第45話 竜の魔窟(2)
「いや大丈夫だ。殺しは性に合わねーんだけどよ、あのバカ共よりによって、お前らを指差して喰うとかぬかしやがったんでよ…」
頭を掻きながら俺は、ブツブツとそう弁解した。
「相変わらず甘いわね、サイクロプスなんて人間を餌としか見てないのよ?倒さないと、ここを通る人間が、また襲われるだけなんだから倒して当然なのよ。あなたが罪の意識を感じる事はないのよ」
「ああ…一番大事なのは仲間の命だからな。俺も見逃して、お前達に被害が出る相手を、見過ごす程バカじゃねーさ、ねぇーんだけどな…やっぱ魂を消しちまうのは気分悪いんだよ…」
「もぅ!気にする事ないわよ!あなたは、当然の事をしたの!それで良いでしょ!!」
そう言って、指を一本で立ててウリシュクは俺に詰め寄った。
うおっ!
顔と顔の距離にして10cmくらいだよ!
近いよ!
「わ、分かったよ。まぁ俺のワガママさ。今後も、お前達を傷つける様な連中は、魔物だろうと何だろうと容赦はしねーから大丈夫だよ!」
そう言って、近寄りすぎたウリシュクから、少し距離をとって照れ隠しをした。
その仕草を見て、クスッとウリシュクは笑い満足した様な表情をする。
騎士達は、サイクロプスの腹を裂いて魔石を取り出していた。
討伐の証拠になるので、普通は倒した冒険者の物になるらしいけど、今回は依頼主が倒した魔物があれば、俺達が倒しても一旦回収して依頼後に相応の金額を、貰う事になっているらしい。
魔物を倒すと体内にその魂の様な魔石が発生するらしい。
強かったりレアな魔物の魔石程、高価で高く買い取ってくれるらしい。
サイクロプスならかなりの値段になるみたいだ。
俺が三体倒してるので、その分の料金は後でウリシュクに支払われるらしい。
(俺は、まだ見習いなので払われるのは、パーティリーダーであるウリシュクに、入るって寸法だ)
テキパキと騎士達は、サイクロプスを解体して行く。
慣れた物だ。
貴重な角や、爪などを、綺麗に剥がして他は埋めていくらしい。
何でも倒した魔物の肉を目当てに、また大量の魔物が集まってしまって、危険なんだそうだ。
しかしサイクロプスは大きいので、焼いてしまうにも結構火力がいるらしく魔力が勿体無いとかで魔法使いのテムと騎士団が揉めている。
あ、そうだ、この肉とかレオンなら、うまく食用に変換出来るんじゃないかな?
船の食料も、枯渇寸前らしいし、ちょっと人型の魔物は抵抗あるけど、レオンなら上手く加工してくれるんじゃないかな?
そう思って、俺はレオンに通信をした。
「可能です。なんであれタンパク質なら加工して食用に変換出来ます。ぜひ回収をお願いします!」
と、言うのでウリシュクにも通信してもらい倒した四体の肉体は、ウリシュクが光魔法で消失させた事にして、船に転送してもらった。
ただ、転送しただけだと、消えるだけなのでレオンがまた、派手な光のエフェクトを付けて、サイクロプスが消える瞬間に、まばゆい七色の光のエフェクトを発生させた。
「おお!素晴らしい!!さすが炎壊だ!一瞬で五体ものサイクロプスの巨体が消失したぞ!!」
「何て魔法だ!!み、見た事ないぞ!?」
「は…初めて見ましたよ!?テム様こ、この魔法は一体!?」
「わ、分からないわ…もしかして伝説の光魔法かも…私も、こんなの見た事無いもの…」
少し悔しそうだが、さすがのテムも驚きの方が上回っているみたいで、啞然としている。
すると通信で、ウリシュクが
「ちょっと!また変な魔法使ったみたいに、思われてるじゃない!」
と、文句を言って来たが、金級のウリシュクがそれをやるのが、今は一番、不自然じゃ無いのだ。
まさか俺やミリスが、やってしまうと、言い訳が物凄く面倒くさい事になるのだ。
俺は、サムズアップ笑顔でウリシュクに、
「ごめんね!」
と、爽やかな笑顔を送った。
すると、物凄いジト目で、返されてしまった。
うーん、ごめんて!
今の光景を見ていたシスティリア王女は、
驚愕していた。
「テ、テム!?今の美しい魔法は、も、もしかして伝説の光魔法なの!?」
「わ、分かりません、私も光魔法なんて見た事ありませんし、マーリン師匠だって使えないんです…そ、それを金級とは言え、あの様な少女が使うとは…私も信じられないんです…」
「なら、本人に聞いてみるわ!」
「え!?」
そう言うと、システィリアは、ジト目をしていたウリシュクに、詰め寄った。
「ちょっと!炎壊!今のは何!?答えなさい!!」
「は?何ですか?王女?」
「は?じゃないわよ!!い…今のは女神様が使ったと言われている、伝説の光魔法でしょ!?伝承にある七色の神々しい美しい光も出ていたし!!ま、間違いないわ!教えなさい!!」
あ、マズイ何か王女、勘違いしてる。
一瞬戸惑ったウリシュクだったが、そこはさすがだった。
「王女、冒険者にとって、ましてや魔法使いにとって、魔法は命です。そうやすやすと、教える事は出来ないんですよ。それがたとえ王族の方からの命令でしても、ご了承下さい」
おお、さすがだ。
誤魔化す事にたけてる、ウリシュクだ!
ナイスな言い訳だ!
「な、なんですって!?冒険者風情が、私の言う事を聞けないって言うの!?」
「ご了承下さい」
「ゆ…許さないわよ!不敬よ!!捕らえなさいテム!!この狼藉者を!!」
「い、いえ 王女、確かに炎壊は、下賤な冒険者ですが、魔法使いの理屈は通じます。我々魔法使いにとって魔法は、生命線です。他言は確かに自らの首を、絞めかねます。秘匿するのは、仕方のない事です。王女も魔法使いなのです、マーリン師匠からも、そう教えられているのでは、ありませんか?」
「う!?…で、でも私は、王族なのよ!?不敬でしょう!?」
「い、いえ確かに、王女に対しては不敬ではありますが、これは仕方ありません…」
「いいわ!だったら騎士達!このうつけを捕らえなさい!!この者は、王族に逆らったのですよ!!」
しかし騎士達は、一瞬ざわついたが皆、顔を見合わして迷っている。
「炎壊を捕えるなんて、無理だ…」
「見たろ!今の魔法を!俺達も一瞬で消されてしまうぞ!?」
「し、しかし王女の命令を、拒む訳には…」
王女のワガママに、騎士団も、どうして良いか迷っている。
「いい加減にしろ!シス!!炎壊を困らすんじゃない!!」
カイル王子が、システィリア王女に怒鳴った。
「し、しかしこ奴は、私の求めていた光魔法を使ったのですよ!?あの宮廷魔術師のマーリンですら使えない光魔法を!!それが使えれば、お母様だってきっと!!」
「シス!!やめないか!お前が光魔法に、憧れてるのは知っている!だが今の態度が、教えを請う者の態度か?あんな態度をとられたら、俺なら何も教えたくなくなるぞ?」
「で、でも私は王族何ですよ!?下々の者が、王族に従うのは当然ですよ!?」
「まったく…誰がお前を、この様に育てちまったんだ…すまねぇ炎壊俺から非礼を詫びよう」
「いえ、では、この件は、そう言う事で良いですね?」
「勿論だ、妹には俺からキツく言っておく。気分を害して悪かった」
そう言ってカイル王子は、ウリシュクに頭を下げた。
「お、お兄様!?下民などに、あ、頭を、お下げになるなんて…何と言う事を!!」
そんな王女の態度を見て
「はぁ…」
と、カイル王子は、ため息をついた。
王女は、酷いもんだが、このカイル王子は、人格者だな。
しかし同じ兄妹とは思えん性格の差だな…
俺がカイル王子の態度に感心していると、ウリシュクが近づいて来た。
「あなたね…どうするのよ!光魔法とか勘違いされちゃてるじゃない!」
と、小さな声だが、かなりご立腹な感じだ。
「光魔法って何?」
俺が、その聞き慣れない呼び名の魔法を
ウリシュクに聞いてみた。
「光魔法って言うのは、いにしえに女神様が使ったと言われる究極の魔法よ。闇や邪悪を祓う伝説の魔法って言われてるわ。でも本当に存在してるかは、疑わしいわね。そんな魔法があれば、アークデーモンにもきっと効くはずだし数十年色々な文献や魔導書を調べてるけど手掛かりもない魔法よ。まぁ伝説のたぐいね。信憑性に欠けるからね」
「ふーん。シルファの対魔神魔法も、似たような効果はあるよな」
「え!?前に私に教えてくれるって言ってた魔法よね!?嘘!!そ、それ光魔法なの!?」
[どうなの?シルファ?]
俺は心の中にいる、シルファに聞いてみた。
[うーん呼び名は違うけど、似た様な魔法は使えるよ]
「いや、違うみたいだな、そもそもこの世界の魔法じゃないしな、シルファの魔法は」
「え!?ど、どう言う事よ!?」
「ま、まぁよ今度シルファに会ったら聞いてみてくれよ。魔法は専門外だからな」
「…そ、そうよね、シグレは剣士だもんね…うん、今度お会いしたら詳しく聞いてみるわ」
そう言ってウリシュクは、納得してくれた。
ちなみに俺は、シルファの使用する魔法は、公式から渡された資料内なら大体把握してる、が、ウリシュクの言った光魔法かと言えば、まぁ違うと思う。
大体この世界の魔法じゃないしね。
「もう!何で王女の私が、怒られなきゃならないのよ!!」
「が、我慢して下さい、王子のおっしゃる事ですから、ここは自重して下さい!」
まだ納得のいってない王女は、テムに文句を言い続けてる。
こんな王女と、へたしたら一週間も一緒に、探索をしなきゃならないのは、何の拷問だ?
俺が王女を見て、呆れてると
「で、では先を急ぎましょう、王子に王女!では全体進軍する!!」
サイクロプスの死体も片付いたので、集団は探索を再開した。
しかし探索の序盤から、このゴタゴタ感は、先が思いやられるよな、まったく…
次回は8月11日(火曜日)に更新です!(^^)




