力を操れるようになり、魔法を地面に押しつぶし、
風属性を持つフェンリルは嵐を操り、竜巻を発生させる
樹属性を持つキジムナーは敵の魔力を養分に精霊樹を生やし
雷属性を持つサンダーバードは神罰かと思えるほどの落雷を落とし
氷属性を持つフリューは絶対零度の冷気でもって魔王の腕を魔力ごと凍らせ砕き
火属性を持つバムルは聖火の力で浄化して地獄の業火や溶岩などの炎を使い、魔王を焼き、霧散させ
闇属性を持つアポピスは呪いの力を操り、魔王の魔力を弱体化させ
光属性を持つアルカは光の力で相手の弱点を見抜き素早い一撃をお見舞いし
数時間魔王と戦い、攻撃をかわし、地面をえぐり、削りました。そして、光の属性を操り膨らんだ魔王の中心に五メートルくらいの核が見つけます。
魔王の大きさはすでに十分の一くらいになっていました。ですが、まだまだ見上げるほどの大きさがあり、魔王の核にダメージが与えられるほど小さくなってはいません。
俺はそのまま削っていては三日三晩戦い続けることになりそうでしたので、考えを巡らせて剣を持ってそこにケリュンとフェンリルとディアマトの力をすべて込めて全力で振り下ろし、魔王をがっつり削り切り五メートルくらいの球体が残りました。手に持っていた剣を見ると大きくが罅体にはいっており、あと一回持つかどうかの力しかありません。
ネックレスを見てみるとモルガナイトとグリーンベリルとサファイアが暗く濁っていました。中にいる聖獣の力が小さく感じられ、今日はもう使えません。
魔王の核は大部屋の中心で佇んでいて、何も動きを見せません。俺と正義は魔王の核の置いてある部屋に行き、よく観察をします。
しばらく待っていると、核が脈打ちスライムのような不定形に変形し、人型に変化し、凹凸ができ、腕らしきものが生えて足のように変化し、指が生え厚い胸板があり、長い角が生えた魔王に変化しました。魔王は先程の玉座にいた魔王とは少し違い、四対八枚の翼が生えていました。
「フハハハハハ素晴らしいぞこの力ぁ!礼を言うぞ勇者よ!よくぞ我をここまで削ってくれたなぁ。おかげさまでこの通り制御ができるようになった。褒美に貴様を俺の力を振るう最初の生贄にしてやろう。礼には及ばんぜひ感謝し、全力で抵抗してくれたまえ」
というなり俺たちが臨戦態勢になるのを待ち、手のひらを上に向けて指を折って挑発してきました。
俺たちは武器を構え出方を探っていると、魔王はしびれを切らして俺に襲い掛かってきました。魔王は目にも止まらない速度で襲ってきます。俺は全身にトパーズの光を纏わせて、雷のような速度で躱し、後ろでドゴン!という音が響き、魔王の腕が肩ごと壁に埋まりました。
少しの静寂の後魔王はゆっくりと壁に埋まった腕を引き抜きこちらに向き直り、特に気にした様子もなく、再び突進をしてきます。俺は先程と同じように躱しますが魔王は急に曲がってきて俺の腹に思いきり
こぶしが刺さりました。
俺は体をくの字に曲げて衝撃を逃がします。そして、俺は反撃に出ることにしました。俺は二本のサーベルを取り出して魔王に受かって走り出します。残念ながらフェンリルの力はもう使えなくなっていますので、攻撃力重視の火属性を使うことにし、剣先に聖火の力を集中し、魔王に切りかかりました。
魔王はこぶしを握り、ラッシュをかけますが、今までこぶしで戦ったことがない様子が丸わかりで、力に任せてこぶしを振るっているだけですので、一見早く鋭いように見えても簡単に避けられます。
なんだこいつ。こんなに弱かったのか?と考えながら、魔王のパンチを躱して懐に滑り込みがら空きのわき腹を切り、わきから腕に向かって切り抜き、魔王の腕を切り離します。そしてそのまま切り刻んでいきますが、いくら切り刻んでも全く死ぬ気配もなく、もうそろそろ原型をとどめていません。
もうそろそろ膾になりそうですので、俺はいったん離れることにしました。しばらくして、魔王の膾が動き出して元の姿に戻りました。
「おい正義!どうなってんの?こいついくら切っても死なないんだけど」
というと正義は顎に手を当てて考えてさっと顔を上げて、理解したという表情をして、
「歌君少し待ってて」
というと正義はあっという間にいなくなっていました。
俺は魔王を細切れにしては復活し、細切れにしては復活しを繰り返して数時間そろそろ飽きてきました。魔王の方も死んだような眼をしていてうわごとで「殺してくれ、殺してくれ」と連呼していて心苦しかったです。
「歌君待たせたね。連れて来たよ、この世界での主役」
と不意に後ろから正義の声がして振り向くとそこには大きな風呂敷をくくりつけた正義が立っていました。正義は風呂敷をゆっくりと地面に降ろして風呂敷を解くと中には目を回している取り巻きBがいました。その時俺はそういえばこんな奴いたなと思ってしまった程度には影が薄いです。
正義は取り巻きBの頬をたたき起こします。取り巻きBはゆっくりと目を開き正義の顔を見て、少し野沈黙ののち、這って後ろに下がり怯えていました。
「おいおい、そんなに怯えることないじゃないか。さっきやって欲しい事があるといっただろう?」
「っそそそっそそんなこと言ってもお前が拉致してきたんだろうが。っめっちゃ怖かったんだっからな!」
「まあそんなことはどうでもいいから、あいつ魔王なんだけどあいつにとどめを刺してほしい。それが終わったらもう帰れるからね」
というと、無視したことに激怒しましたが、正義の言うことにポカンとして魔王のミンチを眺めて、首を傾げて、しばらく考えて、ゆっくりと立ち上がり手に持っていた剣を取り出して、蠢き再生しようとしている魔王のもとに近づき剣を両手で逆手に持ち、振り下ろしました。
その瞬間!魔王は聞こえない悲鳴を上げてミンチが消滅しました。俺は疑問を浮かべた表情でそれを眺めて、正義のほうを見つめると、何かを察して、俺が聞きたかったことを言ってくれました。
「実はさ、あの俺たちが転移した魔法陣を使うと、勇者に選ばれた人はたとえ幼児であっても魔王に一撃当てるだけで倒せるようになるしけど、ほかの人だと、絶対に魔王を倒せない。ゲームでいうと、常にヒットポイントが1で止まるようになるんだよ」
という言葉に啞然としました。
魔王のミンチがあった場所を見てみると、きれいなこぶし大の石と共に、小さな機械が入っていました。少し前に調べたことがあるのですが、これはポケベルというやつでしょうか。
そんなこと考えていると正義が近寄ってきて、
「歌君お疲れ様ーこれで家に帰れるから、おめでとう」
といいました。その瞬間俺の足元が光に変わり、そこから徐々に体が光になっていきました。
俺の変化に戸惑っていると何も変化がない正義が俺の耳元で、こっそりと
「もし元の高校の教室に戻ってもこの世界のことを覚えていたら、ここに来て清水彩っていう人を訪ねて。覚えていることを言ってね」
というと、俺は最後に頭が消えて、視界が光に飲まれて消えました。
気が付くと、俺は教室の中で、木島に胸ぐらをつかまれて殴り掛からんとばかりに振りかぶっています。俺はふっと笑みをこぼして、木島のパンチを片手で受け止め、
「離してくれないかな」
とにっこりと笑うと、木島たちはタジタジになり、逃げるように帰っていきました。
さて帰ろうかな。と俺はズボンのポケットに手を入れると、そこには金色のメダルが入っていました。かなり重いメダルですが、大きさはさほどありません。精々一円玉くらいの大きさで、分厚いです。俺は何だろうなと考えながら喉の奥に小骨のように引っかかる感覚を残しながら岐路に着きました。
〈伊藤 正義〉
俺は歌君たちが元の世界に戻ったのを見届けて、魔王の残骸を回収しました。さて、俺も最後の仕事を済ませて帰るとしますか。と考えていると、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴという音が城全体に響き、パラパラという音をしながら小石が落ちてきました。俺は大慌てで懐からがま口ポーチを取り出して、魔力を流して無造作に放り投げると、がま口ポーチは、空中で羽が生えてきてさらには百個くらいに分裂して、俺の指示を待っていました。
「この城の隠された≪・・・・≫宝とか人の遺骨とかをすべて回収して脱出しろ!」
というとがま口ポーチたちは素早く飛行して散開しました。俺はがま口たちが部屋から出ていったのを確認し、俺も脱出することにしました。
俺は魔力で背中に翼を生やし、室内で空を飛び城から脱出し、探査魔法を使い人や生命体がいないことを確認し、ある一つおかしい部屋があることに気づきました。
その場所は浮島の一番下の方です。地下牢の更に壁にに囲まれた場所です。
俺の放ったがま口は物を破壊することができません。ですので俺は寄り道をして城の最下層に行くことにしました。
揺れているのにも関わらず俺は飛んでいるので、揺れの心配はありません。ですのでスムーズに地下牢の最下層に着きます。最下層で探査魔法を使うと、牢もない空間の壁の奥にその場所があることがわかりました。
俺は小さなナイフを取り出して、壁に突き刺し壁を小さく爆破させると、ガラガラと壁が崩れてその向こうに赤い彼岸花が咲き乱れる晴れ渡る空がある小さな丘と真ん中に棺が二つ置かれている空間があります。
俺はこの空間を見て一度ゆっくりしたいという衝動にかられましたが、頭を振って、棺を収納し、空間を、写真に収めて、その場所を後にしました。
俺が城を出て数分後に、がま口ポーチたちが出てきました。がま口ポーチたちは俺の目の前に収納したものを吐き出して俺はそれを回収するという作業を繰り返して、回収し終わると、魔王城が轟音を立てて崩れていきました。確認作業は後で工房班や研究班に詳しくは頼むことにします。




