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パーティーが終わり、エイガ公爵家の皆さんだけ今後のことを話すために残ってもらった。
三人とも心此処にあらずといった感じで、案内されるがまま応接室へ通される。
私は、終始笑顔。お父様もこれで一年半前のやらかしを私に許してもらえると嬉しそうだ。
さあ、さあ、婚約の話を詳しく進めようじゃないかとなった時に公爵家の三人はハッと覚醒されたみたい。
「この度はこのようなお話しをいただけて大変嬉しく思います。しかしやはり私達には光栄過ぎることで、何年も前の事をいつまでも恩に着せ、王族との縁を結ぼうなどとそんな恥知らずなことを息子も我が家としても望んではおりません。どうか、このお話はなかったことに」
なんて、公爵のエイリク様が話し始める。
嘘でしょ! まさか、ここで邪魔が入るなんて。せっかく言質をとって、お父様の許可も出てるのよ。なかったことになんてさせないんだから!
「お前は脳筋のくせに相変わらず頭が固いな。俺もミリーも婚約を良しとしているんだ、それでいいだろう」
お父様はまさかの婚約辞退宣言に慌てたのか、珍しく一人称が俺になっているし、言葉も少し乱暴だわ。エイリク様とは親友でもあるし、気安さもあるんだろうけど。
「だから、言ってるだろ。俺もエドも恩着せがましい事はしたくないんだ。周りの連中からも何を言われるか」
「確かにミリーを守ってくれたことはありがたいと思っているが、王族として守られることは当然だ。それをいつまでも引きずるわけないだろう。今回の話はエドワルドくんにならミリーを任せられると思っているし、ミリーも結婚を望んでいるから婚約をまとめようとしているんだ。それともなんだ、お前は私に王としての宣言を撤回させようとしているのか」
「そもそも私達と話しもしないでお前が勝手に宣言したのが悪いんだろうが」
二人ともヒートアップしてきて、公爵夫人なんか可哀想に、ハラハラと心配そうにしている。こほんと私が咳払いすると二人は大人気なくなっていたのを恥じたのか、深呼吸を一つして大人しくなった。
「あー、確かに勝手に婚約を宣言したことは悪かった。エドワルドくんの話も聞かずに。あの場では断れる状況ではなかったな。もし君に他に想い人がいたり、単純に婚約を辞退したいというのであれば聞こう。それこそ君には借りがあるから、今回の話しを辞退しても不敬には問わない。改めて聞こう。君はミリアリアとの婚約をどう思っている」
お、お、お父様ー? そんな、婚約の辞退を促すようなこと言わないでー。って気持ちと、あ、た、確かに。エドワルド様にも、想っている方がいるかもしれないということを全然考えてなかった。お父様は婚約破棄されたエドワルド様のことを慮ってくれたのね。
分かってる、分かってるけどーーー。
「私に想い人などおりません。ミリアリア様は容姿も心根もとても美しいお方で憧れている気持ちはございます。しかし私のような者ではなく、真に愛し愛される方と結婚し幸せになっていただきたいと思っております。ですから、この度の婚約のお話はありがたいのですが辞退させていただきたいです。もちろん、王家の皆様の体裁もあるでしょうから、一度婚約を結び、折を見て婚約を解消するという形で私は構いません」
容姿も心根も美しいだってー。しかも憧れてるって! キャー。そんな風に思ってくれてたなんて思いもしなかったから、頭の中では小躍りしてる自分がいる。
「それでは君は二度も婚約を破棄された男というレッテルを貼られてしまう」
「構いません」
私が構います! エドワルド様に、『二回も婚約破棄をされた男だからやっぱり見た目以外にも何かあるのよ』なんて噂された日には私、泣き崩れる。
「エドワルド様は……わ、私のことがお嫌いですか?」
「嫌いだなんて! あ、いえ、私がミリアリア様を嫌うことなどありえません」
良かった、さっき憧れてるって言ってくれてはいたけど、そんなに婚約を拒否するなら、憧れと好きか嫌いかは違うのかと思っちゃった。少なくとも嫌いだから結婚したくないってことではないのよね。なら、もうここはゴリゴリ押していくしかない。
「では、約束を反故にしたいほど、私がエイガ公爵家に嫁ぐのがそんなにもお嫌なのですね……」
よよよよ、公爵家の皆さんに拒否されて私悲しいです、アピールで泣き真似をしてみる。
慌て始める公爵家の皆さん。
「そんなことはありません。ミリアリア様に我が家に嫁いできていただけるならどんなに嬉しいか!」
エイリク様が即座に否定する。待ってました!
「では、なにも問題はありませんね。私はエドワルド様のことが好きで結婚したい。エドワルド様には想い人はおられませんし、私のことも嫌いではない。エイガ公爵家の皆さんは私が嫁ぐことを歓迎してくれる、と。」
「え、あ、いや」
「それでは、こちらにサインをお願いいたします」
あら、宰相。あなたもこの場にいたなんて、気づかなかったわ。宰相が持ってきたのは、婚約関係を結ぶことが書かれた契約書。
「周りの方々から色々言われるかもしれませんから、先に婚約を結んでしまうのが一番かと。ですので、詳しい条件などは契約書には記載しておりません。のちのち決めていただいて追記していただくのが良いかと思います」
そうよね、本来なら結納金や持参金がいくらで、いつ結婚するかとかはそれはそれは細かく決められた契約書のはずなんだけれども、宰相も私達の婚約にノリノリでさっさと婚約を結ばせるために契約書を作ってくれてたみたい。
「え、いや、その、ミリアリア様は本当にうちの息子で良いのですか」
「エドワルド様 " で " いいのではなく、エドワルド様 " が " いいのですよ。格好良くて、素敵なエドワルド様と結婚できるなんて夢のようです」
ニコニコと答える私とは違い、公爵夫妻はまだ腑に落ちないようでなかなかサインをしてくれない。ちゃちゃっとサインしてくださいよ。
お父様と私と宰相のさっさとサインしろよの圧に負けたのか、エドワルド様が一つ条件を書いてほしいって言い始めた。
「一つお願いがございます。ミリアリア様が婚約を解消したいと思った時には、こちらの返事は待たずにすぐに解消出来るというようなことを書いていただけますか」
いや、解消したいなんて言うはずないじゃないですか! ムスッとした顔をしてしまったけど、考え直す。それさえ書いてしまえば、すぐにでもサインしてくれるってことよね。
私が解消したいなんて言うはずないんだから、実質その条文はあってないようなものよね。うんうん。仕方ありませんね、書いておきましょう。
その一文を書き足した契約書を見て、やっと公爵家の皆さんがサインしてくださった。
やったー。やったわ。ここまでくるのに何年かかったことか。こうして正式にエドワルド様と婚約を結ぶことになったことに私は大満足だった。




