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オストメニア大戦  作者: 居眠り
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第46話 戦線復帰祝い

第46話です。

 1936年10月1日。アンカーは海軍に復帰した。

 ぶつくさ文句を言うペテロ軍務大臣を黙らせてくれたドクトラには感謝せねばならない。もちろん、他にも叔父には迷惑を掛けたのでしばらくは頭が上がらないだろう。

 さて、陸海軍、首脳参謀本部に復帰の挨拶を済ませたアンカーはヴェントリア軍港へ向かった。

 無論幕僚のイグロレ達には今日復帰することを伝えている。


〈ヴェントリア軍港〉


「変わった……なぁ」


 軍港の入り口から見えるツヴァレフ級空母にアンカーは目を見張った。艦橋がアイランド型から小ぶりなものに改装されていたのだ。

 おそらくレッソン中将、もとい退役大将の追突事故の教訓を受けて改修されたのだろう。

 彼の回復を祈りつつ、アンカーはツヴァレフへと足を運ぶが昇降口付近で立ち止まってしまった。

 それもそのはず。


「どんな顔して会えばいいんだ……」


 自分がチキンと思ったことはないが、なんというかこう……気まずい……!

 こんな感じで昇降口前をウロウロしていると、2人の士官が降りてきた上、目と目がバッチリと合ってしまった。


「「あ」」


「アッ…」


 両サイドとも声を漏らし、アンカーは自然と足が後ろへ下がる。しかし、佐官の階級を付ける男が大声で叫びながらタラップを駆け降りて来て、背中を羽交い締めにされた。


「ボスじゃないすか!!今日から復帰でしたよね!!さぁ早く艦橋へレッツゴー!!!」


 佐官の男──シュニザー中佐(少佐→中佐)と、上司の喜びっぷりに呆れている顔をするトーピド少佐(大尉→少佐)に素早く連行されてしまった。


「ちょっ、心の準備が!」


「いいからいいから!」


「すみませんボス。上官命令です」


「俺が上官なんだが!?」


 慌てて止めさせようとするも、部下2人はガン無視で艦橋へと続く階段を駆け上がる。もはやアンカーはお荷物扱いである。ひどい。

 そして、”ていっ”と艦橋の床に放り投げられた(普通におかしい)アンカーに、奥から飛んで来た愛猫ラートがのし掛かってきた。


「ラートじゃないか……!久々に会えたのは嬉しいが……重いから退いてくれ…」


 謹慎中は幕僚の面々に世話を見てもらっていたラートのじゃれ合いに、上体を起こして相手してやっていると周囲からの視線に気づく。


 作戦参謀イグロレ、航海参謀リーエル、元参謀長アルリエ、新参謀長ザンボルト、連絡将校兼艦隊司令部顧問エカテリーナ、特別参謀エスメール、ガーゴイラ艦長、そして元副官ベストロニカことルナ。


 皆こちらをじっと見つめている。その視線に悪意があるのではないかとアンカーは気が気でない。

 

 ──だがそんな心配は杞憂であった。


「「「復帰おめでとーう!!!」」」


 彼らは隠し持っていたクラッカーを一斉に撃ち鳴らし、隠れていた水兵達は狭くなった艦橋内に押し入り紙吹雪を撒き散らす。

 とても海軍中将の復帰祝いとは似ても似つかぬ様相に、やや遅れ気味なエスメールとエカテリーナだったが、周りの幕僚らにつられて彼らなりの祝福をしてくれた。

 呆然とするアンカーに、親友であり頼りになるイグロレが手を伸ばす。


「ほら、アンカー」


「あぁ……!」


 引き起こしてもらってすぐにアンカーは視界がぼやけてきた。


「あれ…おかしいなぁ……なんで、俺……!!」


「嬉し泣きってあるし、いいんじゃない?というかあんた隠してるつもりかもしれないけど、結構泣き虫じゃない」


 アルリエのやれやれ……という仕草に周囲がドッと噴き出し、アンカーも涙を溢しながら泣いた。


 こうしてアンカーは第1航空艦隊総司令に任命された。


 ──数多の人間に祝福されて。


 祝賀会が終わって一休みした後、アンカーは幕僚を一人一人呼んで謝罪を行った。

 イグロレは


「もうあんな事言うなよ」


 と心配そうに言い、リーエルは


「あの時は心臓が止まったかと思いました」

 

 とこぼした。続いて謝ったアルリエは真顔で


「あれはあんたが悪いわよ」


 と言い、エカテリーナは厳しい顔を作って


「人は簡単に変わるものです。自制心を常に心掛けるように」


 と叱ってくれた。祝いと反省は別というのがなんとも彼女らしい。しばらくの間上官に代わって、エカテリーナに諸々でしごかれていたエスメールはアンカーを反面教師にした様で


「言動には注意します……」


 と成長した姿を見せた。体重も減り、でぶっちょからやや丸型の体型になってきた彼の姿は、アンカーの謹慎中に行っていた努力の現れだろう。

 そして最後にルナと面会した。乗船前はあのトラウマになりかけたルナの目を直視出来るか怪しかったが、今は違う。


「中佐。俺はあの時、君の信頼を裏切る行為を未遂とはいえ実行しようとした。君の期待を全部潰してしまった。本当に申し訳ないと思っている。……許してくれなんて言えない。だが、これからの俺を見ていてくれないか?」


 必死に彼女の目を捉え続け言葉を紡ぐアンカーに、ルナはしっかりと返答した。


「分かりました。貴方のこれからの行動を見て判断します。……またよろしくお願いします、総司令」


 この様子を遠くから盗み見ていた幕僚一同は顔を見合わせて頷いたのだった。

アンカーって貴族には見えないッスよね。

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