ゴブリン長老一族の秘密
俺達は冒険者ギルドを出ると町で一番の宿へと向かった。
「こんな良い宿に泊まって平気なのですか?」
ツラナは不安そうに宿の受付でキョロキョロとしている。
「いいの!エルフが払ってくれるって言ってるんだから。
ゴキムロン、今日からしばらくはご飯食べ放題だぞ!」
「それは良いことなのよ!
エルフにご飯のお金いっぱい払わせるよ。
エルフはゴブリンの国に来てもいつもわしを無視するからあまり好きじゃ無かったのよ。
でもご飯を食べ放題にするエルフは好きなエルフなのよ!」
俺はゴキムロンの言葉に引っかかる事を耳にして、
「ゴブリンの国にもエルフが来るの?」
「少し前はよく来てたよ。
最後に来た時もわしを無視して、ゴキムカーとばかり話してたよ」
俺はケレリスの方を見た。
ケレリスも今の話しに興味を引かれたようで俺と目が合う。
「ゴキムロン、後で話そうか?」
「いやなのよ。ケレリスの目が怖いよ!」
「大丈夫、怖く無い。
俺も付いて行ってやるから」
「フゥも変な目してるよ」
ゴキムロンは俺とケレリスに両腕を掴まれて受付を待つ事になった。
受付が終わりゴキムロンを挟んで三人並んで歩く姿を見てホチネは、
「ゴキムロン、何かで捕まって連れて行かれる犯人みたい」
ホチネのつぶやいた言葉に、
「わしは何か悪い事したのかよ?」
ゴキムロンは悲しそうな顔で部屋へと階段を上って行った。
俺達の部屋は金持ち用の部屋だった。
二つの豪華な寝室と四つの普通の寝室、それと専用のキッチンに八人は食事が出来るくらいのテーブル。
テーブルの上には果物の乗った籠にお茶の準備もされている。
お風呂もトイレもとてもきれい。
部屋を隅々まで見て回って、
「ボクがこんな部屋に泊まって良いのでしょうか!」
「この旅で一番!いや生まれて一番の部屋だよ!
聖域にもこんな豪華な部屋は無かった!」
「わしの国にいた時の部屋よりきれいなのよ!」
三人は目を輝かせている。
「フゥ君、ゴキムロン、さっきの話しをしようか!」
ケレリスは難しい顔で椅子に座った。
俺は部屋を見て浮かれた顔を引き締めてケレリスの隣に座る。
ゴキムロンも渋々俺達の前の席に座り取り調べを受ける容疑者のような顔でこっちを不安そうに見た。
「ゴキムロン、ゴブリンの国にエルフが来た時の事を聞きたいだけだ。
そんな不安そうな顔をしなくてもいい」
「分かったのよ」
ケレリスの言葉に少し安心したように頷く。
「それでゴブリンの国に来たエルフの名前は判るか?」
「判らないよ。
エルフはいつもわしを無視して調ベモノをしていたのよ。
でもその内の一人はトーネスと呼ばれていたよ」
「トーネス?ネス妖の者か。
ネス妖がエルフ領から外に出て活動しているとは珍しい事だな。
他には何人来ていたのだ?」
「ハッキリ分からないよ?わしが見たのは五人だと思うよ」
「それでゴキムカーとは何の話しをしていたのだ?」
「わしのいない時に来ていたのよ。
娘のゴキムカーの部屋で話して、その後屋敷の掃除をしてくれていたのよ」
「屋敷の掃除?」
「そうよ。屋敷が隅々までピカピカになったのよ!」
「それって屋敷全部調べて何かを探したって事!」
俺は二人の会話に割って入った。
ケレリスはそれに頷き、
「多分そうだね。
そして探してたモノは『神の手様』だろう」
ケレリスの『神の手様』にゴキムロンは首を傾げる。
「それは無いよ。神の手様はわしが隠しているよ。
屋敷には置いて無いよ」
ゴキムロンの衝撃発言にケレリスは言葉を亡くす。
「でも俺達は捕まえたゴブリンから神の手様を使ってゴキムカーが国を乗っ取ったって聞いたよ?」
俺の言葉に納得したようにゴキムカーは頷くと、
「その神の手様は偽物なのよ。
娘はわしに神の手様の隠し場所を聞こうとしたよ。
でも隙を見て逃げて国を出たよ。
だから見つから無くて偽物を用意したよ」
「なんで偽物って判る?」
「本物はここにあるからなのよ!」
ゴキムロンは服を脱ぐと自分の腕の下に付いたもう一つの腕を俺達に見せた。
ゴキムロンには三本の腕が生えていた。
「それが?神の手様!」
ケレリスも驚いたようにその腕を観察している。
「そうよ。神の手様は代々長老の家に伝わる遺伝なのよ」
「遺伝?
それじゃゴキムロンは生まれた時から腕が三本だったのか?」
ケレリスは研究者の顔になっていた。
「そうなのよ。これはわしの両親とわししか知らない事なのよ。
神の手様がある子供が生まれた時に立ち会った人はみんな死んでしまうのよ。
だから長老の一族の出産は血の近い一族しかしか立ち会いが認めなれないのよ。
母親も遠い血筋だと子供を産んだ時に死んでしまうのよ」
俺達はゴブリンに伝わる『神の手様』の真実の一端を聞いてしまった。




