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前世を思い出した我儘王女は心を入れ替える。人は見た目だけではありませんわよ(おまいう)  作者: 多賀はるみ


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14【エドワルド視点】

【エドワルド視点】


 驚いた。ミリアリア様が謝るだけではなく、訓練の見学をしたいと言い出した。

 少し前まで『訓練だなんて汗臭くて、暑苦しい』とか、言っていたのに。

 他にも、訓練場に腰掛ける物がなくて、近くにいた騎士がこれしかなかったと樽を持ってきても、嫌な顔せず座るし、騎士にも感謝の言葉を告げていた。

 訓練中も大人しく見学していた。

 極めつけは、訓練終わりにアルにかっこよかったと言うし、俺にまで素敵だったとまで言ってきた。


 いったい、あれは誰だ?

 違う人間が入れ替わっているんじゃないかと、本気で思ったほどだ。


 今日は王城には訓練だけだったため、俺は挨拶をしてその場をあとにする。


 タウンハウスまでの馬車の中で、ミリアリア様の変わりようについて考える。

 あれは何が何でも変わりすぎだ。何か企んでいて演技なのかもと警戒していたが、演技にしても限度がある。

 もし、あれが演技ならそこらの舞台女優なんて目じゃない。




 邸につき、昼食の前にまずは風呂場へ向かう。

 汗を流してから、食堂へ向かえば母上は席についており、既に昼食が並べられている。

 

「ただいま戻りました」


 そう声をかけて、自分も席につく。


「お疲れ様。さぁ、お腹が減っているでしょう、いただきましょう」


 母上は、女性の割に結構よく食べる方だと思う。魔物が出れば自身も剣を振るうこともあるから、何事も体が資本だ、と言ってよく食べよく動く。


 父上はこの時期、領地からは離れられない。魔物が特に活発に動くこともあって、討伐に忙しい。

 しかし、この時期は社交のシーズンでもあることから、母上と俺は王都のタウンハウスに滞在している。

 領地にいれば父上に剣の稽古をしてもらうのだが、討伐で忙しいから城でポール団長に稽古をつけてもらえと言われて城の訓練場へ世話になっている。

 ついでに、今年からアルが魔法の授業が始まるから俺も一緒に授業を受けろと言われた。


 そんななかでの、この間の出来事だ。

 アルと一緒に謹慎のため、城の西の塔に滞在すると母上に連絡がいってしまって、帰ったら叱られるかと思いきや、帰ってきた日に母上には褒められた。

 宰相からある程度の説明を受けていたのだろう、何があったにせよ、王家の自分より弱い存在を守ったのならよくやった。ということらしい。


 食事をしながら、今日城で起きたことを話す。


「そういえば、ミリアリア様に謝罪されました」


「あら、ミリアリア様に?」


「ええ、驚きました。まさか、謝罪されるとは思わなかったので」


「そんなこともあるのねぇ」


「おかしいと思いませんか? アルに対しても、友好的なんです」


「そうねぇ、今までを知っているととても怪しく感じるわねぇ」


「ですよね」


「まぁでも、あのミリアリア様もこのままいい方向に向かうといいわよね!」


 母上は、とてもポジティブだ。自分の息子が散々バカにされているのにはいい気はしていないようだが、まだまだ幼い姫様だから仕方ないわ、と言っていたことがある。

 まぁ、今後もそれが変わらないのなら私の態度が変わるだけよ、ホホホとも言っていたが。


「それに、わざわざ俺に素敵だったなんて言ってくるんですよ」


「まぁ! まぁ! やっと、あなたの良さに気づいたのかしら」


 確かに本当にあのミリアリア様が良い方へ変わってくれるならアルの為にも嬉しいが……

 食事が終わり、午後からは勉強の時間だ。正直、体を動かしてるほうが得意なのだが、ゆくゆくは領地運営しなければならないことも考えると勉強もやらなければいけないのは分かっている。眠らない様に気をつけなければと、気合を入れる。





 翌日、朝食をとろうと食堂へ向かうと珍しく母上はまだ来ていなかった。

 そろそろ朝食を取らなければ、訓練に間に合わなくなる。先に食べてしまおうかとナイフとフォークに手を伸ばすと、扉が開いて母上が入ってくる。


「凄いことが起きたわよ!」


 何が起こったというのだろう。母上は席につきながら、話し始める。


「王家の方々が昨夜の晩餐で和解されたそうよ」


「和解?」


「ええ、なんでもミリアリア様があの噂は事実ではないと証明されたんですって。それで、陛下も王妃様もアガルト様に謝って仲良く食事されたんだそうよ」


「ミリアリア様が?」


 信じられない。





 母上に衝撃の話しを聞いて、色々聞いていたら王城へ行くのがいつもより遅くなってしまった。

 いつも余裕を持って訓練場へ行っていたから、訓練の時間には間に合うが。


 城へつくと、普段と空気が違うように思う。いつもなら、城内を移動しているだけでクスクス笑いや陰口がついて回るが、今日はそわそわと落ち着かない。

 昨日の王家の人々の食事の時の出来事について、すでに噂が回っているようだ。


 訓練場へ行くと、アルが騎士に絡まれていた。

 いつも早めに訓練場へ行くのは、アルが絡まれるのを少しでもなくすために早めに行ってるのに。舌打ちをする。

 あいつは確か、子爵家の次男だったか。そこそこ顔が整っていることを鼻にかけて、よく俺達に絡んでくるやつだ。一度、流石にイラッと来て指導をお願いするていでボコボコにしてやってからは俺には絡んでこないが、アルが一人でいるといつも絡んでくる。自分は継ぐ爵位がないため騎士として身を立てないといけないが、自分よりも容姿が劣っているのに次期国王というのが許せない、という言い分らしい。

 いや、王族に対してその態度はなんだよ、とたしなめようとしたらアルに止められてしまってそのままでいた。

 はあ、早くアルのもとへ行こう。その時、驚くことが起きた。


 陛下が訓練場に来ていた。それさえも驚きなのに、騎士に絡まれているアルをかばい、その兵士を北の砦への移動を命じた。

 騎士は呆気に取られているようだが、昨日の出来事の噂を一度も聞いていなかったのだろうか。

 ほとんどの者があの噂は本当か、と様子見していたというのに。


 北の砦は男色の騎士が多いことで有名だから、顔が整っていることも手伝って色んな意味で可愛がってもらえそうだな。

 今まで、散々アルをバカにしてきたんだ、いい気味だ。


 訓練場がざわざわと落ち着きがない。

 北への移動を命じられた騎士は膝をついて項垂れている。

 陛下はそんなことには目もくれず、訓練場にいるみんなに「君たちがいざというときの為に訓練を続けてくれているおかげで私達は今日も安心して過ごせる。君たちには感謝している。これからも訓練に励んでくれ」と言って、その場をあとにしようとしたが振り返り「アガルトのことをよろしく頼む」と言って今度こそ、その場をあとにした。


 噂は本当だったのだ、と周りの人々がザワついたのがわかった。

 まぁ、そりゃあそうだよな。今まで陛下はアルに対して、いてもいなくても変わらないような態度だったのに、アルに絡んだ騎士を移動させたのだ。

 これからは、アルにもきちんとした態度を取らなければいけないと思ったことだろう。


 そんなことがあってから、周りのアルに対する態度がガラッと変わった。心なしか、いつも側にいる俺への態度も軟化している気がする。





 訓練が終わり、アルに話しかける。


「良かったですね」


「え?」


「王家の皆さん、和解されたと聞きました」


「あぁ、うん、そうなんだよ! ミリーのおかげでね」


 やはり母上に聞いたとおり、ミリアリア様のおかげ、か。

 まだ周りには沢山の人が残っていて、聞き耳を立てている。


「ミリーがね、色々調べてくれたんだ。昔、ユニーカ大陸出身の方を王妃に迎えた王がいたんだって。それから時々、ユニーカ大陸特有の見た目の子どもが生まれることや、三代前の王弟が僕に似ていることが分かってお父様もお母様も仲直りして、僕に謝ってくれたんだ」


「そうだったんですね。まさか、アガルト様の見た目がユニーカ大陸特有だったとは」


「ね! 僕も驚いた」


 アルは嬉しそうだ。本当に良かった。家族仲が良ければ、アルをバカにするような奴らはいなくなるだろう。


 俺はミリアリア様に対して申し訳なくなった。

 何か企んでいるんじゃないかと警戒していたが、今の状況を考えると、本当にこの前アルに助けてもらっことで心を入れ替えたのだろう。

 見る目を変えて、今度からは形だけではなく、心からミリアリア様に敬意を払おう。






 エイガ公爵家は、何代か前の公爵さまが「飯をちまちま食べるのは好かん!」と言ってから、給仕のものが一つ一つ料理を持ってくるスタイルから、食事は全て机に置かれるスタイルになりました。

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