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前世を思い出した我儘王女は心を入れ替える。人は見た目だけではありませんわよ(おまいう)  作者: 多賀はるみ


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 食事を終えて、お兄様は剣の稽古へ、私はお兄様には内緒で宰相のところへ行くことに。


 宰相の仕事部屋へ着く前に、廊下でお目当ての人の後ろ姿を見つけて、声を掛ける。


「宰相、ちょっとお待ちになって」


 宰相は歩みを止めて振り向いた。


「これは、ミリアリア様おはようございます。私は仕事があるので失礼いたします」


 では、と言ってさっさと行こうとする宰相。

 いや、なんでよ。待ってって、言ってるじゃん。


「お仕事よりも、大切なお話があるの。そうね、あなたのお部屋でお話しましょう」


 分かりやすく、嫌そうな顔をする宰相。

 貴族ってさ、なるべく顔に出さないようにするもんじゃないの?

 ん? でも、この世界の人たちって意外とみんな顔に出ている気がすると思い出す。

 それに、貴族は感情を顔に出すものではないなんて言われたことがないかも?

 あれ〜? もしかして、前世でラノベを読んだときにそういう設定が多かったから、そうだと思い込んでただけなのかしら。

 などと、思考を他に飛ばしていたのを宰相に話しかけられて我に返る。


「大切な話ですか?」


「ええ、お父様とお母様とお兄様のことについて」


「……わかりました。部屋でお話をお聞きいたします」


 そう言うと、長い脚でスタスタと自分の部屋に向かってしまった。

 

 ねぇー、私、仮にもこの国の王女なんだけど! 子供の歩幅を考えなさいよ! そんな気遣いができないと、娘に嫌われるわよ!







 なんとか急ぎ足で宰相の仕事部屋に着いて、中へ入る。当たり前だけど、ザ・仕事部屋って感じ。本棚が沢山あって、ギュウギュウに本が詰まってる。その脇に、申し訳程度に応接セットがあった。そこへ座るように促され、宰相と向かい合うように座る。

 ライザが、お茶を部屋に持ってきてもらうように伝えていたのか、私と宰相が座るのを確認すると目の前にお茶を出してくれた。


「早速ですが、宰相はお兄様の噂を知っているのよね?」


 ピクリと眉が動いたのが見て取れた。


「噂とは?」


「お兄様が本当にお父様の子なのかっていう」


 また、ピクピクと眉が動いた。


「そのような噂があるのは存じ上げておりますが、あくまで噂です」


 ピシャリと言い切られる。


「では、なぜそのような噂をそのままにしているの? だから、お兄様はみんなから侮られているのではないの?」


 宰相が私を見る目がとても冷たい。お前、どの口で言ってるの? って、思ってるでしょ。そんなの知ってるから。私の傷をえぐらないでよ。


「……ミリアリア様は、一体何がしたいのですか」


「私……私、今までとても酷いことをお兄様にしてきたってやっと気付いたの。お兄様には謝ったけど、でも、今のままだと周りからお兄様がずっと侮られるんじゃないかと思って。それに、家族みんなで仲良くいたいの。だから、今の状況を変えたいの」


 宰相は、本当に私が心を入れ替えたのか怪しく思っているのだろうけど、正真正銘、私の心はお兄様の地位向上のためだけを思ってる。


「今までの私を知っているから、半信半疑でしょうが、どうかお兄様の為に協力してください」


 ペコリと頭を下げ、ちらと、宰相の様子を窺い見る。

 宰相は何かを考えているように、私をじっと見ていた。しばらく、何も言わない状態が続いて、やっぱり信じてもらえないのかしら、と思っていたら宰相は慎重に話し始めた。


「噂をそのままにしているのは、改めて国王の子だと伝えることで余計に不審に思われないようにとの考えがあってのことです」


 さっきまでピリッとした空気だったけど、今なら色々話が聞けそう。

 聞きづらいことだけれど、聞いてみないと始まらない。


「ちなみに、本当にお父様の子なのよね……?」


 そんな質問をした私を、宰相は不機嫌そうな顔で、でも自信がなさそうに言った。


「おそらくは……」


「おそらく?」


「確実に王の子である証明をすることは不可能ということです。アガルト様は、あまりにも両親であるお二人に似ておりませんから、王もほんの少し疑う気持ちがあるのだと思います……が、王妃様を信じたいという気持ちがあるのでしょう」


 うーん、なるほど。確かに、こちらにはDNA鑑定なんてないものね。


「そもそも、お父様とお母様ってどういう経緯でご結婚されたの? お母様って、ユジーノ王国のご出身なんでしょ?」


「ええ、王妃のアメリア様はユジーノ王国の第五王女でいらっしゃいました。まだ我が王、サイフォルト様が王太子であった頃、少しの期間ユジーノ王国に留学していた時期があります。その時にアメリア様と知り合い、猛烈なアプローチの末にご結婚に至ったと聞いております」


「え、恋愛結婚って事? それだけで、お母様は大国からわざわざこんな国へ来たの?」


「こほん。ユジーノ王国と、我が国は友好関係にあります。ええ、恋愛結婚ということになると思いますよ」


 いがーい。今はあんなに距離を取ってる感じだから、何か思惑があっての政略結婚だと思ってた。あれ? でも、貴族とか王族とかって、私の前世のイメージだと政略結婚ばかりだと思ってたけど違うのかしら?


「お父様とお母様って、その時、婚約者の方はいなかったの?」


「我が国は、何十年か前の王太子が当時の婚約者を冤罪の末、婚約破棄したという事件が起こってしまったために、それ以来貴族や王族の婚約は学校を卒業してからという決まりになっております。また、アメリア様にいたっては、末子だったために政略ではなく好きな相手に嫁ぎなさいと言われていたみたいですよ。まぁ、そういう経緯があるので私は王妃様のことを疑ってなどおりません」


 えぇー。そんな事件があったんだ。

 じゃぁ、ほんとにお父様達って恋愛結婚だったのね。なのに、今ではあんな仮面夫婦のようになってしまって……

 今でも、お互いにお気持ちはあるのかしら?


「お父様達って、お互いにまだ好き合っているのかしら……」


 なんだか、今のお父様達を思うと、悲しい気持ちになってしまい、覇気のない声が出てしまった。


「王妃様はどうか分かりかねますが、王は今でも毎年王妃様の誕生日にはたくさんのバラの花束を用意して、他にもプレゼントは何がいいか悩んでいる姿は見ますよ」


 あら。お父様はまだまだお母様のことが好きなのね! それなのに、疑いたくないけどお兄様の容姿がお二人に似ていないことと、噂があってギクシャクしてしまっているってことかしら。


 それなら、お兄様が正真正銘、お二人の子だとわかれば一件落着かも!

 でも、それを証明するのが難しいのよね……

 何か、ないかしら。宝物庫へ行けば、何か少しでも血縁関係の手がかりをつかめる魔法具とかあるんじゃない?


「ありがとう、宰相。私、調べてみるわ!」


 淑女の行いではないけれど、紅茶を一気飲みし、立ち上がる。

 ライザを連れて、次は宝物庫よ!





 私が一気に紅茶を飲み干し、立ち上がってすぐ扉の方へ向かったら、宰相に止められた。


「どこへ行く気ですか」


「宝物庫へ行くのよ。何か親子関係を証明できるような魔法具がもしかしたらあるかもしれないでしょ」


 私はナイスアイディアだと思ったのに、宰相は微妙な顔。


「宝物庫ですか。果たしてそのような魔法具があるかどうか……それに、宝物庫は事前に許可がなければ入れませんよ」


「へ? そうなの?」


 そ、そんなぁー。お父様達が明日には帰って来るから、それまでに何かないかと思ったのに。

 私があまりにもがっかりしていたからか宰相は「少々お待ちを」と言って、部屋を出ていってしまった。


 ライザと二人、宰相の部屋に残されて、さてどうしたものかしらと顔を見合わせる。

 紅茶はさっき一気飲みしてしまったし、とティーカップを見やればライザがすかさずお茶のおかわりを入れてくれた。

 暫く待つこと数分。なんとなく部屋の本棚を見ていると、宰相が戻ってきた。


「宝物庫への入室許可を取ってまいりました」


「え! 私が入ってもいいの?」


「ええ、ですが決まりごとを守っていただきたい。部屋の中の魔法具を傷つけないことと勝手に持ち出さないことが条件です」


「宰相! ありがとう」


 さすが、仕事ができる男。

 早速、宝物庫へ行くことに。

 部屋を出る際「良い物が見つかるといいですね」と声をかけられた。

 宰相って、実は優しいのね。







 宝物庫へ到着すると、一人の男が扉の前で待っていた。

 やたらとハンカチで額の汗を拭いている。


「わ、私は宝物庫の管理を任されておりますキースとも、申します。宝物庫の中をミリアリア様にご案内するよう、宰相様から言付かっております。はい」


「そう、キースというのね。よろしく頼むわ」


「は、はい」


 汗ダラダラなところを見ると、緊張してるのかしら。


「き、危険な魔法具などもござ、いますので、あの、その、無闇に触らないでくださいますよう、お願いいたします」


 チラチラとこちらを伺いながら、言いづらそうに言われた。

 そんなに怖がらなくてもいいのに。


「分かったわ。気をつけます」


 では、と扉を開けて宝物庫の中へ入る。


 うーん、なんというかちょっと暗いわね。あまり見えないじゃない。言ったつもりはなかったけど、口に出していたみたい。

 キースはビクッと肩を跳ねさせて説明をしてくれた。


「その、光の影響で劣化してしまうものもございますので、暗いのにはご容赦ください。足元にはお気をつけて」


「あら、そんな理由があったのね。それなら仕方ないわね」


 部屋の中はほんのり手元のものが見えるくらいの暗さだけれど、目が慣れてきたらそれなりに何があるのかは何となく分かるくらいにはなった。


 キースにそれぞれ見かける魔法具の性能を聞いてみるけど、なかなかこれだというようなものは見つからない。

 直接、血縁関係を証明できるようなものはないかとも聞いてみたけど、そのようなものは聞いたことも見たこともないと言われてしまった。

 やっぱり、無理なのかしら……そう思っているとふと、一番端の布が被せてある何かを見つけた。


「これは何?」


「それは絵画だと聞いております」


「絵画? 何の?」


「さぁ、特に何の変哲もないただの絵画とだけしか聞いておりません。何が描かれているかは分かりませんが、代々大切に保管するようにと管理責任者からも言われております」


「見ても大丈夫?」


「えぇ、魔法具でもないし、危険はありませんから」


 ずっと静かに私の側に来てくれていたライザに目配せをして、一緒に布を取り外す。


「これって!!」




 

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