表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オストメニア大戦  作者: 居眠り
38/53

第38話 狩りの時間だ

第38話です。

「よぉし、よくやったお前達!帰ったら極上のワインを開けてやる」


 平和大橋の意趣返しを終えた爆撃隊の編隊長はそう言い、機長に機首を帰路の方角へと向けるように指示を出した。

 しかしその真下の雲を突き抜けながら急速に上昇、接近する機影があった。

 レウリウムのR-111双発重戦闘機だ。


「俺専用機の馬力を見せつけてやるぞ…」


 どデカイ獲物を捉えた若い狩人は舌なめずりをしながら手元の通信機とビデオテープをカセットを弄り、音楽をかけ始める。

 レウリウムのいつもの行動に気づいたリサは、またか、と呆れつつ自身を押し潰さんばかりの加速Gをレウリウムに訴えた。


「ちょっとレウリウム、あんた速すぎよ!いきなり加速したら体が耐えられないわよ!慣れてないことして墜ちたらどーすんのよ!!」


「墜ちる墜ちないの話じゃない!俺が家を継げるかどうかがかかってるんだぞ!」


「貴方長子でしょうが〜!」


〈MI-3爆撃隊編隊長機〉


「……?…編隊長!国際周波数に音楽が流れてきています!」


「何、国際周波数だと?どこから送られてきている?」


「分かりません。しかし、この音楽は…」


 通信士が答えようとした時、ちょうど雲を突き抜けてレウリウムのR-111が編隊先頭の真下に躍り込んできた。


「ビンゴ!!!」


 レウリウムは搭載されている20ミリ機関砲を3斉射し、そのまま編隊上空へと退避する。

 一方で、先頭の編隊長機は両翼と機体中央部に被弾。炎上しながら落下していく。

 突然の強襲で墜ちていく編隊長機を見て、爆撃隊は狼狽の色を隠せなかった。


「編隊長機が……墜ちた!?」


「怯むな!各機、編隊間を詰めて対空砲火を密にせよ!」


 すぐさま副編隊長機が指揮を執るが、その時には引き返してきたレウリウムの2撃目が最後尾のMI-3に襲いかかっていた。

 後ろから迫り来る双発重戦闘機に爆撃隊はライオンに襲われた羊の群れさながらに混乱し、連携がままならない防御砲火を乱れ撃った。

 そしてこの間も次々と反復攻撃を仕掛けてくるレウリウムのR-111から流れている音楽は実に不気味なメロディーを奏で、より帝国兵を不安と恐怖の渦に陥れた。


「クソッ、なんなんだこの音は!?気味悪ぃ!」


「………思い出した。これはルンテの曲だ!」


「んなこた分かってる!曲名思い出す暇があれば撃て!」


「確かタイトルは、”赤太子”……」


〈副編隊長機〉


「ダメです、30番機が落伍しました!」


「騒ぐな!奴は双発機だ。この弾幕の中を生き残れるわけがない!とにかくありったけの火力を撒き散らせ!!」


 既に2機の僚機をたった1機の双発重戦闘機に墜とされた副編隊長は、編隊長が戦死したことを忘れ、烈火の如く顔を赤くしていた。


「本当にアレは双発機だと言うのか?機体が木の葉のように軽いぞ。それに武装、上昇性能が桁違いだ!」


 そう言っている副編隊長に航法士が新たな報告を行った。


「もう少しでカーリス半島北部のヒンディス川に出ます!奴も流石に燃料と弾薬が持たんでしょう」


「だろうな。だが、アレ1機のせいでこちらは2機も失った!最新鋭の戦略爆撃機を2機も!!」


 機体の床を蹴りつけ、悪態をついている副編隊長に今度は朗報が舞い込む。


「敵機被弾!繰り返します。敵機被弾!雲の下へ墜落していきます」


「やったぞ!」


「皇帝陛下と総統の御力だ!」


 その報に各機の搭乗員達は思わず歓声を上げたが、副編隊長はそんな余裕もなく、レウリウムのR-111について考察を深めていた。

 最新鋭爆撃機が見知らぬ迎撃機に2機も撃墜されたことを上層部に報告する為である。


「見た目は双発機…重戦闘機と言ったところか。高度8000まで昇って来れる上昇性能に、双発機とは思えない機動性。……よほど装甲を削ったか、エンジン馬力が強力か…」


「おそらくエンジンではないでしょうか。リンドーの領主は大貴族のレーネンスキー伯爵家のはず。この家はルンテ第2の軍需工場を持っていると聞きます。武力に秀で、私兵部隊を所有しているという噂もあるほどですから、強力な新型エンジンを製作することなど造作もないと思われますが」


 そう考察する機長の発言を聞いた副編隊長は、緊張によって凝り固まった体をグキグキと鳴らしながら返答する。


「………なんにせよ、最新鋭の爆撃機が2機も撃墜されたことには変わりない。高度8000まで上って来れる護衛戦闘機が我が軍にも欲しいものだな」


「全くもってその通り。もうこんな経験は懲り懲りです!」


「帰ったらワインどころじゃなさそうだ。……全機に告ぐ!編隊を組み直し帰投する」


 レウリウムの猛攻を凌いだMI-3戦略爆撃隊は、残機28機で編隊を組み直して南西に撤退して行った。


〈双発重戦闘機R-111〉


「左エンジンの出火は収まったけど、このままだと姿勢が安定しないわよ!」


 リサの報告にレウリウムはたった2機しか墜とせなかった自身の技量に苛立ちながら怒鳴り返す。


「わかってる!だから必死に湖に向かってるじゃないか!」


「なんで逆ギレするの!元はと言えばレウリウムが編隊を組んでる爆撃隊に攻撃を仕掛けるからでしょ!?」


 半ば墜落するR-111の機内でギャーギャー言い争いながらも、近郊の湖に不時着し、そこから無事に脱出を果たせることが出来た。


「ふぃー…。いやはやそれにしても、1回だけしか実戦で乗れんとはなぁ。惜しいなぁ…」


「レウリウムが編隊に突っ込まなかったらもう少し乗れたでしょ」


 呑気なことを言っているレウリウムであったが、落ちた水面から姿を現したリサに痛いところを突かれてしまった。

2人が湖面で沈みゆくR-111をプカプカ浮かびながら眺めている頃、レウリウムの故郷は爆撃により発生した火災に苛われ、火は2日間に渡って消えることはなかった。

 リンドーは後方から送られてくる物資の中継地点でもあった為、補給拠点を潰されたことにより半島の西に閉じ込めたスカリー帝国軍に攻撃を続行することが不可能になった。

 この報を受けた各陸軍指揮官は怒り狂い、海軍指揮官達は陸軍の対空防御の甘さを指摘した。

 だが、レーネンスキー伯爵家には表立った批判は寄せられることはなかった。

 その仕事は貴族の担当だからである。

レウリウムの音楽を流す癖、実は周りの友軍基地にも届いており結構非難されてるんですよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ