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オストメニア大戦  作者: 居眠り
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第47話 不気味な停戦期間

第47話です。

 第1航空艦隊総司令に就任したアンカーには精神的ではない問題が1つ存在した。ルナに代わる後任の副官だ。

 現在ルナはアルリエ・ド・バラストロング准将(空母ツヴァレフ座乗)の副官であり、アンカーの副官ではない。

 参謀長はガーリン・ド・ザンボルト大佐が引き継いだが、事務仕事やアンカーの予定を決めたり、時には相談相手だったり、上官の身辺警護と副官は必須だ。

 正直言って身辺警護能力はアンカーが嫌うので(自由行動したい派)不要だが、事務仕事が苦手なアンカーを支える有能な秘書が欲しかった。

 どこか使える、そして暇な将校はいないものかとリストをペラペラとめくっていると知っている顔に目が止まった。


「ははーん。良い機会だし、ひとつ任せてみるか」


 いつもの顔に戻ってきたアンカーは早速件の人物を司令室に呼ぶことにした。

 そして呼ばれた男は長パンを数本差した紙袋を抱えて到着した。


「エスメール・グリゴリー・デル・ロマノスキー大佐、参りました!」


 数ヶ月前とは見違えるほどに軍人らしい文言だが、現在の所持品が全てを帳消ししていることは笑わずにはいられない。


「な、なんだ……その長パンの山は……(笑)」


「はっ、ええと、陸に上がった際美味しそうなパン屋を見つけまして……この間出た給金の残りで買い占めてしまいました」


 パン屋は喜んでましたよ。と呑気に言うこの王太子は、食に関してはどうやら性格が良くなる前から変わらないらしい。というより庶民の食事を普段食べることが無かった反動か、最近は安くかつ美味い飯をよく食べると聞く。

 そんな艦隊のマスコットになりつつある大佐殿に、アンカーは俺の副官にならないかと尋ねた。

 最初はキョトンとしていたものの、すぐに彼は了承した。アンカーにとっては意外な反応だったが、エスメールは自信家(自信過剰家)だったと思い出して納得する。

 早速ここ1ヶ月の予定をまとめ、提出するように指示を出した。

 エスメールは受け取った書類を脇に抱えて退室しようとしたが、クルッと軽快に振り返ってこう言った。


「……長パンいりますか?」


「いる」



 その日の日記には「美味しかった」と書かれた。パンくずを紙上に添えて。



 そして半年が過ぎた。1937年4月3日。この間スカリー帝国やカーリス皇国に一切動きがなかった。

 それがかえって不気味に思えてならないアンカーだったので、ツヴァレーンから陸に上がって来たザンボルトに声を掛けた。


「は?敵側の今後の予定……ですと?」


「うん。前大戦を経験した老練な大佐の意見を聞きたいんだ。どうかな?」


「と、言われましてもなぁ……」


 うーん、と10秒ほど作業を中断して思考した彼は個人的な意見ですが、と前置きしてから意見を述べた。


「スカリー、カーリスの枢軸国は両国とも我が軍に一撃を食らいました。ですのでやはりその損害の補填を行なっているのでしょう。我々も陸海軍が手酷くしてやられましたからな……」


 大怪我を負い、少し障害が残った右腕を左手でさするザンボルトを見てアンカーはしまった、と遅まきながら気がついた。


「……すまない、大佐。無神経だった」


「なに、私としてはライン総司令がお元気になられて嬉しいですぞ。……私はもう何人も戦友を見送った身。気になさることではなかろうて」


 そう言ってハッハッハッと笑う参謀長につられてアンカーは机に置いていたペンダントを持ち上げ、開いた。

 そこにはアンカー、イグロレ、そしてナラの3人が士官学校を卒業する時の写真が入っていた。


「このまま講和出来ればいいな……」


 ザンボルトか、それとも旅立った親友へか、そう呟いたその時。けたたましく電話が鳴った。


「ザンボルト大佐だ。これは海軍本部ちょ、え?…………それは本当ですか!?……承知致しました。直ちに」


 たった1分ほどの通話で、ザンボルトの顔色を激変させた内容とは一体なんなんだ?と気になるアンカーに彼は声を震わせて伝えた。


「総司令……」


「叔父上からだろう?何をそんなに慌てて……」


「……西の聖アルフォード神国がスカリー帝国、カーリス皇国側につき、我が国へ宣戦を布告したようです」


 ペンダントを閉じて置こうとした手が一瞬震え、スルリとステンレス製のアクセサリーが床に落ちた。


「は……?」


 アンカーは落ちたペンダントが意識から完全に消えるほどの衝撃を受けた。

 放心状態の上官に、ザンボルトは落ち着いてドクトラからの命令を伝える。


「既にアルフォードは我らが友邦、ドレッジ連合王国へと侵攻を開始しました。突然の宣戦布告に連合王国を構成する7ヵ国の内2ヵ国が降伏、さらにルンテ陸軍西方警備師団への戦闘も発生し、各地で我が陸軍は圧倒的劣勢に陥っている模様です」


 西方には格好だけの師団しかおらず、装備は旧式もいいところだ。陸軍だけでなく海軍も旧式艦艇で構成された第7艦隊が西方に駐留している。他人事ではない。


「しかし、しかしだ。ドレッジ連合王国は今大戦に参戦していないぞ。なぜ攻められなければならない!?」


「分かりません。とにかく、作戦会議が行われます。至急王宮へ向かわれますよう……」


「王宮へ?」


 海軍本部や参謀本部ではないのか、それに俺は1個艦隊の長であって宮廷で開かれる御前会議に出席する身分ではないぞ、という疑問を顔一杯に表すとザンボルトが察して理由を説明してくれた。


「ライン総司令は名義上1個艦隊の長ではありますが、実数と戦力を見れば他の追随を許さぬ力を持っておられる……なので海軍本部長に次ぐ重要人物だから是非出席する様にとも元帥閣下は仰っておられました」


「承った……馬車を玄関に回してくれ。直ぐに向かう」

受験勉強忙しくて中々執筆出来ないのでストックが減り続ける一方……()

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