妥協案とケレリスの歴史講義
カノリスの顔は深刻そうに見えて俺には解らないエルフの事情がある事を想像させた。
ただケレリスだけはカノリスの話しの内容に違和感を感じている。
「カノリス、ネス妖では無くハス妖とトス妖が反対なのか?」
「そうです」
「ハス妖とトス妖の反対の理由は何?
妥協案と言うからには全てに反対と言う訳では無いのでしょ?」
「ハイ、なので妥協案をと。
ハス妖達はフゥ君の魔法を詳しく研究したいそうなのです。
特に風魔法はエルフ以外で使える者の存在が確認されていないので半信半疑の者達と『火、水、土の三属性と風魔法が使えるなら雷魔法も使えるのでは無いのか?』と興味を持つ者達とがいましてフゥ君との面会権が欲しいそうです」
「面会権か?
どうするフゥ君、ハス妖は魔法研究を代々行っているグループなんだよ。
魔法の知識に関しては世界中で一番詳しいと思う。
私は話しだけなら良いと思うよ。
逆にこちらから知りたい事を聞けるチャンスもある」
「そうですね。話しだけならと言う事で一人では不安なのでパーティーメンバーの誰かの同席を許可してもらえれば」
「そうだね。
カノリス、面会権の事は納得出来る。
ただ無理矢理魔法を使わせたり為ない事と同席者を認める事。
この二つが妥協点だな」
「ハイ、そう伝えます。
次にトス妖の反対意見なのですが、こっちはちょっと難しいかもしれません。
………竜人族のエルフ領への立ち入り禁止です。
特に冒険者はダメだと」
「その理由は?」
ケレリスはホチネをエルフ領に入れる許可は下りないと予想していたのに敢えて理由を聞いているようだ。
「実は……無許可の冒険者が数名エルフの森で狩りをしている痕跡が見つかりましてトス妖は今外部からの冒険者を受け入れる事にピリピリしている状況なのです。
特に竜人族となると領土問題も絡んで来ます。
なので『竜人族の冒険者であるホチネさんのエルフ領への立ち入りを認めるべきでは無い!』との意見が多いそうなのです」
『領土問題とかどの世界にもあるんだね』
「領土問題と言ってもホチネは水竜人族だよ?
領土問題は土竜人達との問題だよね?
そして領土問題はネス妖の管轄でしょ?
なんでトス妖が口出しして来てるの?
それに無許可の冒険者の侵入もホチネには関係無いよね?
狩り場が荒らされたなら冒険者ギルドに取り締まって貰う案件だよカノリス君の仕事でしょ?」
「そうなのです。私達リス妖の仕事なのです。
それでトス妖は冒険者ギルドを仕切っているリス妖の提案には乗れないと無許可の冒険者を捕まえるか特定するまでエルフの森への冒険者の立ち入りを禁止するように求めています。
領土問題はトス妖では無くネス妖の中の反長老派の入れ知恵だと思います。
最近、ネス妖の一部がトス妖の一部と何か共同で秘密の研究している噂があるのです。
その繋がりで反対の意見に追加としてその事を入れて来たのでしょう」
『なんか秘密の研究とか怪しさ満載なんですけど!』
「トス妖の件は分かった。
対処はカノリスと冒険者ギルドに任せるしか無いだろうね。
領土問題の方は私が世界中を回って調べた限りエルフの方が悪いようだよ。
特に土の聖域の恩恵で魔物が出ない領域が在るはずそこの一部をエルフが占領しているのだから。
エルフは元々今よりもっと北に住んでいたはずなんだよ歴史的にはね。
いつ今の領土になったかは分からなかったのだけど三日月国にある古い資料には今の中立国とオーガの国、ゴブリンの国のある場所がエルフの国だったと記されている。
そしてオーガとゴブリンは今の黒魔どワーフ国に雷神の国として住んでいたそうだよ。
今の三日月国も昔は風神の国と呼ばれていたらしいけどね」
『ケレリスの自分の研究の話しになると止まらない症状が出てる。
そろそろ止めた方が良いかな?
俺達とエルフの妥協点の話しとだいぶズレてるよ!』
「あの、それでは私は今の提案をコアリス様に伝えて来ます。
それとケレリス様、エルフ達の前で今の領土の話しは為ないでいただけますか?
特にネス妖達の前では」
ケレリスの話しに危険な空気を感じ始めてカノリスは忠告すると部屋を出てコアリスの元へと向かった。
また部屋に俺達は残された。
俺はケレリスの話しに出て来た黒魔どワーフ国について聞いてみたいと思い質問してみた。
「ケレリス、黒魔どワーフ国は黒魔道士とドワーフの国だよね?」
「まあそうだな。
ただオーガとゴブリンもそれなりの人数住んでいるよ。
多分元々は黒魔道士、ドワーフ、オーガ、ゴブリンの四人種が住んでいたのだろうね」
「それがさっき言ってた雷神の国なんだね」
「そうだろうね。広さ的には三日月国より黒魔どワーフ国の方が小さい。
それは元々の国から中立国に領土を移譲したからだと地図からは想像出来る。…………」
その後もケレリスの歴史の講義は続き俺を睡魔との闘いに誘っていた。
ホチネとゴキムロンは先に宿へと帰り俺とツラナはケレリスの話しを二時間以上聞く事になった。
その日は結局コアリスと他の長老達との話し合いは決着が付かずに俺達には更に宿での待機状態が続く事になる。
二日間の魔法石でのエルフの長老会議は他の長老の特使の派遣と言う先延ばしで決着した。
そしてその特使の到着でホチネの今後を決める出会いが待っていた。




