第6話 穏やかな朝
第6話です。
第6話 穏やかな朝
アンデルが朝食を摂ってから少し間を開け、市場へ向けて出発した。
30分ほど歩いて、着いた時には午前7時。
早く着きすぎたのでまだ市場には人が少なかった。
「早すぎましたね、兄上」
「うん。早いな」
どうやら買い物に行きたいと言っていたが買い物自体に興味がある様には見えない。
久々の再会で忘れかけていた弟の趣味を思い出す。
確かアンデルは人と話すのが好きだったよな。
それに運動も体が弱いのを克服する為に好んでしてたはず。
本を読むことも嫌いではないと言っていたけど小さい頃はよく外出してたな。
よしよし。思い出してきたぞ。
おっ、そういえば確か…。
「アンデル、あの丘の上の家が見えるか?」
「え?はい。ロックラー家ですよね?あの丘の土地を持つ貴族の家」
「そう。確かご両親が亡くなってて俺と同い歳の奴が現当主なんだよ」
「そうなんですね。知りませんでした。で、それが一体どうしたんですか兄上?」
「今から時間潰しがてら行こうかなってね」
「え、連絡は!?」
「してない」
「じゃ、じゃあ失礼ですよ!」
「大丈夫大丈夫。心配ないって」
「本当ですか…」
「さ、行こうぜ」
まだ不審がる弟を連れて市場から見える丘の上の家を目指す。
歩くこと10分。
門が見えてきた。
門番らしき人が眠そうに立っているのを見つけ、近寄って話をする。
「すみません。イグロレ・ド・ロックラーは居ますか?」
「あぁ、アンカー様。もちろん居ますよ。多分弓場で鍛錬なさってると思いますよ。ま、中へどうぞ」
「ありがとう」
まさかの顔パスにアンデルは頭の上に「?」を浮かべていたがここまでくるとなんとなく察しがつく。
そのまま弓場へ一直線に進む。
すると規則正しく矢が的に当たる心地よい音が聞こえ、やがて弓を引く青年が見えてくる。
「おーいロックラー大尉〜」
「ん?あっ!アンカー…ライン司令!」
「すまんな、急に押しかけて」
「いえいえ、別に構いませんよ司令。それで何用ですか?」
当然の質問にアンカーはアンデルの頭をポンポン叩きながら理由を話した。
「こいつ、俺の弟のアンデル。さっき市場に買い物に出たんだがあまりにも早すぎてな。大尉の家が見えたから来させてもらった。前に弓の勝負の話しただろ?しようぜ、今」
「ハハッ。なるほど、部下を暇つぶしに使うんですね」
「わ、悪い」
「いえ、別に大丈夫です。やりましょう」
そしてイグロレはアンデルの方を見て挨拶してきた。
「俺の名はイグロレ・ド・ロックラー。ロックラー家現当主で海軍大尉。この人の作戦参謀だよ」
「僕はアンデル・ド・ラインです。歳は17。いつも兄を支えて頂きありがとうございます」
アンデルから見たイグロレは短く切った黒髪に角ばった頬と顎で剛気さを感じさせられる。
後で聞いたら歳は25歳。背丈は185センチだそう。
「お、ご丁寧にどうも。アンデル君、君も弓術勝負するかい?」
「いいんですか?したいです!」
「よし。司令、3人で勝負しましょう。矢の数は3本。的の中心に近ければ近いほど得点が高くなるのでそれで競いましょう」
「乗った」
じゃんけんの結果アンカー、イグロレ、アンデルの順になった。
弓術の練習はアンデルもしているのでその成果を発揮する時が来たと思った。
一巡目。
アンカーの矢は真ん中から右に逸れた。
得点としては3点。
続いてイグロレはど真ん中に命中させた。
得点は5点。
アンデルも矢を放つ。
左下に刺さる。4点。
「やるじゃんアンデル」
「兄上がいない間に練習しました」
「いいことだ」
二巡目。
アンカーは見事、真ん中を穿つ。
5点。
イグロレは同じく真ん中で5点。
アンデルは下に逸れて3点。
首位10点で同率2位8点のライン兄弟を離し、独走するイグロレだったが三巡目で恐るべきことを成した。
アンカーは3点で合計11点。
「悪いですね司令。勝ちは頂きます」
そう宣言した後、矢は1本目の矢を割りながら刺さった。
「す、すごい…!」
思わずアンデルは賛辞を漏らす。
「ハハッ。長年練習した甲斐あってたまに出来るようになったんだ」
「この時点で俺11点にロックラー大尉が15点…負けたぁ〜」
「僕も負けましたけど…頑張ります!」
キリキリと矢を引き絞るアンデル。
それを眺める兄とその部下。
ヒュッという音の後、タン!という音が響き渡る。
「「お見事」」
真ん中に命中。5点だ。
「結果は司令11点に俺15点。アンデル君12点ですね」
「いやー楽しかった。しっかし前から思ってたけど上手いな本当に」
「練習さえすれば誰でも出来ます。いい暇つぶしになりましたか?」
その声と同時に丘の下。
つまり市場の方から銃声が鳴り響いた。
急いで下を見ると集まりだした臣民らが騒いでいるのが見て取れる。
「この事件か何かに時間ピッタリだよ、大尉。有意義だった。俺は下へ行く。アンデル!お前は帰りなさい!」
「え!?行くんですか?」
「こんな近くの現場に軍人が行かないでどうする?」
「武器は?」
「あるよ。ほらっ司令。拳銃だけじゃ心許ないでしょう?ライフルを一応持っていきましょう」
途中から姿が見えなくなっていたイグロレが両手にライフルを2丁ずつ持っている。
「というわけだ。いいかアンデル。俺たちは憲兵が来るまでの時間稼ぎだ。無茶はしない」
「…分かりました。気をつけて下さいね!」
「もちろんさ」
「司令のことは任せろ」
そう言って2人は坂を駆け下りていった。
海軍中将ってこんなに身軽なんですかね…(おい作者)
模試終わりに映画「ミッドウェイ」観てきました。
多少作画(艦艇の種類、モジュール配置)に難ありでしたが戦闘シーンは大迫力でしたよ。
過激ミリオタが騒いでますが自分は面白かったので是非どうぞ。




