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オストメニア大戦  作者: 居眠り
25/53

第25話 第1混成航空艦隊司令ライン中将

第25話です。

 昼飯休憩を終えた者達が艦橋に戻ってくる頃、アンカーはベストロニカが艦長に隠れてくれた(バレてた)大好物の堅パンを飛行甲板の端っこで頬張っていた。

 これから向かう先の南の空は真っ青だが段々と暗くなっており、明日出撃すればアレに当たるよなぁ…と考えているとラートが頭に飛び乗ってきた。

 軍帽のつばから覗き込んでくる2つの綺麗な球体からは何かを案じているかの様に見えた。


「…お前まで心配してくれるのか、ラート?」


「…(ゴロゴロゴロ)」


「きっと大丈夫さ…」


 そう言って愛猫の頭を撫でていたが、浮かんでくるのはやはり亡き戦友の顔だけ。


「大丈夫…俺は、大丈夫…」


 何かを恐れる様なその後ろ姿は艦橋で彼を見ていた3人の女性に不安材料として否応なく印象付けられることとなった。


 午後1時。

 作戦説明の為、昼飯休憩を取らずに第5艦隊に行っていたアルリエが戻ってきた。

 予定より遅れて帰還した彼女の顔には疲労が少し見えた。


「どうしたんだ参謀長。疲れを知らないお方だと思っておりましたが?」


「揶揄うのはよして下さい司令。…コレ、命令書です」


「え?なんの?」


「ご自分でご確認下さい。私は昼休憩を取らせて頂きます!失礼します!」


「「「どうぞごゆっくり〜」」」


 男性陣の熱い(?)労いの言葉を受けたがアルリエは完全に無視してさっさと食堂へと向かって行った。

 男性陣で唯一これに乗らなかったエスメールは「何やってんだ…」と顔に書いてあり、外部のエカテリーナは通訳を介して内容を理解した時微かに微笑んでいた。

 アルリエから渡された命令書の封を副官のベストロニカが破り、アンカーに手渡す。


「さてさて、なんの命令書ですかっと…は?」


「どうしました、司令?」


 ポカンと口を開けているアンカーを訝しんだベストロニカは、彼から命令書を受け取って目を通すとそこには驚きの内容が記されていた。


 “平和大橋破壊作戦にあたり、第2、第5艦隊を一時的に統合し第1混成航空艦隊とする。尚、アンカー・ライン中将を同艦隊総司令に任命する。 海軍本部長 タンヌ・ヴァ・ド・ドクトラ元帥”


「少佐…さっきのアルリエの態度…もしかして…」


「えぇ…レッソン中将から、おそらく…」


「後で謝っとこ…(ボソッ)」


 アルリエがご機嫌斜めだったのと遅くなった理由が判明した。

 同階級の者がいる場合、基本的には年長者や先任者が上位にあたるのだが今回のこの件に関しては些か、いや、大きく通常と異なっている。


 (多分模擬戦の結果を考慮しての人選だろうけど…これは怒るよなぁ…)

 アルリエがこの命令書を受け取ったのは第5艦隊艦橋とみて間違いないだろう。

 激怒するレッソンになんで私が相手しなきゃなんないのよ…という顔のアルリエの姿が容易に想像出来た。


「めんどくさいことになったぁもう…」


「…とにかく、司令が総司令です。いつ出航なさいますか?」


 命令書を艦橋要員らに回し終えたベストロニカが早速促してきた。

 アンカーは軍帽を被り直し、迷うことなく下令した。


「明朝午前4時よりヴェントリアを出航し、作戦行動を開始する。各員、準備に取り掛かれ!」


「「「「ハッ!!」」」


 4月29日午前4時。

 第1混成航空艦隊はヴェントリアを出航し、一路カーリス半島へ針路をとった。


 4月30日午後12時25分。

 予想的中の大嵐に遭遇。

 駆逐艦L-12が艦首切断による航行不能に陥り、曳航の為ナノワ列島に一時寄港。

 エスメール大佐、船酔いによる体調不良。


 5月5日午後7時。

 第1混成航空艦隊、半島に到着。

 アンカー、レッソンら艦隊上層部、火葬されたナラの墓参りに訪れる。

 同日、タラザ会戦が勃発したことを知る。


 5月6日午前4時。

 第1混成航空艦隊出撃。

 同日7時15分。

 第1混成航空艦隊、カーリス海に進出。

 後にタラザ反抗作戦と呼ばれた戦闘が始まった。


〈空母ツヴァレフ艦橋〉


「いいか諸君。陸軍の負担を少しでも減らす為に我が海軍はレーヴェン島空軍基地を叩く。タラザ基地が抜かれれば配置完了もままならない陸軍が攻撃を受ける。それはなんとしても阻止しなければならない。敵をなるべく多く引きつけつつ滑走路を破壊せよ。ウーラー!(ルンテ語で気合を入れる時などに用いる)」


「「「ウーラー!!!」」」


 アンカーの演説に各艦隊の乗員が大声で応える。


「作戦行動、開始ッ!!」

決戦の日は近い…

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