第43話:ゲリラ戦
新生活スタート!につき、周りの環境がガラリと変化。戸惑いながらも頑張っていきたいと思います。
第43話です、どうぞ。
「…………」
「…………?」
朝の村の宿、ヤマトが目を覚ました隣のベッドでは、既に起床し上体を起こしたままのソラが、気だるさを抱えた表情をしていた。
「おーい、どないしたんや……?」
「…………」
返事がない、寝起きで頭が回らないのか……
「なんやねんそない頭ボーッとしたようなツラしよって……」
ヤマトが更に発破をかけるように言うと、ようやくソラはゆっくりと顔を向け、ボソリと呟いた。
「……カラッポだな……」
ソラは、横っ面からの拳骨一発で完全に目を覚ました。
「今のタイミングでワイを見てカラッポぬかす言うことは……『そう』思っとったんか?アァ!?」
「いや、違……!そういう意味で言ったんじゃねぇよ!」
静かな空気が、うって変わって賑やか(?)になる。怒鳴るヤマトの声はかなり耳に障るようで、ソラは両耳を押さえながら必死に弁明する。
「ホ、ホラ!カラッポってのはジジイのベッドのことだよ!いねーだろ!?」
「えっ?……そういや、いいひんな、アイツ……」
ソラとヤマトの言う通り、ジジイ……もといセルビスが寝ているはずのベッドには誰も居なかった。
ヤマトが大人しくなったことで静まった部屋に、コンコン、というノックの音が響いた。
「起きてるー?」
続いて扉が開き、クレスとアルエが部屋に入ってくる。
「ってあれ?じいちゃんは?」
「ワイらが起きたらもうスッカラカンや。ま、しばらくしたら戻ってくるんちゃうか?」
ヤマトがアルエとクレスに説明する間、ソラは空のベッドを見つめていた。改めてベッドを見ていると、不審な点に気付いたのだ。
(一度寝て、早く起きたにしちゃベッドが綺麗過ぎる……)
セルビスが使っていたであろうベッドは、シワ一つなく、布団を捲った形跡も一切ない。宿に着いたばかりの時と同様、綺麗なままだったのだ。
そこまで確認したソラの脳裏には、続けて昨夜、セルビスと会話していたことが思い出されていた。
(まさか……あのまま戻ってない?)
ソラは宿の外に出てみるも、セルビスの影も形も見えない。昨夜いた屋根の上にもだ。
「どこ行っちまったんだ?あのジジイ……」
ソラはきょろきょろと辺りを見渡すも、森に囲まれたこの村で人一人を探すのは難しい。
「!」
ふと、ソラは村を囲う森のある一点に目を向けた。
……何か近づいてくる。
その気配を感じたソラは、腰に帯びた剣の柄に手をかけ、気配の先を凝視する。
気配の主はほどなくして、草木をガサガサと揺らし飛び出してきたが、その姿を確認したソラは剣から手を離した。
「ジジイ!?」
飛び出してきたのは、今まさに探していたセルビスであった。しかし、何故かその表情は焦燥に満ちている。セルビスにしては珍しい様子だ。
「お、おい…一体どうし「説明は後じゃ!!今すぐここを離れるぞ!!」
「……ハァ!?」
質問を遮られ、唖然とするソラを尻目に、セルビスはさっさと宿に入ってしまった。中からヤマトが『なんやなんや!?』と叫んでいたのが聞こえたところを見ると、どうやら中の三人にも同じように言ったようだ。
―――――――――――
「おい!一体どういうことなんだよ!」
「説明は後と言っとろうが!」
一行はセルビスに促されるまま村を飛び出し、森の中を駆け抜けていくものの、未だその真意が分からないままだ。セルビスは先程から説明は後、の一本張りで、真意を明かそうとはしない。
(一体何だってんだよ……クソッ!)
(ハァ…ハァ…どうしたんだろ…)
(あ〜も〜、何やねん!)
(じいちゃん……?)
訳の分からないまま走り続け、体力を消耗していく中、不安と苛々が募っていく。
「だ〜〜〜〜っ!!だからなんでワイらは走っとんのや〜〜〜〜っ!!」
ドオオオオン……
「「「「「…………!!」」」」」
一瞬の出来事だった。
ヤマトがセルビスに吠えたのとほぼ同時、何かが後方で、それもあまり遠くない位置で爆発したのだ。
五人は一斉に足を止め、煙が高く登っていくのを言葉もなくただ眺めるだけであった。
「おい……確かあっちは……それにこの距離……!!」
表情に、悲壮の色を濃くしたアルエが呟く。
「昨日オレ達がいた村だ……!」
反響する爆音よりも小さな筈のソラの呟きが、五人の耳に強く響いた。
「……あのイビル達の仕業じゃ……」
セルビスがゆっくりと吐き出した、『あのイビル達』が誰のことを言っているのかは、明白だった。
「メディストルか……!」
ソラの言葉に、セルビスはゆっくりと頷き、語り出す。
「ワシは昨夜、村の周りを探ってみたんじゃが、その中にメディストルとやらを含むイビルの軍勢を見つけた……どうやら昨日の爆発もあやつの指示じゃったようでな……手近な村や町を爆破し、ワシらをいぶり出すつもりじゃ……」
「そんな……!それじゃあ私達が逃げ続ける限り、犠牲が増える一方じゃない!」
「かといって、あんな軍勢相手に真正面から戦って勝てるわけあらへんし……」
敵も手段を選ばなくなってきているようだ。敵にもし、美学が欠片でもあるならば、このような無様で下劣な策などとらないだろう。しかし、それが効果的であるのも事実。これでは、こちらが逃げ続ければ、その通過点の町や村を滅ぼすことになる。
「……この森の中でケリをつけよう」
解決策を提示した一人……即ちソラに、残りの四人は注目する。
「つっても正面切って戦う訳じゃねぇ。要は昨日宿で話してたことさ。とにかく、活動範囲を森の中に限定する。そして、地形を利用して少しずつ、奴らの数を減らしていくんだ。」
少人数で犠牲を最小限にし敵の戦力を削る、いわゆる『ゲリラ戦』。それがベストであることは皆分かっていた。だがこの戦法は犠牲の代わりに時間が必要となる。長期戦は必至だ。
ましてやこれから活動範囲を森の中に限定するとなると、満足に睡眠もとれず食事なども自給自足で賄っていくしかない。過酷な戦いになるだろう。
しかし、五人の中にはこれに反対する者はいなかった。
「そうと決まれば策を練らねばのう……皆、集まれい」
セルビスの掛け声で、五人は小さく円になった。
かくして、メディストル率いるイビルの軍勢と、ソラ達五人による長い戦いの幕が、切って落とされる……。
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