スライムゼリー
スライムの粘液。最初に口に入れるのに勇気がいった。
一口食べてみる。なんと言うか、ゼリーというより○飲めたねというか、不思議な食感である。
冷やすと硬度が増してゼリーっぽくなったため、リンゴを絞ってスライムの粘液と砂糖を混ぜて冷やす。リンゴのスライムゼリーだ。
砂糖を入れると原価表からみても大銀貨1枚にしないと採算が取れないことになるので、砂糖を入れてないのも作ったが、十分に美味しい。
明日、銀貨4枚で売ってみよう。
その前に「小さな妖精の店」という看板を作る。
木の板に書きなぐっただけのモノだが・・・
家の一階部分だけど、念じたらケーキ店のようなガラスケースの棚が出てきた。しかも冷蔵機能付き時間固定付き。チート過ぎる。
リンゴ、イチゴのゼリーを並べる。銀貨4枚の値札を付ける。
あと、砂糖を使った大銀貨1枚のゼリーも2つ。
元手が只というのは卑怯な気がするが・・・まあ様子見だね。
翌日。
鐘が鳴る。朝6時と9時と12時と15時と18時に鳴るらしい。
魔法の鐘だから正確。この塔は街で二番目に建つ建物だって。
9時を知らせる鐘と同時に店を開く。プレオープンだ。
宣伝はしていないので客は来ない。街の北側だからね。
看板を出し魔法の練習をしながら店番。
「登録してすぐに店を出す。やる気いっぱいで頼もしい」
昼前に商業ギルドの受付嬢が来店した。確かアルマさん。
「スライムゼリーだね」
ガラスケース越しに商品を見る。
「このケース凄いね。魔法道具?」
「はい。冷蔵機能と時間固定の機能が付いてます」
「白金貨クラスの魔法道具じゃん」
アルマは目を丸くする。肉屋垂涎の魔法道具だ。
「この家自体が魔法道具ですね。防犯設備もバッチリです」
まぁギルドから情報が漏れることはないと思うけどー応ね。
「家が魔法道具?」
「両親の遺産です」
というカバーストーリー。
「両親の・・・まだ幼いのに」
「エルフは長寿で、成長も遅いんですよ。これでも30歳」
「30歳?6歳ぐらいに見えるけど」
「まぁエルフの30歳っていうと人間なら6歳ぐらいですけどね」
私は笑う。
「あなた、早熟なのね」
「よく言われました」
まぁ人間としての積み重ねが30年ほどあったからですが。
「で、商品はスライムゼリーのスイーツですか?」
アルマはショウウィンドに並ぶスライムゼリーを見る。
「あれ?凄くお高いのがありますね」
アルマは一角に鎮座まします高いスライムゼリーを目ざとく見つける。
「あぁ、砂糖を混ぜてるんです。時間固定の機能があるので作ってみました」
その言葉を聞いた途端アルマの目が光った。
「砂糖?あの砂糖?」
「自家用のがあったので・・・ただ原価表をみると大銀貨1枚の値段にしないと売り物にならないんですよね」
材料が自家用だから安くしましたでは今後の値段付けに苦労するのは目に見えているからね。
「スライムゼリーの砂糖漬けを一つお願いします」
何の躊躇いもなく、スライムゼリーの砂糖漬けを頼みましたよ?
「承りました」
ショウケースからスライムゼリーの砂糖漬けを取り出し、紙の箱に入れる。
「珍しいモノをありがとう」
アルマは恭しく紙の箱を受け取るとギクシャクと店を出て行った。
「う~ん。砂糖を使った商品は禁じ手かな?」
ギクシャクしながら商業ギルドに戻ったアルマは休息所に入って大きなため息を吐いた。
大銀貨1枚。お昼の休憩時間におやつとして食べていい金額ではない。
でも、あるなら買うでしょ?一般人にとっては一年に一度あるかどうかの幸運です。
「神に感謝を」
フォークをゼリーに入れて小分けにして一口。甘い。
果物だけの甘さではない。
記憶の隅に微かに残る砂糖の甘さがここに・・・
「贔屓にしてもいいかな?」
砂糖抜きでも十分利用価値がある。
「でもしばらくは私だけの秘密にしょう」
アルマは一人にっこりと笑った。




