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頑固な私と誠実な貴方  作者: 白石 玲
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2015年2月21日の私

   2月21(土)の私   ―――大型犬の飼い主と私―――


「また私が後になっちゃったわ」


 前回と同じ横浜駅で待ち合わせた私は、気合を入れて早めに出たが、結局結衣ちゃんが先にきていた。

「ふふっ・・・癖ってなかなか治らないんですよね。こんなに時間にきりきりしないでもっと私もゆっくり生活できればいいんですけど」

 並んで歩きながら、今日は私の大好きなネパール料理店へと足を運ぶ。

「藤堂みたいに?」

「私まで彰みたいだったら、永久にデートできないかも」

「お互いに遅刻しあって、デートは毎回夜になっちゃうわね」

「今も毎回夜です。こうも休みが会わないとディナーが精いっぱい」

 今日の結衣ちゃんはやっぱりVネックのクリーム色のセーター。

「土日のシフトを代わってあげようと思うんだけど、藤堂の抱えてるお客さんが土日に入ることが多くてね・・・フランス語話せるのあの子だけだから、なかなか難しくて。ごめんね」

「あ、いえ、そんな!いいんですいいんです。お役に立ってるならそれで」

 すっかり愛犬と飼い主になっている二人がおかしい。

「あ、そうそう、これ、お土産」

 私はチョコレートを紙袋ごと結衣ちゃんに差し出した。

「こんなにたくさん?」

「たいしたものじゃないから」

「ありがとうございます。どこいかれたんですか?」

「イタリア。透に呼ばれて急遽ね」

「素敵!ちょっと見てもいいですか?」

 私が頷けば、結衣ちゃんは紙袋から箱を取り出してうれしそうに眺める。

「美味しそう。甘いもの大好きなんです」

「知ってる」

 私の言葉に少しはにかんで笑う彼女は、やっぱりあの藤堂を虜にするだけのことはある。

 それからカレーが運ばれてきて、ひとしきりイタリア旅行の話をして、結衣ちゃんがデザートのチーズケーキを頬張り始めたとき、私は本題にはいった。

「でね、これ、私の恋人から」

 先日藤堂に断わられた封筒を差し出す。

「田部井さんの恋人から、ですか?」

 不思議そうな顔をしながらも受け取った結衣ちゃんはさっきと同じように開封の許可を私に求めてから封筒を開けた。

「・・・これ・・・」

「藤堂といってきて」

「そんな、田部井さんは?」

「ひとりで行けっていうの?」

「あ、いえ、お友達とか」

「これは、彼と私からのお礼の気持ちなの。それと、これからもよろしくっていう気持ち」

「お礼?」

 いぶかしげな顔で首を傾げる彼女。

「結衣ちゃんは私の愚痴を聞いてくれて、藤堂は私の仕事を代わってくれて、とても感謝してるの。だから、せめてものお礼。それに、これからも、できればよろしくね?」

「こちらこそ!でも、これは受け取れません」

 結衣ちゃんはやっぱり、封筒に綺麗に戻したチケットを差し出した。

「どうして?」

「こんな高価なお礼を受け取ったら、彰に叱られちゃいますよ」

 その答えに、私は思わず噴き出した。

「え?」

「藤堂も同じこと言ってた」

「私に叱られるってですか?」

「うん。『いい子にしてないと結衣ちゃんに捨てられる』って、だから、結衣ちゃんに渡そうと思って今日持ってきたのよ。だから、受け取って」

 私は差し出された封筒をやんわりと彼女の手に戻した。

「彰ってばそんなこと言って・・・私、そんなに彰を尻に敷いてるつもりないんですけど!」

 ちょっと怒ったように言う彼女もまた可愛い。これだから藤堂は夢中になってしまうのだろう。

「ずいぶん懐かれてるのね」

「だといいんですけど。まあ、私はひどい捨て方の前科もちですから。彰には、いまもそう思われてるんだなぁ・・・」

 そんなことを言いつつもチーズケーキを食べる彼女。

「藤堂は結衣ちゃんに首ったけよ」

「今度こそ、いい彼女になれるように頑張るつもりです。だって彰は、私が人生で唯一“これだ”って思える相手ですから」

 そう言ってにこりと微笑み、彼女はチケットを受け取ってくれた。


 さあ、透、任務は残り半分。あっちのほうがちょっと手ごわいかも。








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