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異郷---5

 燦々と降り注ぐ陽光。白亜の宮殿。

 周囲をアラビア風の宮殿に囲まれた庭の中、織姫は小さな白いベンチに腰掛けていた。

 目の前には、色とりどりの花が咲き乱れ、向こうにはバラのアーチがかかっている。

 織姫は立ち上がり、そのアーチに向けて歩いてゆく。

 それをくぐれば、数多の部屋を繋ぐ回廊にたどり着いた。

 なんとなく、正面の部屋が気になったので、そちらに足を進めてゆく。

 その中を覗くと……

 一真が、ぼーっと突っ立っていた。

 彼は織姫には気づかないようで、何かに意識が向いている。

 じっと見続けていると、いきなり手を横に振った。


  ヒュッ


 ダラリと手をぶら下げた状態から、何かを振り払うかのように、一気に手を動かす。

 かと思うと次の瞬間。

 ダラリと戻した手は、今度はゆっくりと先程の軌跡をなぞっていった。

 一真の目は、茫洋と遠くを眺めていたが、それは自身の内面に意識が向いている証。

 先程の動きを、自身の中でスローモーションで再生し、行動のアラをじっと観察しているのだ。

 ふとその動きに、昼の出来事が重なる。


  ゴブリンの棍棒を、さらりといなす動作。


 それを証明するかのように、次の動きには手を振った後に掌底で何かを突き飛ばす動きが繰り返される。


「ちっ」


 一真が舌打ちした。自身の掌をじっと睨み付けている。


『三人で行動するにゃ、()()は能がなさ過ぎる』


 そこで動いている一真は口を動かさないにもかかわらず、一真の声が一面に響き渡る。


『河伯さんのように戦闘のセンスがあるわけでもなければ、西谷さんのように直観力があるわけでもない。さらに知識があるわけでもなし』


 独白はさらに続く。


『このままであの二人と居るのは許せねぇ。他の誰でもない。オレが、オレ自身を』


 顔を上げる。


『相応しくなるには何をすべきだ』


 唇を噛む。


『誰よりも知識をたくわえろ』


 腕を振る。


『誰よりも緻密に考えろ』


 足を踏む。


『誰よりも熟達するんだ』


 その鋭い目が、目の前の壁に穴を開けそうなほど圧力を上げる。


『自身の完成度を跳ね上げろ』


 視線の圧力に反比例するかのように、一真の動きは冴え渡ってゆく。

 腕を払うごとに、その動きから無駄が一つずつ省かれてゆく。

 いつの間にやら、一真の動きは払うだけでは終わらず、掌底での突きが中心の動きになっていた。


ビュン、ビュン


 何度も何度も、同じ動きを繰り返してゆく。

 恐ろしいほど緻密な、反復練習。


ビュン!!


 ひと払いを最後に、パタリと一真の動きが止まった。

 次の瞬間、一真の姿はその場からヌラリと掻き消えた。

 その場に残ったのは、その反復練習をじっと見つめていた織姫のみ。

 織姫は、先程一真が立っていた位置へとそっと歩み寄っていった。

 一真が睨み付けていた壁を、じっと見つめる。

 様々な感情が、渦を巻いていた。

 劣等感

 焦り

 不安

 恐怖

 不甲斐ない自身への怒り

 生まれ持ったものへの妬み

 だけどそれらよりさらに大きかったのは、どのようにしたら他の二人を守れるかという一念だった。

本日はここまで。

他にもいくつか書かなければならないもの(レポートを含む)がありますので、さほどハイペースには更新できませんが。

ブックマークしてお待ちくださいm(_ _)m


自分の名前から辿っていっていただくと、他にもいろいろ読めますので、お暇であればそちらもよろしくお願いします。




それでは

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