襲撃
ラィの一言はケレリスに衝撃を与えるモノだった。
「ラィ様、あなたは本当に魔法神様なのですか?」
「魔法神と言うのが何を指して言っているのか分からないが、かつては雷神とは呼ばれていた事もある」
「ラィ様が雷神様だとすると!
フゥ君、いやフゥ様が風神様なのですね!」
ケレリスはキラキラした目で俺を見てくる。
「それは違うぞ?
フゥは……風神では無い。
風神の姿に似せて造られた存在だな」
ラィは俺が風神では無いと言い切った。
「それでは本当の風神様はどこにいらっしゃるのですか?」
「風神は今は存在しない」
「存在し無い?」
「そうだ。風神は殺されたからな」
「風神様が殺された?それはどのような事でそうなったのですか?」
ラィは周りを見回すと、
「こんな所で話す事では無いと思うが?」
比較的近くの席の人が俺達の話しに聞き耳を立てている。
「そうでしたね。失礼しました」
ケレリスは少し冷めてしまった料理を無言で食べ始める。
俺達の食事も終わろうとした頃、隣の席に新たな客が座った。
その客達の一人が持っていた袋を落とし中から銀貨が数枚転がる。
そして何事も無く彼はそれを拾うと席に戻って行った。
そんな普通と思える出来事にショックを受けている人物が俺達の中にいるのだった。
帰り道辺りはすっかり暗くなり空には赤い月がここが異世界であると主張するように輝いていた。
街灯が照らす大通りを歩いているとケレリスの表情が暗くなっている事に気付いた。
俺はそんなケレリスの隣を歩きながら声を掛ける。
「ケレリス?ラィは結局魔法神なの?」
「そうだね、雷神様は私達エルフが魔法神様と呼ぶ存在だね」
「そうなの?それならケレリスは前から魔法神に会いたがっていたのになんでそんなに元気が無くなったの?」
「それは…………風神様が殺されたと聞いたから……神様も死ぬ事があるのかと……そして殺されるのか……」
ケレリスはラィの話した事が信じられ無いような、信じたく無いような気持ちをしているようだった。
そしてゴキムロンは落ち込んだ様子でとぼとぼと歩いていた。
俺はその事にこの時気付く事が無かった。
俺達は宿に着いてそれぞれの部屋に別れた。
ラィは俺の部屋に付いて来ると、
「今日は移動で魔力を使い過ぎた。
話しておかなければならない事が沢山あるが明日にしよう。
寝る」
ラィは俺のベッドの真ん中で丸々と寝てしまった。
『こう見るとタダの猫だな』
俺はそんなラィの寝姿を見てそう思い猫好きとして癒やされた気分になったが、
『あれ?俺の寝る場所は?』
仕方なく俺はベッドの端で落ちないように寝る事になってしまった。
翌朝俺はラィの寝相の悪さで顔にモフモフした感覚を感じて起きる事になった。
一つあくびをして寝間着代わりの竜人族の服から白いいつもの耳付きフードのパーカーに着替えようとした時、隣の共用スペースから俺の部屋にいくつもの足音が近付き響いて来て扉が開いた。
そこにはなぜか剣を構えている複数のエルフの姿とゴキムロンが見える。
俺は何が起きたのか理解出来ずにいたが、寝ていた筈のラィが先頭のエルフに向かって雷魔法を放ち黒焦げにする。
「こんな朝早くから何事かな?」
ラィは翼を大きく拡げると二本足で立ち四本の腕に魔力を込めて雷を纏わせる。
俺の頭は突然の展開に思考が追い付かず棒立ち状態で見守る形になっていた。
「ワシの神の手様を盗ったのが悪いのよ!
ワシの神の手様を返すのよ!」
ゴキムロンがそう叫ぶと次々とエルフが部屋に雪崩れ込み俺とラィを取り囲んだ。
その中にはヒラネスの姿もある。
「初めまして魔法神様。
私はエルフ族のネス妖長老より今回の作戦の責任者として全権を任せられているヒラネスです。
魔法神様には大人しく我々と共にエルフの森に来て頂けると楽なのですが、聞き入れて貰えるでしょうか?」
「私は何の用があってエルフの森等と言う所に行かなければならないのか!
私は誰にも命令され無い!
私は私のしたい事をしたい時にしたいようにするだけだ!」
ラィから発せられる魔力は小さな猫とは思えない迫力と圧力を示していた。
エルフ達はその凄まじい魔力に圧倒されていたが、ただ一人ヒラネスだけは顔に笑みを浮かべてラィに近付く。
そのヒラネスにラィが右手から雷の刃を放ち攻撃を加える。
ヒラネスはその雷の刃を鏡のような物で防ぐと反射した刃がラィに向かって飛んで来た。
ラィはもう一本の右手に纏う雷でそれを受け止めるとヒラネスを睨み返した。
「私が封印されていた間にそんな物まで造っているとはエルフはやはりまだ神殺しを企んでいるのだな」
「神殺し等そんな事は思っていませんよ。
我々は魔神を倒しに来ただけです。
我々にとって本当の神とは妖精神様だけですからね」
騒ぎに気付いたケレリスやホチネ、ツラナは起き出していたが、自室の扉を塞がれて出られずにいた。




