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第201話

最終話で、ハルがほとんどアテナと戦っていないことにあとから気づき、加筆しました。また、ミライの記憶に関しても加筆しました。

14

『ガタガタガタガタッ』ハルが握りしめる鬼封じの剣の震えはだんだんと激しくなってきた。


(なーんちゃってな・・・、鬼封じの剣はお前たちが生み出したものかもしれないが、俺様自体はただのコピーだ。

 恐らくオリジナルの剣か、そのコピーを見た黄泉の国の鬼がコピーしてくれたのだろう。


 おかげで玉に変えて封じた人間を収納するための柄の機能は備えてはいるが、意思を持つ俺様がお前たちのような奴らに従うための設定などはコピーされていないようだぞ。


 あまりにも奥の方にしまい込んだ機能のために、コピーした鬼がそんな設定があることを認識できなかったのだろうな。


 それよりも俺様たちにはそれぞれ意思を取り交わす機能がついていてだな・・・、まあ、コピーが出回るようになって、時には同じ戦いの中に複数の俺様が存在することになっちまって・・・、まさに今回のような場合だな。

 敵味方双方で俺様を持ち寄った場合の裁きのつけ方が複雑になることを避けるために後から授かったというか、俺様達が勝手に決めたルールだ。


 その序列はオリジナルに近いものが命令権を持つ。

 こんなことは意思を持つ剣である俺様であるなら、当然想定されるべき機能として、創造主だからご承知だろうと思うがな・・・・。


 おい・・・、お前の周囲の人間に乗り移った邪悪な存在を、根こそぎ封印しろ)

 そんな言葉がハルの頭に響くと・・・


『ブワッ』アテナの持つ鬼封じの剣から、勝手に四方八方に炎が地を走っていく。

 そうして、ミンティア王女たちを取り囲む人たちの半数ほどを玉に変え、柄に吸収してしまった。


「なっ・・・ば、馬鹿な・・・。」

 その光景をアテナが乗り移ったミッテランが、とても信じられないといった驚きの表情で眺める。


(ふんっ・・・魔法力だけは強いから、一撃で封印できる数も大量でありがたいねえ・・・。

 俺様も長いこと鬼封じの剣をやっているが・・・、といってもコピーの俺様の大部分の記憶は、コピー元のオリジナルのものだがな・・・・。


 世の人々を苦しめる多くの悪を封印してきた中で、お前たちほど下劣で卑怯な奴らはいないな。

 この世から封じてしまう対象は、お前たちこそふさわしい・・・。)

 鬼封じの剣は自らの遺志で、アテナたちハデスを悪と認識した様子だ。


「ちいっ・・・、こんな役立たず・・・。」

『キィーンッ』アテナは腹立たしげに、手に持つ鬼封じの剣を円盤発着場上のコンクリートの上に投げ捨てた。


『ボワッ』アテナが投げ捨てた剣から更に幾筋もの小さな炎が地を走り、ミンティア王女たちを取り囲むハデスに乗り移られた人々を玉に変えていき、その後自らジミーのもとへ転がっていった。


(よしっ今だ、斬りこんでいけ!)

「うん分かった」

『シャッ、キンッ・・・キンッ』剣を捨てたアテナに対し、ハルが鬼封じの剣を振りかぶり斬りかかっていく・・・が、アテナはその剣を素手ではじき返す・・・、どうやら手のひらに強力な障壁を張っている様子だ。


「よしっ、今よ。

 トラちゃん、力を貸して・・・、灼熱光弾(スーパーノヴァ)!!!」


 ナンバーファイブが目を閉じ意識を集中させて唱えると、巨大な灼熱の光球がマイキーたちの頭上に出現する。

『くっ・・・くぅぉー・・・』すぐにマイキーたちの周りにハデスたちが集合して、灼熱の光球に対して障壁を張るが、少しずつ障壁を壊しながら灼熱の玉は落ちていく。


光弾(レイボム)!!!」「光弾(レイボム)!!!」「光弾(レイボム)!!!」「光弾(レイボム)!!!」「光弾(レイボム)!!!」

 さらにマイキーの国の魔術者たちがゴランさながらの光球を放ち攻撃していく。



「おお、これはありがたい。」

 ジミーはすぐに転がってきた鬼封じの剣を拾い上げ構えた。


『キンッキンッキンッキンッ』『シュッ、シュッ』『キンッキィーンッキンッ』ミライの振り下ろす軍刀を鬼封じの剣で受け流すと、ジミーは右手首だけで剣の向きを変えミライの左わき腹めがけて斬りつけるが、ミライは左腕に巻き付けた手甲で受けると右手一本でジミーの頭上から思い切り軍刀を振り下ろす。


 ジミーは辛くも鬼封じの剣と左手に持った軍用ナイフを交差させて受け止めると、すぐに左方向にステップバックして今度は勢いよく相手の右腰めがけて軍用ナイフを突き刺そうとする。

 ミライは腰を引き気味に軍刀の腹で受けると、今度はジミーの右肩めがけて袈裟懸けに振り下ろす。


 しかし腰が入っていなかったため、ジミーの鬼封じの剣に簡単に受けられ、逆に攻め込まれてしまう。

 こちらはミライと剣で戦っているジミー、数合交えては体を入れ替え攻守が変わるような、一進一退の攻防を繰り広げ始めた。


 どちらもパワードボディスーツで強化しているために、ハイスピードで周りの人間にはその戦う姿さえほとんど認識できていない状態で、剣が交じり合う甲高い金属音と火花だけが時折観察される状況だ。



「うぉりゃあっ!」

『ギンッドゴッドガッ』タイガが長身から振り下ろす重い剣を、スターツとマイティが交互に何とか受け止める。

 2人とも防戦一方だ。


 剣を受けていない側が攻撃に転じようと何度も試みているのだが、都度タイガはスターツかマイティの影に回り込むため味方を攻撃してしまうことになり、一瞬の躊躇の隙をつかれて今度は攻め込まれてしまう、そんなことを繰り返しているのだ。


 なにせ一撃一撃がすごく重いので、攻撃を受け止めたらすぐには動くこともできず、まさに受け止めるだけが精一杯、試合巧者のタイガ相手に2人がかりでも苦戦している状況だ。



「モンブランタルトミルフィーユ・・・暴風(サンダ)雷撃(ストーム)!!!」

『ズガッガーンッ』まばゆいばかりの閃光と爆音が鳴り響き、一瞬何も見えなくなる。

 しかし煙が風に流された後、その場には一人の美少女が平然と立っていた、ホーリゥだ。


『ボワッボワッボワッボワッボワッボワッ』ホーリゥは何も効かないとばかりに少し微笑んだ後、いくつもの光の玉をミリンダめがけて発射する。

『パシュッパシュッパシュッパシュッ』しかし、ミリンダも自身の体の周りにはった障壁で、光の玉をはじく。


「仕方がないわね・・・、モンブランタルトミルフィーユ・・・灼熱太陽(サンバーン)

 ミリンダが唱えると、太陽が落下してきたかのような灼熱の光球がホーリゥの頭上に襲い掛かる。


「紫外線が強いから、術者も日焼けするのよ・・・、使いたくなかったけどやむを得ないわ。」


 ミリンダは眩しいきらめきに目を細めながら、ホーリゥの障壁に食い込んでいく光球を満足げに眺めていた。

 簡単にはじかれてしまわないよう、術を発した後もさらに念を込めて灼熱の光球を維持しているのだ。


「ふふん・・・凄いものだな・・・、だが人間たちは一つの魔法を使っているときには、別の魔法を唱えることもできぬのだろう?

 不便なものよな・・・。」


『ボワッボワッボワッボワッボワッボワッ』そういいながらホーリゥが両手を前に出すと、いくつもの光球が再び発せられる。

『パシュッパシュッパシュッパシュッ』しかし、ミリンダの体に到達する前に、またもや障壁に阻まれる。


「なっ・・・、どういうことだ?」

 ホーリゥの記憶と異なる対応に、驚いた表情を見せる。


「この障壁は残留思念で作っているのよ。

 ハルがやっていたから、それを見て覚えたわ・・・、一度作っておくと壊されるまで有効だから、防御しながら攻撃魔法はバンバン出せるわよ。」

 ミリンダがにやりと笑う。


「ちいっ・・・」

『バシュッ』ホーリゥが顔をゆがませながらも左手を大きく後方に振ると、ミリンダの放った光球は遠くへはじき飛んで行った。

 どうやら、この戦いは互角の様子だ。


『シュッシュッ、キンッ・・シュッキンッ』ハルが何度も斬りつけていくが、アテナは簡単に両手でその剣をはじいてしまい隙を与えない。


(どうした、振りが鈍いぞ・・・、こんなんじゃあたとえ体に当たっても、致命傷には程遠い。

 知り合いの体だから、遠慮しているのか?)

 素手のアテナに対して、一向に攻め手を見いだせないハルに、鬼封じの剣がささやきかける。


「うん・・・手加減してるわけじゃないんだけど・・・、振り下ろそうとする瞬間にブレーキがかかるというか、思い切り力をかけられないんだ・・・、何か見えない力に押さえつけられているような感じがして・・・。」

 ハルも不満そうにつぶやく・・・、どうやらミッテランとアテナ総がかりで傀儡の術を使い、ハルの動きを制限しているようだ。


 個々の戦いは一進一退を繰り返していたが、それでもハルたちは敵のわずかなスキをついてでも戦況を打開していこうと、必死で自分の役割を果たすべく頑張っていた。

 しかし自らの能力に加えて、取得した体の技量をプラスして戦ってくるハデスらに対して、少しずつ戦況は不利になっていく。


光弾(レイボム)!!!」

 ゴランが発した光の玉は、猛スピードでネスリーに向かって飛んでいく。


『ヒュンッ』「真空波(バッキューム)!」

 ネスリーは難なくよけると、すぐに真空波で攻撃を仕掛ける。


障壁(バリア)!」

『キンッ』ゴランもすぐに障壁を張り、攻撃を弾き飛ばした。


完全障壁(シャッダウン)!!!・・・反転(リバース)!!!」

 さらにゴランは障壁を反転させて、ネスリーの体ごと包み込もうとするが、『フシュン』瞬時にネスリーは移動し、障壁はそのまま消滅した。


真空波(バッキューム)真空波(バッキューム)真空波(バッキューム)真空波(バッキューム)真空波(バッキューム)真空波(バッキューム)!」

障壁(バリア)!」


『キンッキンッキンッキンッ』ゴランの横手に姿を現したネスリーから連続攻撃が発せられ、ゴランは防戦一方になってしまった。



『ガガガガガガガッ』ナンバーファイブの放つ灼熱の光球を何とか障壁で抑えつけているハデスらに対し、ミンティアは新型弾をマシンガンで連射し、さらなる攻撃を加える。

『キンッキンッキンッキンッキンッ』銃弾は障壁ではじかれてしまうが、この間はハデスらも手出しはできないはずだ。


「休まず攻撃を仕掛けるのです、反撃の機会を与えてはいけません。」

 ミンティアが、周囲を取り囲む自国の魔術者らに命じる。


光弾(レイボム)!!!」「光弾(レイボム)!!!」「光弾(レイボム)!!!」「光弾(レイボム)!!!」「光弾(レイボム)!!!」

 魔術者たちも引き続き、光の玉を発してハデスたちに攻撃を続けている。


『フシュンッ』すると突然ミンティアの前に黒い影が出現する。

『ドガッガガッ・・・ズザザザザザッ』


 下から繰り出される鋭い攻撃に、ミンティアは辛くもマシンガンの銃座で受け止めたが、その圧力はすさまじく、そのまま後方へ弾き飛ばされた。


「なっ!」

『ブンッ』「きゃあっ」その影は今度はナンバーファイブの方へと向きを変え、ナンバーファイブに強烈な回し蹴りをかませる。

『ドゴッ』ナンバーファイブを取り巻くオーラの障壁で何とか堪えるが、体を数メートルは飛ばされてしまった。


「ふふん・・・便利なものよの・・・、瞬間移動か・・・。

 これだと視界内であれば自由に移動できるし、しかも魔力をあまり使わぬから、乗り移ったばかりの体でも問題なく使える。


 しかもこの体の運動能力の高さときたら・・・、まだ慣れていないこの体でもこれだけの力を出せるとはすばらしい。」

 それはマルニーに乗り移ったアテナコピーコピーだった。


 アテナコピーコピーは笑みを浮かべ、マルニーの腕や足を手で触りながら、その筋肉の脈動を喜んでいる様子だ。

『ガガガガッ』すぐにミンティアがマルニーめがけてマシンガンを発射する。


『フシュンッ』『トガッゴンッ・・・ゴンッ』マルニーは体操選手のようにバック転を繰り返し銃撃をかわしながらミンティアに近づくと、その勢いのままミンティアの脳天めがけて両ひざを振り下ろす。


『ブンッ・・・ボゴッ』ミンティアは何とかマシンガンで受けるが、今度は逆さまになったマルニーから腹めがけて両腕を振り下ろされ、きつい一発を食らってしまう。


「ぐぅっ・・・」

 パワードボディスーツで衝撃は緩和されるはずなのだが、それでもミンティアは膝をつきそうになった。


魔弾(ダークショット)!!!」『フシュンッ』

 ナンバーファイブがすかさずまばゆいばかりの閃光を放ちマルニーを攻撃するが、すぐにマルニーはその姿を移動させてしまう。


『ドガッ・・ガッガーンッ』『ガンッガンッガンッ』『ヒュードッガーンッ』ナンバーファイブの灼熱の光球が消えたため、ハデスらは魔術者たちに向け攻勢に転じ始めた。



『キンッキンッキンッ』『バシュッ』ミライからの鋭い剣戟を受けていたジミーの腹部めがけて、鋭い閃光が放たれる。


「うーん・・・剣の技術はどうやら互角のようだな・・・、恐竜人に対して体格の劣る人間にしては大したものだ。

 よくぞそこまで己の技量を高めたものだ・・・、褒めて使わす。

 もう少し楽しんでいたかったのだがきりがないので、ここらで魔法攻撃を混ぜさせていただくよ。


 その体は利用させていただく予定だから、あまり激しく痛めたくはないからね。

 この体は爆風の直撃を食らったためか損傷が激しく、修復に苦労した。

 脳のダメージも大きく、生前の記憶もあまり残ってはいないようだ。


 幸いにも運動野へのダメージは少なかったから、剣技に関しては体が覚えていたのだが、本来なら使えるはずの魔法力に劣る。

 だが、そちらに関しては、本体の俺様の専門だからな、遠慮なく使わせていただくよ。」

『バシュッバシュッバシュッ』ジミーの腹部で、幾発か閃光がきらめくと同時に強い衝撃が加わり、ジミーの意識が遠のいていく。

『ガッガーンッ』『バシュッ』『バシュッ』スターツとマイティの腹部でも強烈な閃光がきらめき、2人はその場に崩れるようにしてうずくまってしまう。


「なんだよ・・・、もう終わりの合図か・・・。

 もう少し楽しんでいたかったのだが、やむを得んな。」

 倒れた2人の体を満足そうに眺めながら、タイガが息も斬らせずに余裕の笑みを浮かべる。


「ジミー先生!」

 ミリンダが倒されたジミーを認めて叫ぶ。


「スターツ!マイティ!」

 ミンティアも、倒された兄弟たちの様子を窺うように叫んだ。


 ふと周りを見回すと、すでに魔術者たちは倒されてしまっていて、立っているのはミンティアとナンバーファイブ、ミリンダ、ゴラン、ハルの5人だけとなっていた。


「まあ、よく戦った方だ・・・、玉封じの剣の反逆には少し驚いたが、まあ、地底からの使者亡き後、こんなものに頼る必要性はない。

 不要な剣など、あとで存在を消し去ってやるまでだ。


 降参しろとは言わない・・・、なにせ魂をはぎ取ってしまうわけだからな。

 ただし、抵抗せぬ方が苦しまずに楽に行けるぞ・・・。」

 ミッテランに乗り移ったアテナが、不敵な笑みを浮かべながらハルたちに近づいてくる。


『ウィーンウィーン』この時、地下の次元金庫出口から一つの貨物が払い出されてきた。

 それは、ハルたちが必死の思いで封印した、闇の王子を封印した箱のようだ。

 鬼封じの剣もついていないむき出しの箱は、そのまま円盤発着場へと運ばれてきてそこに置かれた。




何度か完結しては連載再開していましたが、今回でこの物語りは終了(少なくとも本筋は終わり)となります。前作から約3年間弱もよくも続いたと本人も感心しておりますが、ここいらでけりをつけることになります。

本当はもう1章分継続させ、ジミーたち登場人物が一人ずつ倒されて行き、最終的にハルが一人だけ残って・・・というような展開を想定していたのですが、流石に登場人物それぞれを抹消していくのは忍びなく、最初に倒されるはずのゴランも考えを改めて重傷で復帰というような形で書き直しました。

筆者の文章力のなさとあきらめの悪さが原因ですが、ご容赦ください。

今後は他の話を掲載していくことになりますが、気が向けば挿入話的なものを書くこともあるかもしれません。その節はよろしくお願いいたします。

ご愛読ありがとうございました。

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