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SOUL BREAKER (ソウルブレイカー) 〜転移した漫画家の最強異世界冒険譚〜  作者: 百屋敷レイ


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第71話 アハ・イシュケーン対カイエン

(カイエン視点)

闘技場に着いた俺達はアハと言われる青年と俺を残して観客席に散っていった。

ここは普通の訓練場ではなく大きな試合などをする時によく使われる場所だ。

普段は訓練に使われているので騎士団やら城の兵らが訓練用の標的などの備品や、その他の物を片付けている。

広さはかなりあって王都の大広場くらいある。(サッカーの試合場位の大きさ)

ここならかなり暴れても問題無い。

試合場を取り囲んでいる観客席には魔法師団の貼った衝撃を吸収し物理や魔法による結界を、ほぼ全て防いでしまえる。

あのマーリンと炎壊の試合でも流れ弾が当たってもビクともしなかったので俺が本気で攻撃しても大丈夫だ。

なので全力で戦える。

この男がはたして奴から感じる圧倒的な魔力を使いこなせるなら、いい勝負が出来ると言う物だ。

しかし対峙しているアハと言われる青年は落ち着いているな。

これから俺と戦うと言うのに感じる魔力は強大ではあるが少しも乱れていない。

今から俺と戦うと言うのに、これ程落ち着いた奴は初めてだ。

俺の実力が測れない訳ではあるまい。

それでこの落ち着き様は只のマヌケか…もしくは達人と言う事だろう。

はたしてどちらか…

フフ…俺は年甲斐もなく興奮しているな。

これ程の魔力、守護者級だ。

しかも、こ奴は只の人間種だ。

俺と同じ人間で、これ程の魔力を感じるのはマーリン以来だ。

しかしマーリンは魔法使いなので剣の勝負が出来ぬ。

戦士で人間種相手に成人してから30年あまり俺は一度も負けた事など無い。

直近では金級冒険者のオーガの雷神バルハバルと15年位前に試合をし引き分けたのが記憶には新しい。

最も、あの試合はお互い力量を測っていただけで真剣な試合とは言いがたい。

本気でやり合えれば良い勝負になっていたはずだ。

しかし雷神バルババルは、やる気が無い。

殺し合わない戦いなど無意味と言って俺と試合をしたがらないのだ。

奴と殺し合うなど論外だ。

俺も奴も国の重要な役職を持っているのだ。

どちらが欠けても国の大きな損失になる。

なのでバルババルとは、あれ以上試合は出来なかった。

俺が本気を出せる唯一の存在だったのだが、もはや戦える事は二度と無いと思う。

何とも勿体無い事だ。

なのでもう二度と本気で剣で試合など出来ぬと思っていたのだ。

それが、あの時より15年ぶり位で強者と試合が出来るとは嬉しい誤算だ。

カイルが成人し剣士として成長すれば強者となり、いずれ俺と互角に戦える様になると、期待していたのだが、それよりも早く強者との戦いに巡り会えるとは剣士としてこの上ない喜びだ。


「では闘技場も準備が整った。双方、準備は良いか!?」


拡声魔法で闘技場から、かなり離れた王族用の閲覧室から弟の国王イグルスの声が会場全体に響く。


「ああ!いつでも良いぞ!!」


俺は自分を鼓舞する様に大声で、それに答えた。


「うむ俺も構わんよ」


アハと言われる青年は普通に会話をする様に、それに答えた。

本当に落ち着いている。

まるで覇気を感じないが大丈夫なのか?

これから俺と戦うと言うと、どんな相手でも気の高ぶりを必ず感じる物だが…


「お前は闘気を出しすぎるな。それでは相手に悟られてしまうぞ?もっと気持ちを落ち着けんと感情を読み取られる。少し未熟だな」


俺の気持ちを読む様にアハと言われる青年は、そう述べた。

俺が未熟だと?

大陸でも横に並ぶ剣士などの今では数える程しか居ない、このカイエンが?


「フッ、そんな事を言われたのは初めてだ。面白い俺が未熟かどうか、すぐに教えてやる」


俺は、いつもの構えをとる。

すると、アハと言われる青年はクスリと笑う。


「何が、おかしい?」

「フフ、いや失礼。馬鹿にしたのでは無いよ。お主もカイルも忠実に俺の武術を基礎にしているので少し嬉しくなってな。ヨルグめ父の教えた武術よりも、どうやら俺の技を後世に残したと思ってな」

「…では俺の技は見切っていると?」

「いや、それは分からん、お前程の闘気がある奴は久しぶりだ。剣は魔力の多い少ないで、ある程度の実力は分かるが、やはり直接、剣を交えねば、その者の力は測りきれん。けして侮ってはいけない。油断は死に、繋がるのでな」

「フ、同意だ。では、初めから全力で行く。よろしいな?」

「もちろんだ。期待しているぞ?カイエンとやら」

「クク…それは、こちらのセリフ何だがな」

「では、両雄、試合を始めよ!!」


国王の開始の合図と共に俺は奴の首めがけて突きを放つ。


「は、速い!やはりカイエン様は本気だ!!」


セリュードの声が聞こえたが俺は気にする事無く奴に突きを放った。

数メートル離れてはいたが一気に間合いを詰めた。

この「先牙」を避けられる者は少ない。

本気で俺がこの技を繰り出せば9割方、決着がつく。

避けられる者ならば強者と言う訳だ。

俺は、それを確かめる様に渾身の一撃を放つ…が、何と、俺の突きは木刀で受け流され美しい所作で反撃が来る。

俺は、それを躱し、また数メートル開始の位置へ下がった。


「なる程、閃光の突きか。良い動きだがカイルにも言ったが、お前達の技は俺の技に近すぎる。もっと違う技を出さねば、お前に勝ち目は無いぞ?」

「な、何と!これを躱し反撃まで…フ…フフフ!面白い!!では勝ち目が本当に無いのか試させてもらう!!」


俺は自分の技を躱されたショックと奴の実力の高さに高揚した複雑な心境で攻撃を繰り出した。

7連撃の奥義をフェイントをかけた横斬りを魔力を込めた飛ぶ斬撃を。

しかし奴は可憐なムダの無い動きで、ことごとく躱していく…本物だ!!

アハか、どうかは知らんが間違い無い、こ奴は今まで相手をして来た、どんな戦士よりも強者だ。

でなければ本気の俺の攻撃を躱せる理由など無いのだ。


「うむ、良い太刀筋だ。良く稽古を積んでいるな。しかし少々荒っぽいな隙が多い。魔力の乗せ方も多すぎる。格下相手なら、それで通じるが互角以上の相手には悪手だな。無駄に体力を減らすのみだ」


そう言って鋭い突きを奴は放ち、かろうじて俺は、それを受け止め数歩下がった。


「防御は中々だな。お前の実力は大体分かった。俺の弟子の中でもかなりの腕前だった師範代位の実力だな。この世界でも有数の使い手なのだそうだが上には上が居る。今回は、それを学べカイエンとやら」

「!?」


良く見たら奴は試合開始から自分の場所を動いていなかった。

大きく躱したと思っていたが何とその場所に留まりつつ俺の技を捌いていたのか…そんな事は遥かに実力差が無ければ出来ない事だ。


「そろそろ辞めようカイエンとやら。もう実力は分かっただろう?お前も国の英雄らしいし、これ以上は周りを幻滅させるだけだ。恥をかく必要は無い負けを認めよ」


「フ、気遣い無用!1本取られても無いのに途中で負けを認めるなど愚の骨頂!!戦いの中で死ねるならば戦士の本懐だ!!では受けてみよ!!この俺の最強の奥義を!!」


俺は、そう言って自らの魔力を全て木刀に集中させる。

まさか、この技まで出さざる、おえなくなるとは…だが、この男を倒すには、この技しかない。


「あ、あのカイエン様の技は!?まさか龍牙か!?い、いかん!マーリン防御結界を強化するんだ!!でないと城に大穴が空くぞ!!」


エニグマが、マーリンに、そう大声で告げた。


「カ、カイエン様!?試合で奴を、殺す気か!?」


ゼルフィンも、カイエンの構えを見て驚愕している。

俺が、これだけの魔力を込めて動きを止めているのに奴は攻撃をして来ない、どうやら俺の攻撃を受け切るつもりなのだろう。

なめられた物だ。


「その奢り、あの世で後悔するが良い!!」

「フッもう二度と死ぬのは、ごめんなんだがな」


奴の軽口を気にせず、俺は全力で


「龍牙!!」


と、自らの最強の技を、放った。


「!?」


しかし奴は、龍牙の飛ぶ斬撃を、何と受け切り相殺した。

その衝撃波が、闘技場を、囲う結界に当たり振動が観客席を、襲う。


「ヒィ!?」

「しょ、衝撃がここまで!?」

「な、何て技だ、カイエン様!!」


激しい揺れにあい、どよめく観客達。


「クア!!カイエン様、あ奴が相殺してくれなければ、この程度の衝撃で済まされませんでしたぞ!?城を壊す気ですか!!」


マーリンが文句を言っているのが聞こえるが、俺はそれ所では無い。

全力で放った龍牙の衝撃でアハと言われる男の立っていた場所は大きく地面がえぐれてしまっている。

土煙が舞い奴の居場所が掴めない。

普通なら相殺されたとは言え俺の龍牙をくらって無事である訳が無いのだ。

だが奴は近年稀に見れない強者だ。

警戒を怠らない。


「素晴らしい俺は一歩も元の場所から動かない気でいたのだがな。まんまと動かされてしまったよ。見事な技だ。この技ならもしかしてシグレアキラに届くかも知れん。良い物を見せてもらった」

「何!?う、後ろに!?」


反応しようと身体を動かすが龍牙で全魔力を使ってしまった。

身体が言う事を効かない。

すると奴の木剣が俺の顔の前で止まる。


「勝負ありだ。降参しろ。これ以上は只のいたぶりにしかならん。俺はまだ魔力を半分も使っておらぬ。この意味は分かるな?」

「フフ…分かっているよ…降参だ…いや、降参します。お見事です信じましょう、これ程の達人が、アハ様で無い訳が無い、ようこそアハ・イシュケーン様!!数百年後の我らが王城に!!」


そう言って、俺はアハ様に、片手を差し出した。

次回は11月10日(火曜日)に更新です!(^^)

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