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その24

◇◇◇◇◇◇ その24


「湖静姫、加減はどうじゃ。」

「お館様、このままでは静はどこへも出られませぬ。」

 

養女に来て以来、諏訪湖で遊んで育った静にとってきれいな着物をまとったお屋敷生活は退屈そのものであった。


「だが、ここが一番安全じゃ。外へ出る時は静に戻るがよい。まさか二人が同一人物とは気が付かないじゃろうて。」

 晴信は楽しそうに笑った。


「お館様、深志の神社のめどがつきましてござります。」

 勘助が報告した。


「うむ、それは良かった。で、どうじゃ。」

「ははっ、民達は護国神社と呼んでおりますが、武田で面倒を見ると言ったところこちらになびいてくれました。」


「諏訪大社ではないと思うが、やぐらか何かに似せてさっそく柱を建てよ。神殿の造作も忘れるなよ。」

 造作とは晴信が飛んだ際の隠し部屋のことである。こうして晴信は深志へも拠点をくさびのように打ち込んだのである。


 晴信は飛ぶ事に自信を持ち始めていたが、自慢の軍団が迅速に移動出来なくてはその効果も半減してしまう。


「大軍を迅速に移動可能な道を早急に整備作る必要があるな。」

 晴信は勘助に語りかけた。


「はっ、しかし、道を整える事は敵にとっても攻め易い条件を与える事になるゆえ、両刃の剣でありまする。」


 この時代ではしごく当たり前の思考であった。当時どの国も国境の道は整備をわざと放置してあった。せっかく整備してもその道を使って他国から攻め入られてはなにもならないからである。


「だが、我が武田軍団は風のように移動する。」

 晴信は「風林火山」という言葉が好きであった。中国の兵法孫氏の言葉であるが、今の晴信にはもっともふさわしい言葉であるように思えた。


「これより武田は風林火山を旗印に諏訪大社の御加護を賜り天下を統一する。」

 晴信は軍議の席で重臣一同を前にして宣言した。ここに武田は天下統一に向けて前進を始めるたのである。




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