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第42話:胸騒ぎ


お久しぶりです。長々と更新停止すみませんでした(汗)


今後も、ちまちまとではありますが、投稿していく所存ですので、どうぞよろしくお願いします。


では、第42話です、どうぞ。




「……なんで……」




知っている。




「なんでだ……クレス……!」




私は、一瞬だけ見せたあの顔を、声を知っている。




……なんで……?




なんでよ……







パラディーズ……!








―――――――――――


「クレス?」

「!」



物思いに耽り呆けていたクレスは、ソラの一声で我に帰った。


「大丈夫かよ?」

「ご、ごめん……考え事しちゃって……」


セルビスの煙幕により包囲網を突破した一行は、急いで林を抜けて近くの村に逃げ込み、宿屋を見つけて隠れるように籠った。村はレビタのように大きくなく、建物も木製の田舎だったが、村は森に囲まれて非常にのどか。隠れるには絶好の場所だった。


「あの数をまともに相手することは出来ん。やつらをこのままやり過ごせればいいんじゃがの……」


セルビスはそう言うものの、敵は逃げ場をなくすほどの軍勢を揃えてきている。その人海戦術を広域捜索に当てられれば、こちらの居場所は容易く見つかってしまうだろう。


「せやけど、拡散してきて数が減ったらなんとかなる。それを一つ一つ潰して戦力を削いでいくしかあらへんのちゃう?」

「一網打尽が不可能なら、そうするしかないだろうな」


ヤマトとアルエが結論付け、とりあえずの方針が決まったようだ。




「……ひとつだけ、いいかな?」




突然クレスが切り出した。


「どうしたんだ、クレス?」

「あの騎士のイビルとは……私が戦う」


「「「!!?」」」


その提案は無謀だ、誰もがそう思った。確かにクレスの実力は大きく上がっている。だが、マスタークラスのイビルに、ましてや一度はソラが追い詰められた相手だ。


逃げる時は不意を突いたこともあって上手くいったものの、もし戦いが長引いていたらどうなっていたか……ヤマト、アルエ、セルビスの三人は、そんなクレスの提案に、駄目だ無茶だと異を唱える。




「クレス……」



しかし、ソラだけはクレスを見据え、静かに口を開いた。




「お前がやらなきゃいけねぇ理由があるんだよな……?」


「うん……」




異を唱えていた三人の声が場が静まる。





ソラはしっかりと、クレスの揺らぎない目を見つめると、


「わかった」


とただ一言だけ呟いた。


それだけで良かった。特別な何かで繋がっているかのような二人を前に、ヤマト達三人はそれ以上何も言えなかった。




その時だった。


突如遠くからの、ドウンという爆音が響いた。


五人は思考を切り替え、何事かと宿の外に出ると、爆音が大きく響いたからか村中から不安と興味が混ざった声がざわざわと上がっていた。


どうやら爆音は遠方から上がったようだが、森に阻まれて音源を確認出来ない。



「なんや、化学の実験でもしとったんかいな?」

「ここからは少し遠いみたいだ」

「お前ら、あまり長く外に顔を出すのは得策ではないわい。すぐに宿に潜んだ方がええぞ」



この時はあまり深く考えず、木々の奥に黒い煙が高々と登っているのを見ながら、宿へと戻った。あの煙の高さを見るところ、大規模な爆発でもあったのだろうかと考えながら……。




(まさか……いや、そんな……)




この時ソラの頭に過った予感は、まさしく悪夢といえるものだった。





――――――――――



夜も更けた頃、ソラは心のどこかで、何か引っかかりを感じていた。

昼間の爆発のことだ。


実験かなんかとヤマトは言っていたが、果たして本当にそうだったのか……?


ヤマトもそうだが、クレス、アルエも、何も疑っていなさそうに眠っている。だが、ソラには、あの爆発が、何か恐ろしいことの前兆ではないかと感じていた。



「……ん?」



ふと、ソラは寝ているはずの仲間が一人が欠けていることに気付いた。



「セルビス……何やってんだ?」



普段なら別段気にしないはずだが、今のソラは少し過敏になっているようだ。或いは無意識に、思考をセルビスに向けることで、自らが抱いている不安感を誤魔化したいのかもしれない。


ともあれ、セルビスの動向がなんとなく気になってしまったソラは布団を抜け出し、宿の外に出ることにした。




――――――――――




宿の外へ出てみると、昼間に起きた爆発の人だかりが嘘のように村全体が静まり、りんりん、と響く鈴虫の鳴き声と、ひゅう、と肌を撫でるような風の音だけが聞こえていた。空も雲ひとつなく澄み渡り、無数の星が光っている。


そんな村の静寂な空気を感じながら、ソラは歩き出した。






「お前も感じておるか、ソラ」







上から降り注がれた声に振り替えると、ソラが出てきた宿の屋根の上に、セルビスが腕を組んで立っていた。ただ、目線だけはソラには向けられておらず、遥か彼方をじっと見つめている。



「あの爆発……」



セルビスがふと呟いたその単語に、ソラはどきりとした。セルビスもソラと同じ、いやそれ以上に、感じているのだ。




「……あんたも、あれがただの爆発じゃないと思うのか?」

「うむ……ワシも何か、嫌な胸騒ぎがしおる……」

「なんだと思う?」

「さあの……お前は?」

「……分からない……でも、なんだか嫌な予感がする……」



二人はそれきり言葉を交わさなくなった。お互いの胸を過る嫌な予感が、二人の感じている雰囲気を重苦しくしているのだ。

夜更けで静まりかえった町の空気も、嵐の前の静けさに思える。



「明日にはここを発つ。しっかり休んでおけ」



セルビスにそう言われ、結局ソラは部屋に戻って眠りについた。拭いきれない不安を抱えながら……






「……さて……この感じは何かのう?」






そう呟いたその直後、セルビスは闇に包まれた森の中へと駆けていった。






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