ゴキムロン、鞄を拾う
ツラナからの念話でその日の会議は中止になりヒラネスの所属するネス妖の代表シズネス老に俺達の視線が集まる。
「わ、わ、私は知らない。
何故私を見る!
何も聞いて無い。私には関係無い!
ヒラネスが勝手にゴキムロンを連れて行っただけだ!」
「何でゴキムロンを攫ったのがヒラネスだと知っているの?
ホチネはツラナから若いエルフとしか聞いていないけど?」
「…………知らない!私は関係無い!今日ゴブリンと接触するなんて聞いて無い!」
ケレリスの指摘にシズネスはそう叫んで会議室を出て行ってしまう。
残されたエルフ達も突然の事にびっくりしてしばらく無言になっていた。
「まずツラナと合流しよう!」
俺がホチネとケレリスに声を掛け部屋を出ようとした時、バルトスが口を開いた。
「待ってくれ!ゴキムロンとはゴブリンの前の大統領の事か?」
「そうだが?」
ケレリスはバルトスに答えた。
「ヒラネスとはあのヒラネスだよな!
竜人の英雄を大人しくさせた功労者として長老メーコネスの側近になってそれからもゴブリンの国に何度も行ってクーデターに加担していたと噂のヒラネス」
『ヒラネス、ラミネの事件の他にもゴブリンのクーデターにも関わってるのか』
バルトスからエルフの秘密の一端を聞き更に詳しい話しを聴きたかったがツラナとゴキムロンが心配で俺達は会議室を出る事にした。
魔法石でツラナの居場所を調べてそこに向かう。
「ツラナ…移動してる?
攫われたゴキムロンを追い掛けているのか?
エルフ領のある南門に向かってるのかな?」
ツラナに魔法石で念話を送るが返事が無い。
俺達はツラナの向かう先への南門方面に先回りするように急いだ。
「ヒラネス!」
ホチネは南門の近くでヒラネスを呼び止める。
ヒラネスは面倒くさそうに振り向いて、
「追い付かれましたね。
私達に何か用ですか?」
ヒラネスは鞄を下に置くと剣の柄に手を添える。
「何か用って………ゴキムロン?」
「ワシはエルフの森で暮らすよ。
このエルフが連れて行ってくれる約束してくれたよ。
だから護衛はもういいよ」
「待て!そのエルフは信用出来ない!」
ホチネの言葉に笑顔のゴキムロンが頷く。
「知ってるよ。ゴブリンの国に来てゴキムカーに会ってたエルフだからよ」
そう言うとゴキムロンはスッとヒラネスの置いた鞄を盗るとこちらに向かってツラナの手を引き走って来て俺達の後ろに隠れる。
ヒラネス達はゴキムロンの隙を突いた行動に戸惑って一瞬呆然となった。
「な、なっ、何をする!」
ヒラネスは鞄を取り返そうと剣を抜き一歩踏み出して俺達の後ろに隠れるゴキムロンを睨んだ。
俺とホチネが短槍と槍を構えて前に出てヒラネス達を威嚇する後ろでゴキムロンはとぼけた感じで、
「落とし物の鞄を拾ったよ?」
「落とし物な訳あるか!」
ヒラネスは叫ぶ。
「地面に鞄が落ちてたよ?
ワシが落ちていた物を拾ったらワシの物よ!
これゴブリンの常識よ!」
「そんな常識我々エルフには通じない!」
そんなやり取りで回りに人々も集まりだした。
俺達とヒラネス達の睨み合いは数分間続き、その間に誰かが呼んだであろう冒険者ギルド長のジュンケンが駆けつけた。
「双方共に武器を収めて!」
ジュンケンは両陣営の間に立つとそう言って仲裁しようとした。
俺とホチネはそれぞれ武器を構えるのを止めて後ろに下がる。
ヒラネス達も剣を鞘に収めた。
「何を揉めていた!」
ジュンケンは両方を交互に見ながらそう聞いた。
「そこのゴブリンに鞄を盗まれた!」
ヒラネスはそう言うとゴキムロンを指差した。
「ワシは落とし物を拾っただけよ。
落とし物は要らない物。
だからワシの物よ!」
「そんな理屈が通るか!」
ヒラネスは怒鳴りつけて一歩前に出た所を止められる。
「まあ待て、確かにその鞄はヒラネス、君の物と証明出来るのだね?」
「勿論」
「ゴキムロン、君は落とし物を拾ったのだね?」
「そうよ。ゴブリンが拾った落とし物はゴブリンの物。
だからこの鞄はワシの物よ!」
「分かった。全員一度冒険者ギルドに来てもらう」
ジュンケンは俺達全員を引き連れて冒険者ギルドに移動しようとした。
「待て!私達はエルフの森に帰らなければならない。
早く鞄を返せ!」
ジュンケンはヒラネスの前に立つと、
「冒険者ギルドに来ないのならばあの鞄はゴキムロンの物となる。
それでいいなら勝手に行くがいい!」
その言葉にヒラネス達は仕方なく後に付いて来る事になった。
冒険者ギルドに着いた俺達はそれぞれ別の部屋に通され話しを聞かれる事になった。
ヒラネス達はカノリスに俺達はジュンケンにそれぞれ話しをする。
「そう言う訳でゴキムロンはエルフの森に連れて行かれそうになっていてそれを止める為にした事です」
俺達はヒラネスがしている事を報告していたが、
「でもこの鞄は本当に地面に置いてあった落とし物なのよ。
ワシはそれを拾っただけよ。
ゴブリンが拾った物は拾った人の物。
これ常識よ!」
ゴキムロンだけは鞄を所有権を主張し続けていた。




