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オストメニア大戦  作者: 居眠り
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第8話 救出

第8話です。

 謎の襲撃者を撃退し、4人の奴隷達を拘束したイグロレ達は助けを求める声の主の所まで辿り着いた先で目に入ったのは、20人以上の奴隷達が1人の女性士官を取り囲んでいるという光景だった。

 イグロレ達が到着するまでに身ぐるみを剥がされそうになったのか、あちこちボロボロになった士官服を着ている彼女こそチャペン少尉だろう。

 まだこちらに双方気付いていない。

 イグロレ達は総勢10人余り。

 狭い工場地域に部隊を寸断されてしまったか。

 数的劣勢と自身の指揮の下手さを悔やんだがもう遅い。

 現有戦力で確実に、短期決戦で仕留める。

 そう思っているとチャペン少尉が奴隷達に何故こんな暴動を起こしたかを問いかけていた。

 助けが来るまでの時間稼ぎだろうか。

 それを聞いた奴隷達は圧倒的人数差に慢心したのかニヤニヤしながら答えている。


「何故って…そりゃ自由の為さ。暴動で混乱してるここから抜け出せれば強制労働から抜け出せる」


「それにどさくさに紛れてあんたみたいな女を犯せるかもしれないしなァ?」


「ヒヒッ!ウヒヒヒ!」


「ケダモノ共め…!」


 聞いていて怒りを覚えたイグロレは完全に油断しきっていると判断し、攻撃命令を下した。

 まず全員で一斉射。

 幸い何人も重なって立っているのでチャペン少尉に当たる可能性は無い。

 突然の銃声とバタバタと倒れる仲間達に奴隷達は狼狽した。


「なッ!こいつらどこから!?」


「ゼスト(地獄)からさ!!」


 多数で強姦しようとしていた彼らにブチ切れていたイグロレは体術を駆使し、1人を投げ飛ばし、左手の拳銃で3人の胸を撃つ。


「や、奴らを叩きのめせ!!」


 残った奴隷達が必死の反攻を試みるがその時既にチャペン少尉が動いていた。


「…ハァッ!」


 腰に提げていた鞭で2人の顔面を連続して思い切り叩く。


「イッテェ!」


「でかした!」


 すかさずイグロレと警護兵がのし掛かり拘束する。


「離せッ!退けよこの野郎!」


「うるさいッ!」


 このグループのリーダーと思しき男の最後の抵抗もチャペン少尉に顔を蹴り飛ばされ伸びた。


「中々やりますね。貴女がチャペン少尉?」


「えぇそうよ。助けてくれて感謝するわ。貴方は?」


「俺はイグロレ・ド・ロックラー。海軍大尉だ。休暇中だったが近かったので加勢しに来た」


「海軍大尉!?これは失礼しました!」


 慌てて敬語になるチャペンだったがここで敬語いらないと言っても聞きやしないんだろうなぁと思ったイグロレはあえてスルーした。


「さて、貴官の部下達は?」


「一部を除き、殺されました…」


「そうか。ならこのまま俺の部隊に入るといい。今ここには10人程度しかいないが総勢は300人を超える警護兵達だ。憲兵の増援までなんとか持ち堪えれるだろう」


「すみません、お言葉に甘えさせて頂きます。それに警護兵300人ありがたい数です。おそらく他地区からそろそろ応援が駆けつけると思うのですが」


「まぁとりあえずここを抜けて最終目的地である奥の工場地域を目指そう」


「「「ハッ!」」」



〈市場周辺〉

 応援に来た憲兵隊100人と陸軍200人は戦慄した。

 何に?

 それは荒れた市場の真ん中で服を返り血で染め、右手にライフル、左手に奴隷から奪ったと思しき曲がった鉄パイプを持ったアンカーにだ。

 総勢200人ほどいたと思われる奴隷達は100人近くを残し、全滅した。


 市場周辺の地は赤く塗装された。



〈陸軍本部長執務室〉

 今回の暴動事件に対して陸軍は精鋭200人を出動させた。

 しかし未だに鎮圧報告は上がって来ない。

 どうやら想像以上に手こずっているようだ。


「無能共め…」


 机の上に足を乗せ、タバコを吸いながらそう呟いた男が居る部屋の名は〈陸軍本部長執務室〉。

 この男こそがルンテシュタット王立陸軍本部長エルドラ・ド・カート元帥である。

 白髪頭と顔に残っている戦傷が印象的だ。

 そして彼は今、かなり立腹していた。


「腐っても正規兵。たかが奴隷共に遅れをとっているとはな…。陸軍の…いや、わしの顔に泥を塗る気かあの馬鹿たれ共め…」


 するとコンコンとドアを叩く音がした。


「入れ!」


「失礼します!元帥閣下、朗報です」


「さっさと言え」


「ハッ!今回の暴動の中心地である市場と工場地域ですがそのうちの1つ、市場を制圧したとの報告です」


「制圧したのはもちろん我が陸軍だろうな?」


「いえ、それが…」


「どうした、憲兵隊に先を越されたか?」


「…休暇中の海軍中将アンカー・ライン殿と憲兵隊小隊長リンラルク少尉が共闘し、鎮圧したとのことです」


 カートに報せに来た彼の副官は上官の顔がみるみるうちに赤くなっていくのを確認した途端、3歩後ろに下がった。


「憲兵隊はともかく!海軍の若造に手柄をとられるとは何事かぁあ!!!」


 机の上にある物を手当たり次第に投げまくる上官を見て、副官はため息をついた。

 彼がここまで怒るのには理由がある。

 彼は第1級黄金功労勲章というルンテ軍人にとっては最高の名誉を前大戦でもらい損ねたのである。

 少なくともあと1勝分の手柄を立てていれば授与されていただろう。

 しかし、それから20年。

 戦争も内乱も大規模暴動も発生せず、歳月ばかりが過ぎ去っていく。

 もう彼は75歳の高齢なのだ。

 いつ逝ってもおかしくない。

 それ故に今回の暴動で手柄を立ててあと少しで届く第1級黄金功労勲章を手に入れようとしていたのだが、それにしてもこの爆発っぷりは体に良くないと思い始めた時、カートは見事にぶっ倒れていた。


「かっ、閣下ぁ〜!!」


 副官の情けない声が付近に木霊した。

これを投稿した頃、小生はテスト勉強に忙殺されているであろう…。

by 居眠り



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