暗躍していたヒラネス
帰って来たケレリスの気配にホチネが自室から出て来た。
「ケレリス!話しあるから!」
「分かっている!」
ケレリスは声を荒げて答え、ハッとした顔をして、
「いや、すまん分かっているつもりだ。
ヒラネスの事だろう」
「そうだけど」
「すまん、そのヒラネスに会って来た。
そこでヒラネスからフゥ君に挨拶しに行って竜人とも会ったと聞いた。
この町にいる竜人はホチネしかいないだろう?」
「それで?そのヒラネスってエルフがラミネの…………」
「そうだよ。ラミネを騙して冒険者を辞めるように仕向けた張本人だ。
そして彼をラミネに紹介したのは…………私だ。すまん。
この事はホチネには前もって言っておかなければならない話しだった。
だが言えなかった。
私自身この事に負い目と言うか……彼を紹介した後ろめたさもあった。
それにエルフの恥を曝す事への私の中の葛藤もあった。
彼はエルフの長老の一人からラミネを聖域に帰す為に送られた刺客のような存在だったようなんだ」
「ラミネを聖域に帰す?その刺客?
それはどう言う事?」
「エルフの森の中に竜人族の冒険者が英雄と呼ばれるのを面白くないと思っている派閥があって、その派閥の中から刺客が何人か選ばれたらしいがその一人がヒラネスだったようなんだ。
ヒラネスは先に刺客として正面から決闘を申し込んで返り討ちにされたエルフがいた事を見ていて、力ではラミネに適わないと判断して私にパーティーとして紹介して欲しいと頼みに来たのよ。
その時のヒラネスの話しでは『魔力を上手く使えなくて他のエルフから一緒にパーティーを組んでもらえない』
そんな風に言って魔力の使い方も教えて貰える人のパーティーに入りたいと相談されたの。
それで昔パーティーを組んでいて魔法を教えるのが私の中で段突に上手いと思っていたラミネを紹介してしまったの」
「ケレリスもヒラネスに騙されたって事?」
「結果的にそうなった。
怪しいところは確かにあったかもしれない。
ヒラネスが来る前にラミネに決闘を申し込んだエルフがいたと聞いていた。
ただヒラネスがラミネに本当に魔法を教えてもらい、その事でエルフと竜人が仲良くなれる未来が来る事を願っていたのかもしれない。
それは私には出来なかった過去を重ねていた………すまん」
「うん、ラミネとヒラネスの事は分かった。
それで?今回ヒラネスが来たの目的はフゥ?それともあたし?」
「その事なんだが分からなかった。
私もヒラネスが来たと聞いて何か良くない事を仕掛けて来ると思って直接会って来た。
だが今回ヒラネスがこの町に来たのはフゥの事とは関係無く別の予定だったそうだ」
「別の予定?」
「そう言っていた。
嘘を吐いている可能性もあるそれが本当かは自信が無い」
ケレリスからヒラネスの話しを聞いたが彼の目的は謎のままで俺達は何があってもいいように警戒をする事にしてその日はそれぞれの部屋へと分かれた。
俺達はヒラネスに気を付けながら更に数日過ごしていた。
ツラナの為に盗賊を捕まえたりする事も出来なかった。
ケレリスは今も付き合いのあるエルフ達から何かの情報を聞こうと動いているが成果は無かった。
元々ネス妖はエルフの中でも秘密主義な者が多く、ヒラネスがラミネの事件の後に出世して長老の側近になった事までしか分からなかった。
「やっぱりあの事は長老の指示だったようだね。
どこまでの長老が関わっているのかは分からない。
コアリスは知らなかったと言っていて他の長老達にラミネとヒラネスの事件を聞いたそうだ。
まあ予想通り知らないと返されたらしいが、ネス妖の長老とトス妖の長老はラミネの名前を出した時の反応から心当たりがありそうな印象を受けたそうだ。
具体的にどこまで関わっているかは突き止められ無いらしい」
エルフの森を出て久しいケレリスの調査では限界があり竜人とはいえ冒険者の事件と言うことでカノリスの協力もあったようだが真相を知る者はいないようだ。
噂レベルの話しとしてトス妖の若い冒険者がラミネに決闘を申し込んだ事だけは分かったらしいがエルフが竜人に決闘を申し込んで負けた事を恥に思っている者が多くそのエルフの名前も分からなかった。
そして遂にエルフの森から代表者が到着して俺についての会議が開かれ俺達は最初の挨拶をしに冒険者ギルドの会議室に呼ばれる事になった。
呼ばれていたのは俺とケレリスだけだったが、
「あたしも行くよ!」
ホチネは気合いを入れて付いて来ていた。
会議室に待っていたのはリス妖の長老コアリスとトス妖の長老バルトス、ハス妖の代表のヨニハス老とネス妖代表のシズネス老の四人だった。
『あれ?ネス妖の代表はヒラネスじゃないの?』
俺がそう思っていると隣のホチネも同じように思ったような顔をしていた。
「ヒラネスが来ないなら来なければよかった!」
ホチネのつぶやきと同時に俺の魔法石に念話が来ている事を示す表示が頭に流れる。
『ツラナから?』
俺は会議室を見回してケレリスと目が合う。
ケレリスにもツラナから念話があったようだ。
「ツラナ何?今会議室にいるから長く話せないよ。
うん、うん、うん、ゴキムロンが?誰に?若いエルフに!
分かった、うん、すぐ行く!」
ホチネは最初は小声で話していたが途中から大声になっていった。
会議室のエルフ達はホチネの非常識な行動に顔を強ばらせたがホチネの次の言葉に固まる事になる。
「ゴキムロンが若いエルフに攫われた!」




