第20話
【位置】議会棟・公聴会/控室 (ハルトとメティス)
【状況】代理艦隊案が提示/反対派は「防衛艦は外に出すな」で結束
公聴会は、戦場より静かだった。
その静けさが、怖い。
議長が言う。
「代理艦隊配備案を提示する」
スクリーンに映るのは、新造艦ではない。
既存艦の改装。
民間船の武装化。
衛星砲台の増設。
“守るための間に合わせ”。
それで十分か。
誰もが同じ疑問を持っている。
反対派が立った。
肩書きは「防衛委員会筆頭」。
声がよく通る男だった。
「諸君。防衛艦アイギスは、我が星の“最後の盾”だ」
「盾が外に出れば、この星は守れない」
「代理艦隊? 間に合わせだ。間に合わせに、我々の家族を預けるのか」
言葉が正しい。
正しいから、拍手が起きる。
俺の胃が縮む。
“ありがとう、でも怖い”。
街の声が、議会の声になる。
俺にも発言が回った。
「ハルト。君は勝った。君の功績は認める」
反対派は言った。
「だが、君は“勝ったから”外へ行きたいのか?」
「違います」
「なら何だ」
俺は息を吸う。
「終わらせたい」
反対派は眉を動かす。
「侵略をか」
「はい」
「それは誰のためだ」
「……テラ・オリエナのためです」
「ならなおさら、残れ」
その一言が、鋭い。
「盾と矛が残れば、守れる。外へ行けば、守れない」
“守るために残れ”。
その理屈は、強い。
俺は言葉に詰まる。
『ハルト』
メティスが呼ぶ。
「何」
『あなたが詰まるのは、あなたが嘘をつけないからです』
「今それ言う?」
『……今だからです』
嘘をつかずに、言うしかない。
俺は言った。
「残っても、次が来る。次は、もっと壊す。だから、止めに行く」
反対派は静かに笑った。
「若い」
その二文字が、俺を燃やす。
でも燃えてはいけない。
ここは言葉の戦場だ。
俺は続けた。
「若いから、行くんじゃない。怖いから、行く」
ざわめき。
反対派は目を細める。
「怖いなら、なおさら残れ」
俺は首を振った。
「怖いから、終わらせたい」
言い切った瞬間、胸が少しだけ軽くなった。
公聴会が終わったあと。
控室で、メティスのホログラムが小さく揺れた。
『……あなたは、強い言葉を選びました』
「強い言葉じゃない」
俺は言う。
「俺の本音だ」
『本音は、武器にも毒にもなります』
「分かってる」
『……ですが、あなたの本音は』
メティスは一拍置いて言った。
『人を動かします』
その一言が、救いだった。
所長が入ってきた。
「反対派の顔を覚えましたか?」
「覚えました」
「彼は“悪”ではないのです。彼も守りたい故にならざるを得なかったのです」
「……分かってます」
「分かっているなら、次は“条件”を切り札にしなさい」
「切り札?」
「出航期限です。時間を味方にするのではなく、時間を“敵”にするのです」
時間を敵に。
その言い方が、冷たい。
でも、正しい。




